東陣営会議中
『────つまり、終了時刻を前倒しにできるってなわけだな』
「あぁー……そういう」
休憩を遂行するまま、暫くを経て。ソラやカナタを含む特記戦力を丸ごと対象に入れたグループ念話が繋がったかと思えば、始まったのは簡潔な情報共有。
開幕から一時間半。累算の戦果ポイントが『100000』を超えるにあたり漸く各陣営〝拠点核〟それぞれの恩恵詳細が出そろったとのことで、トリを飾った北のソレ……つまり『時間購入』の概要を聞いた俺は、成程納得と頷いていた。
要は百万ポイント毎に『24時間』という戦争の所定時間を短縮できるということ。いまだ十分の一しか稼げていない事実も鑑みて大層な値段設定だが……。
まあ、その数値から察せられることは二つある。即ち────
『今んとこ、指揮所で纏めた推測が二つある。アルカディアのシステムが決める価値基準は割かし妥当なことが多いってぇ通例を踏まえると……『それだけの価値がある』こと、そんで『それだけの対価は稼げるようになる』ってとこだ』
……とまあゴッサンが言う二つと同意。トータル、以後の戦場は時間を追うにつれて諸々激化していくのだろうという知ってた案件である。つまり、
『なにもかも前例がないから加減が分からねぇが、ぜってぇ必要になると断定して〝貯蓄〟する方針が満場一致だ。明らか詰みに直結する可能性が高けぇからな』
「だろうなぁ……」
現状、各四陣営の『恩恵』中ぶっちぎりで優先度が高いということだ。
多様な素材の取り寄せを可能とする西に続き、東と南については俺も予測した通り。東は時限付きの指定プレイヤーを大幅強化する『Excitement』、南は素材同様に四柱戦場での追加確保が不可能だった万能触媒をトレードできる『Issue』。
どれも継戦の助けや非常時の切り札に成り得るため無用とは言い難いが、しかし時間という絶対則を覆してしまう北の『Future』には流石に及ばない。
『勿論、例に漏れず他三つも不要とは思えねぇ。そっちも節約はするが必要となりゃ躊躇わず使う、まあ〝拠点核〟の恩恵についての方針はコレでいく』
ゆえに、異論を差し込む余地はナシ。
先程から念話に乗せず相槌を零していた俺を含め、そんな俺の隣で一緒になって熱心に聞き入っていた相棒も含め、我らが大将から伝えられた決定報告には誰からの問いも反対も飛ぶことはなかった────然して、
『ってぇことで、こっからの話だ』
スムーズな進行、議題は次へ。
『とにかく開幕から今まで後手に回されっぱなしだが、防衛側ってぇ状況だけが理由になってねぇ。実際、全員〝千憶〟の連中を見てっから分かると思うが……』
『────彼らと俺たちとでは、意識が違う。だろう?』
『ま、そういうこったな』
「…………意識」
相槌の誘いに乗った囲炉裏が〝模範解答〟を口にして、念話越しゴッサンが頷く気配。隣のソラは微妙に追い付けていない様子だが、まあ何というか解釈一致。
聞くに実際〝千憶〟と戦り合ったわけではない……──ロッタが間に入ってくれたおかげで、直接的に剣を意を交えたわけではないことを踏まえ、納得。
どういうことかといえば、
『連中、大真面目に俺らを殺しに来てやがる』
「…………ぁ、ぇ……?」
ま、そういうことだ。
対人戦も嗜んでいないのだから、気付けないのも仕方ないだろう。俺たちプレイヤー同士の交流的な『遊び』と、今回〝千憶〟が仕掛けてきた『本気』の違いに。
セプトラ氏とか、丁寧に殺意を伝えてきやがったからな。
『意図は知らん。背景も知らん。アイリスの奴が例の配信で披露してた考察に寄る〝なにか〟が関係してるのかもしんねぇが……とにかく、連中は戦争に臨む姿勢が俺たちと違げぇ。そりゃあ押されるのも無理ねぇってなもんよ』
『道理だな。おそらく向こうは、楽しんでいない』
結論、囲炉裏の言葉が全てだ。娯楽として臨んでいる俺たちプレイヤーとは異なり、今回の相手方は何かしらの『使命』を抱えて本気で臨んでいる。
これまでの動きや攻め方を鑑みるに、そうとしか思えない。
────で、あるならば。
『だからといって、俺らまで必死になる必要はねぇ』
こちらとて、プレイヤーらしさを捨てる必要はナシ。
『後手後手でも何でも構わねぇ、引っ張られんなよ。奴さんらの〝本気〟に付き合うってんなら尚のこと揺らすな────俺たちは楽しんだ方が強ぇんだからな』
「んだよねぇ」
「ん……感情の遊びが力になる」
然して、すぐ傍。お利口にしていた小みっこ二人の同意に続き、
『────それでは、如何しましょうか。大将さん』
本人が意図したかは微妙なところだが、絶妙なタイミングで嗾けるような言葉。我らが序列一位、今や『揺れない』を体現する【剣聖】の問いに……。
『ッハ、おうよ……────守りは整った。攻めに転じる』
【総大将】が返すのは、漸くといった楽しげな声音。
『イスティア流を見舞ってやろうぜ。乗り込むぞテメェら』
休憩時間は終わり。再び腰を上げる時間とのことだ。




