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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第四節

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星に願いを


 そして、侵攻開始より暫くが経った頃合い。


「──────……」


 四点に構えられた陣地それぞれに輝く〝拠点核クリスタル〟の前。


 無言で場に在る静謐な気配が、僅か一つと……。


『あーあーあー、これは酷い。もう期待以上程度じゃ済みませんねぇ』

『いまだに一人も討ち取れてないってマジぃ?』

『素晴らしいではありませんか。誠に頼もしい限りで────』

『頼もし過ぎて怖いんですよ、わかっていたことではありますが……』

『やはり違う存在・・・・ということか。我々では成し得ない、その在り方』

『総合的に考えれば、進化の道的に僕らこちらが上位のはずなんだけどな』

『それはそれ失って優れる・・・・・・のが進化というものですよ』

『失礼ながら皆様、今に際した会話をした方が良いのでは』

『とはいっても』

『なにをです? 期待以上、以上だけでいいんじゃないんです?』

『それは勿論、良くないね』

『お前は相変わらず馬鹿だなキサリカ』

『なんです? 喧嘩を売っているんです?』

『じゃれ合いは止めろ、鬱陶しい。期待を遥かに上回っているということは……』

『えぇ、我々では大した〝試練〟に成り得ないということ』

『セプトラが秒殺ってなぁ冗談キツいぜ。一桁台を一捻りかよ』

『ねぇ、結局オティアの奴は一体なにで負かされたの?』

『聞く前に、貴様は記録を見ろ。〝恐怖〟を司る概念心器だ』

『あぁーアレか。なんか、あの……そう、あれ。黒尽くめでチビな少年君の相棒』

『不敬ですよルトア』

『最近、遜りすぎるのも良くないよねって誰かが言ってなかったっけ?』

『ここにも馬鹿がいるな。遜るなってのは、侮れって意味じゃぁねんだよ若造』

『僕のが数字は早生まれなんだけど???』

『精神性の話でしょうや』

『……失礼ながら皆様、今に際した会話をした方が良いのでは』


 音もなく溢れる、無数の声。


 ────重ねて、四点に構えられた陣地。それは四角に対する菱形あるいは、菱形に対する四角、外側・・に置かれた二枠目の……地中深くに在る、戦時拠点。


 攻め入る道を開通させるために差し向けた〝農耕機・・・〟により繋いだ長大な洞穴、その終端あるいは始点である整えられた小さな空間の只中。


 在るのは二つ。輝きを放つ拠点核と、


「…………」


 沈黙を湛えるまま、その光に照らされる人影だけ。


 首の後ろで束ねられた真白な長髪を特徴とする、スマートなシルエット。美少年とも美少女とも美男とも美女とも見て取れる、瞑目したままの端正な容姿。


 纏う衣は、白い髪と肌に対極を成す黒。


 戦衣と呼ぶには迫力が無く、常衣と呼ぶには雰囲気・・・が過ぎる。青銀と赤金の刺繍が緻密な紋様を描く外套に、飾り気のない内着。……そして、


 力まず下げられた空の両手の中を含め、武装の類は一つも持っていない。


 彼、あるいは彼女は、髪と同じく真白な長い睫毛を伏せるまま。眠っているかのように、頭の中で賑やかな会話を続ける千の声音を聞き流し続けて────



『『『『『 〝 イオ・・ 〟 』』』』』



「……────はい」



 不意に揃い届いた幾つもの呼び声に、高くも低くもない機械的なまでに澄んだ声音で静かに答えた。それと同時……開かれた眼は、これも色を同じく真白の様。


『遺憾ではありますが、どうあれ我々が示すべき・・・・は変わりません』


「……はい」


『流石は稀人様方。我々の多くは、神域へと至るような輝きに敵わない』


「……はい」


『つまり、結局のとこ予定通りってことだ』


「……はい」


『お任せしますよ、イオ。貴方の役割・・・・・を、今こそ果たす時です』


「…………はい」



 その真白が、見開かれた瞳が、永い暗闇を経て映した姿は────



「────っ、とぉ?」



 期せずして、同じ・・


 髪の色や肌の色が、という意味ではなく。その奥底にある色が、自分と同じ。


 あぁ、そうか、成程、と。



『予定通り。稀人の頂点に連なる星を一つ、落としてください』



はい・・



 納得して然り、これが〝星〟と。


 種族意志による作戦司令を受領するまま、自らが待ち受ける陣地へと辿り着いた〝彼女〟……否、輝かしいばかりに真白な魂を持つ〝彼〟を、視界に映すまま。


「────ッ、ロッタ!」


「どうぞ思い切り! 背中は預かるよッ!」


 見事な速考、迅速な状況判断能力、端的かつ的確な意思疎通。



 ……『稀人』特有の、自分たちには決して真似できない最大の強み。



 戦いを真に戦いと捉えず臨めるからこそ、最も効率の良い僅かな緊張で、どこまでも柔軟かつ『実戦的ではないからこそ実践的な思考』を披露する姿に────



「……うん」



 世界と女神が微笑むであろう、望まれた姿に。



美しいうらやましい



 全く同じ色の輝きにて、全く違う意味を宿す〝白〟は、呟いて。






 次の瞬間、瞬いたのは鮮烈な赤。そして響き渡るは、些細な宝飾の破砕音。


「────……は」


 腕が宙を舞い・・・・・・、取り残された身体から零れ落ちる無理解の音。


 一度目、首を断たれて命。


 二度目、心臓を逃がして左腕。


 意図しての回避それではなく、識る限り・・・・では無意識の生存。


 凄絶な美貌の少女かおを纏う青年は、音もなく距離を殺して目と鼻の先に現れたイオを────〝千憶〟にて『一人目イオ』の名を冠する役割遂行者を、漸く捉えた。


 そして、命一つを代償に反応・・・・・・・・・


 刹那の内に奪われたモノを驚くべき速度で理解して、残された右腕を全くもって正しい動きで奔らせる。つまり、手の届く〝致命イオ〟に対する反撃策としての拳。


 咄嗟かつ、最短最速にして最善の合理。


 そして籠められているのは、自分と同じく矮小な一つの身で『よくぞ』と讃えるしかない莫大な〝力〟の圧。────然して、解答に対する更なる解答。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、彼の反撃を百と百の衝突で欠片も残さず相殺。



 そして、



「────結式一刀・・・・



 それを呟いたのは、彼ではなく。



「《震伝・・》」



 それを成したのは、彼ではなく。


 合わさり静止した拳を伝い、突き抜ける衝撃が襲い掛かったのは────



「──────ッ、………………が、は……っ!」



 当然の困惑と驚倒に目を見開くまま生命を散らす、稀人ただ一人であった。







といったところで六章第四節、これにて了といたします。

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― 新着の感想 ―
…白座枠?主に相手の能力軌跡身体(魂)記憶諸々併せたコピー+αの存在的な…。簪の即死無効発動した時点で思考使用可能な【紡ぎ織り成す金煌の衣】くらい使ってそうなんですけどねぇ…。節が終わっただけで生き残…
ここまで白を示したってことはただのコピーじゃなくて白座みたいな白のキャンパス的な意味でのコピーか? 聖女みたいなカラードの加護持ち?とも思ったけどそれは色的な要素ではなく司るものを扱えるようになるとか…
川か湖か海が来たな…。
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