幕間:無間
眩く激しい光が遠ざかり、砕けた身体を命が満たす。
守られ抱かれ連れられて。再び灯る意識のままに目を開けば……。
「────『一人目』」
「……『七人目』」
月創世界の遍くが還る、無間の虚空。寂しく、穏やかで、空しく、温かかな世界の狭間にて、役割を果たした後に帰還したイオを友の声が出迎えた。
「如何でしたか、四彩にて紡がれた『稀人』の輝きは」
それぞれの認識が姿を生み、生じた瞳に互いが宿る。
然して、その真白の瞳で友人の微笑を受け取りながら。刹那とさえ言えないような極僅かな時間のみ、たった三人だけを識るに終えたイオは────微笑みを。
「とても、目映く、眩かった。……震える心を、抑え付けるのが大変でした」
不器用でも、不格好でもない。冷たさも硬さもない。────むしろソレらこそが纏っていた偽りとでも言わんばかり、誰よりも優しげな色と声音で。
どこまでも純粋で穏やかに喜びを示す友に、セプトラも目を細め笑声を零した。
「別に、無感情な怪物を演じる必要までは無いのでは?」
「それを決めるのは私ではありません。厳かな〝鏡〟で在ればこそ得難い糧に成り得るのであれば……是非もなし、私は何者にでも成るべきなのです」
「あなたの十八番、ですか」
「はい。彼女が描いた、私ですから」
交わされる言葉は、他愛無く。
悠久の時を共に歩む存在同士、多くは確認めいた再演ばかり。
「この真白に、意味はなく……────写す輝きにこそ、意味がある。ならば輝きの到来こそが、漸く訪れた私の存在意義…………あぁ、セプトラ」
けれども、永き時を彷徨い歩いた果て。
「生命とは、斯くも素晴らしい。初めて此の身に、血潮を感じた思いです」
辿り着いた今に、未知を見た。
然して……最も無知で、最も賢く、誰より無力で誰より強い『一人目』にして真白の〝千憶〟が、永きを無彩と親しんだ頬に鮮やかな朱を差して笑み綻ぶ。
「私を退けた眩い黄金も、私を退けかけた鮮やかで無垢な白も、まさしくは英雄の器。迫る〝決別の時〟に際して、彼らが世界に臨んでくれるのならば……」
「…………」
まるで、全てに愛を手向ける聖人のように。
「────〝月〟の悲願は、必ずや」
うたうように囁いたイオに、セプトラは再び優しい微笑を含みながら。
「勇名音高い【総大将】ゴルドウ様は、あなたの天敵といって差し支えない〝他を束ねる力〟の化身。ですから彼に退けられたのは必然として……ハル様も?」
「偽りでも間違いでもありません。黄金の御方が到来していなければ、私を討ったのは白の御方。彼は想像に至っていませんでしたが、私は未来を識っています」
飽きず興じるのは、再演ではない新たな会話。
連なり生まれた輩にして友の枝葉は、共に役割を終えて戦を退場した者同士。
「であればこそ……また、今一度。────いえ、これよりは何度でも、逢いにゆかねばならないでしょう。彼にも、その仲間たちにも……あぁ、待ち遠しいです」
「友が楽しそうで、私も嬉しい。…………時にイオ、どの顔で?」
「勿論、相応しい顔を作って参るべきでしょうね」
「…………あまり演り過ぎて、稀人様方を怖がらせないように」
誰も知らない戯れを以って、虚空を密やかに賑やかしていた。
匂わせ伏線アレコレ過多につき仕切りの短め幕間。
別に〝倒せ〟とは言われてないからね。あくまで〝星を落とせ〟という役割を拝命しただけだからね。つまるところ、とりあえず序列持ち一人を完封ボコにした時点で『お披露目はバッチリですね』と満足気なイオさん君ちゃん様でした。
かわいい。




