光、過ぎ去り
──────……
────……
──……
はい。
ってことで、まあ、とりあえず言いたいことは一つだけだ。
「アホなの?」
「カッカッカ! いや悪りぃ悪りぃ。つい、こう、力み過ぎちまったわ!」
このアホ馬鹿【総大将】め、もうちょい後先を考えやがれと。
激光が鎮まり去った果て。跡形もなく姿を消した〝敵〟のみならず、背中に守られていたはずの俺まで諸共に消し飛びかけたぞいやマジで、と。
ポッカリ……それはもう、先程までの数倍どころか十数倍、下手すりゃ数十倍。
【総大将】ゴルドウ必殺の《塵魂を遂げる傑滅の右拳》────比喩ではなく次元を歪ませるレベルの〝喧嘩殴り〟が齎した愉快なまでの豪快かつ凄絶な破壊によって、刹那の内に広間から大空洞へ変貌してしまった超広大空間の真ん中にて。
「さっきまでの俺なら間違いなく死んでましたけども……???」
影糸で誂えた両足で以って虚空を捉え、ただただ渾身の全力ぶっぱにて無差別破壊を巻き起こした後のことは考えていなかった……あるいは、ノリに任せりゃ何とかなるだろうと適当を考えていた疑いがある黄金鎧姿の偉躰を宙ぶらりん。
普通に数百キロは在る重量を踏ん張って支え、ぶら下げつつ。
件の〝一撃〟が炸裂すると同時、交錯したゴッサンとイオの元から情け容赦なく押し寄せた致命の爆余波に「は???」と反射的に死を悟りながら……──同じく反射の咄嗟の、ぶっつけ本番。散らしが間に合っていなかったら死んでいたぞと。
結果的には救われた身なれど、救出(殺害)されかけた身として流石に文句の一つも許されるだろうとガン詰めするも────はい、カッカッカ。
「わろてますけども」
「まあいいじゃぁねぇか。────敵は仕留めた。お前さんはピンチから生還。そんで俺も五体満足ヴィクトリーだぜ、終わり良ければ全て良し、ってなぁ!」
「いや、まあ…………、……まあ…………」
わかっちゃいたが、効きゃしねぇ。
実際問題『結果』だけ見れば最善、これ以上ないと言えるほど完璧な対処が決まった形だ。俺が個人的にボコられて少々ヘコまされた以外────
「…………仕留めたん?」
「あぁ、間違いねぇ。キッチリ〝結晶化演出〟に梱包してやったぜ」
「はぁ……流石っスわ大将、凄い凄い」
「おざなりに持ち上げんなよ。まだ怒ってんのかぁ?」
目立った被害なく、あの化物を追い返せたというのであれば。
爆光の目眩まし余波による臨死体験の二重苦によって俺は目視できなかったが、ゼロ距離で必殺を直接ぶち込んだゴッサンが断言するのであれば間違いない。
『一人目』と名乗った真白の〝千憶〟は、あのまま黄金の拳に潰えたようだ。
────然らば、
「………………ごめん、ちょ、本格的にダウンしていいか。一旦……」
「お。なんだ、おい、キツイなら早く言えよ無理すん────」
どうやら本当に、気を抜いて構わない状況になってくれたらしい。そう認識が定まった瞬間、虚空を踏んでいた影脚がよろけて膝から……というか、
「────な、っと。大丈夫か?」
「だいじょばねぇ…………」
脱力、落下、全身から力が抜け落ちて大空洞の最中を真っ逆さま。
となれば役割反転『任せろ』とばかり。俺を落下道中に抱え返してズドンと豪快に着地したゴッサンのアホほど広い腕の中、もう身動ぎする気力も湧きやしねぇ。
「あのぅ、大変なんというか申し訳ねぇんすけど……」
「ぁ? なんだよ気にすんな。ゆっくり休んどけや」
「うっす……」
幻感疲労……というか、完全に気力が切れた。
戦争開始から今の今まで『格好付け』重点で気を張っていたのも一因っちゃ一因だが、もう本当なによりアイツあの理不尽たわけ真っ白しろすけイオの野郎。
いや、というか、俺よ。
なにアレ? ってか、なにコレ? マジ全体的に端から端まで意味不明というかシンプルにキメェというか、正真正銘の我が事ながら二度と相手したくねぇ。
『俺』って相手すると、こんなに疲れんのかよと。ここまで集中力やら精神力やらガリッゴリに削ってくんのかよと。当たり前だが今の今まで〝体験〟する機会など有り得るはずもなかったゆえに、突き付けられた事実が無限に草。
こう、なんだろうな。なんというか、もう……────
「なぁ、ゴッサン……」
「あん?」
流石に、他人事のように事実を宣ってしまえば。
「────俺って、馬鹿みてぇに強いんだな……」
思い知らされたというか、見せ付けられたというか……なんだっけ。『此の身は、稀人に己を見せるため在る写し鏡』だっけ?
ソレが果たして、そういう意味で在り方を示していたのかは謎であるが────
「あぁ……??? っは、なに言ってんだオメェ。東の自慢の第三位がよぉ」
「……今だから言うけど、にしても四位の上には足りねぇと思うんだけどなぁ」
ボッコボコにされて、なお疑いなく言えることが一つだけ。
────二度と戦いたくはないが、今回の敗北は得難い経験となった。流石に、今回の戦争中に『記憶』へと落とし込み還元するのは難しい情報量だが……。
「さて、んじゃ帰るかハル。…………帰りてぇんだけど、来た道、どこだ?」
「ぶっ潰されて瓦礫の奥だよ。いやってか、何気に拠点核も潰して────」
〝鏡〟に両腕から溢れるほど持たされた……もとい、身に心に致死量ぶち込まれた貴重な土産。余すことなく持ち帰り、活用させてもらうとしよう。
鮮烈な残光は『記憶』の中に。
我が身に我が身を刻まれたね。
刻んじゃったね、お手本を。




