各方面侵攻中
────剣轟一閃。直径二十メートル弱と決して狭くはない真円状の洞穴内を隙間なく埋め尽くすが如く、奔り抜けた『剣』の圧が立ちはだかる一切を磨り潰す。
然して、切り拓いた一本道を駆けるのは……。
「……、カナタっ」
「大丈夫です! しっかり、ついていきますッ!」
どこかの不慣れな仲良し二人組に勝るとも劣らない、今の今までゼロに近い関わりしか持っていなかった『お姫様』と『少年』のタッグ。
片や紆余曲折もといドストレートな爆進劇を経て、遂に愛を交わし合うまでに至った想い人。片や強過ぎる憧れ一本で足元まで辿り着いた情熱を胸に、弟子とも生徒とも認められていないが……まあ、似たような関係に納まりつつ仰ぐ憧憬。
方向性は違えども、それぞれ〝星〟の輝きに魅せられた者同士。なんの繋がりも無いわけではない────が、それはそれとして本当に絡みナシ。
互いに避けていたわけでも、何かしらを意識するがゆえに擦れ違いが起きていたわけでもなく、ただ単に『話す理由が無かった』から。
見事に共通していた互いのスタンスによる必然。『ハル』という世紀の常時賑やか縁繋ぎ人間へ、これまた共通の最大矢印を向け合いながらも……。
悉く、非意図的に、アイリスとカナタは視線が合わないままだった。
しかしながら、思いの外、似た者同士。
「ん、出来る限り掃討しつつ進行……! 私が穴を開ける、────からっ」
再びアイリスが『剣』を振るえば、懲りず転移現出を続ける雑兵が突き抜ける圧閃にて瞬時壊滅。────とはいえ続々と現れる小型な兵士群は、数だけの障害物とはいえ絶妙に鬱陶しい配置によって侵入者の直進を許さない。
然して、それらを、
「────っ細かいのは、俺が、やります‼︎」
地に足が着くのであれば、床のみならず壁でも天上でも縦横無尽。
躍進を続ける憧憬の背中に手を伸ばすまま、自らも大躍進を続ける準序列持ちが……────現在の東陣営において今や堂々と『現序列持ちの面子に次ぐ』と世間に評されるカナタが、水晶の双刃にて瞬時に刈り取り無へと帰す。
これまで交わした会話の数が、ほぼゼロとは思えぬほどにピタリ噛み合う連携。
そして、
「二割」
「了解っ!」
端的が過ぎる端的を以って、擦れ違いなく通る意思疎通。刹那の一言ずつで同時に疾走速度を『二割』引き上げた二人の足並みが、正解の証左。
────情熱家であると同時に、現実主義者。下手をすれば反目する性質を併せ持つ同類の二人、そして方向性は違えどヒトの好みが全く同じであった二人。
必要に際して隣り合うとなれば、息を合わせられないはずがなく。
「……ふふ」
特別扱いする誰かさん一人を除いて、豪胆。基本的に立場を問わず誰であろうと『平然』で臨む少年の振る舞いも、いざ関わるとなれば相性ヨシ。
斯くして快速順調。機嫌良さげに薄く笑みを零したアイリスの剣閃は威力を増し、それを読み取ったカナタの脚は負けじと勢いを増し増して────南西。
三方面作戦で最も関係性の薄かった二人組は、極めて安定かつ好調なまま。果てしなく思える洞穴の中を、一切の不安ナシに突き進んでいった。
◇◆◇◆◇
────剣轟百閃。直径二十メートル弱と決して狭くはない真円状の洞穴内を隙間なく埋め尽くすが如く、奔り抜けた『刀』の風が立ちはだかる一切を細断する。
然して、切り拓いた一本道を駆けるのは……。
「僭越ながら待ってください先生ッ‼︎ 飛ばし過ぎですッ!!!」
「ふぁっ……!? ご、ごめんなさい……っ!」
過去に積み上げた関係性の深さ、あるいは〝重さ〟で言えば、他二組を遥かに凌駕して置き去りにする『先生』および『生徒』のタッグ。
片や様々な意味合いで意識を向けざるを得ない大事な『生徒』と組まされた上、わかりやすい大役に張り切り過ぎた大和撫子。片や様々な意味合いで意識を向けざるを得ない大事な『先生』と組まされた上、大役を任された異国情緒の侍。
つまるところ、早速テンションと勢いを誤り暴走する【剣聖】と必死にストップを掛ける【無双】の様。洞穴内へ突入するなり「では……!」と踏み切り突き抜けた前者を、置き去りにされた後者が声を張りながら追いかける一幕。
見事なまでの、足並み不一致。
辛うじて声が届いたのは幸いで、耳に入っていなければ彼女は止まらず先へ先へ爆進していたに違いないだろう────と、囲炉裏は苦笑いを呑み込みながら。
改めて、並走。ビクリと肩を跳ねさせ振り返り、気のせいか僅かばかり縮こまりながら速度を落とした背中に追い付けば、申し訳なさそうな灰色の視線。
「そ、その……、お恥ずかしい……!」
「落ち着いてくれたなら、大丈夫です。ここから合わせていきましょう……!」
言葉通り、恥ずかしげな横顔。
ういが瞳と声とで投げ掛けてくる謝罪を頂戴しつつ……──本当なら、アレに堂々と並んで走りたいくらいなのだと。いまだ叶わない理想は未来に託しつつ。
「まず、俺が先行します! 手本を気取るつもりはありませんが────」
「いいえ、お手本にさせていただきますっ……! お願いします、囲炉裏君っ」
「ぇ、あ、えっ」
……別に格好付けるつもりは微塵もなかったのだが、当然の気遣いに〝そんな言葉〟を返されてしまったとあらば仕方ない。あぁ、本当に、仕方がないので、
「……、っ…………で……────では、そのように……‼︎」
「はいっ!」
立場交代。冷静に事故。
張り切り【剣聖】に代わって爆誕するは、張り切りブロンド侍。
────とはいえ、重ねて三組の内では最も識り合う仲。
少々テンションが行き過ぎていようが、ノリが微妙に噛み合っていなかろうが、変に互いを意識しているせいで多少ぎこちなさがあろうが……支障はナシ。
斯くして意気揚々。素直な恩師の頼りに軽々と動かされてしまった哀れな男は二刀を携え突っ走り、その背中から勤勉に学ばんとする【剣聖】が────北東。
三方面作戦で最も関係性の色濃い二人組は、不安定ながらも恐れとは縁遠いまま。果てしなく思える洞穴の中を、一切の問題ナシに突き進んでいった。
囲炉裏君かわいい。
なお未来でミィナちゃんもコレを見ます。
囲炉裏君かわいそう。




