期末テスト返却
夏。セミの鳴き声が大きくなり、緑が生い茂る季節。もちろんそれは、甘い甘い恋もあれば、苦い苦いーー
「もうちょっとで、夏休みですねぇ。そんな皆さんに期末テストの点数をプレゼントー」
生徒からは「えー、やだぁ」なんて言葉が飛び交う。
定期テストまで、高園とともに勉強を続け、定期テストが先週終わった。今日から、定期テストが返される。今日は、数学と英語、理科が返される日だ。
「今回、赤点は、5人。満点は1人でした。前回の13人より8人も赤点が減っていますね。すごいです。みなさん、よく頑張りました!!」
数学の先生、安住美澄。優しくて、わかりやすい面白い授業をしてくれる先生でみんなに人気だ。
私も、この先生の授業のおかげで、数学が以前よりももっと好きになった。
「英語のテスト返却ー。1番の人から取りに来てねー」
その次は英語。発音がネイティブ並みに上手で、5ヶ国語話せる先生だ。筆記体も書ける。吉沢涼太という。よく、休み時間は海外や筆記体に興味のある生徒が集まり、先生と話している。
「テスト返すぞー。赤点のやつには補習をプレゼントだ」
最後に理科。大学でたくさん研究をして、某有名研究者とも語り合ったことのある先生だ。太田善久という。面白いのだが、自慢話めいたことも多く、先生のことが好きな生徒は限られている。
今日返されたものは、理科以外満点で、理科は98点だった。
⋯⋯次は百点を取りたい。
私は、終礼を終えると昇降口に向かった。
「葉琉ー! テストどうだった?」
どうやら、昇降口では、高園と誰かが話していたらしい。私は気づかれないようにそっと下駄箱にたどり着いた。そして、私が上靴を仕舞おうとしたとき。
「お前どうせ点数良いんだろ」
「本当にねー。葉琉くんって頭いいもんねぇ! ねね、あたしに勉強教えてよー」
「あ、抜け駆けか!?せこいぞ、柚乃!!」
「ふふん」と可愛らしい声が聞こえる。というか、高園はテストの点数がいいらしい。あれ、ば⋯⋯じゃなくて、勉強が苦手なんじゃなかったっけ?
「わりーな。俺だって数学で1問ミスったたんだ。だから教えらんねー」
どうやら、高園は本気で頭が良さげだ。なら、どうしてあんなに解くのが遅かったんだろう。それに、あんな可愛い子たちとお勉強か。高園って案外人気者なのかも。知らなかった。
なんだか少し、騙されていたようで脳に水に流された気分だった。私って自己中だな。
余計な考えを払えように首をふる。せかせかと靴を仕舞うと下靴に履き替えた。
そして、なんとなく。そう、なんとなく玄関から出るときに、後ろに振り向いてみた。
⋯⋯目があって、高園が目を開いて、こちらに何か言おうと口を開こうとしていた。
いらない。今はそんな気分じゃない。何も言わなくていい。
私は素知らぬ顔で前を向くと早足で学校をあとにした。
なんだか、肺に蜘蛛の巣が張られたかのように息がしづらくて。夏のセミの鳴き声がやけに嫌に聞こえた。
◆◆◆
別に、そうじゃなくて。なんて弁明はもう届かない。
期末テスト返却日。帰り、昇降口で俺と清太、柚乃で話していたとき。
たまたま。そう、たまたま。悠音がいて。俺はそんなことに気づかず、定期テストの話をしてしまった。
⋯⋯それが、ミスだった。定期テストで0点を取るよりも重大なミス。
悠音に嘘をついて勉強を教えてもらっていたのに、「点数がいい」なんて知られたら? 嘘がバレたら? 今の悠音と俺の関係は終わって、接点だってなくなるかもしれない。嘘つきな俺を嫌がるかもしれない。そんなの絶対に嫌だった。
だから、だから追いかけようとして口を開いて、「待って」って呼び止めたかった。ちゃんと話したかったのに。⋯⋯悠音は、すぐに視線を前に戻して歩いていった。その時の視線が失望したような虚しそうな静けさが漂っていて。
途中から、何を話しているかも分からなくなった。だから、また。また、失敗した。
「いいよ」と言ってしまった。柚乃が、「明日の放課後あたしと一緒に勉強しよ」と言った言葉に。
俺と悠音は付き合っているわけではないのに、そこら辺の今までつるんでいた奴らと話していると、すごく自分が情けなく感じるのはなんで? 柚乃と勉強するだけなのに、失敗だと思うのは、悠音に嫌われるかもしれないから? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで⋯⋯?
わからなくて、こんがらがった頭を勢いよく振り払うと、二人に別れを告げて学校を出る。
セミの音がやけにうるさくて。帰り道の脳内は、悠音のあの時のあの目しかうつっていなかった。
今回は短めでしたね。ちょっとだんだんと短くなっている気が……!!きのせいですよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!ぜひ6話も読んでください!!
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