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────そして、数秒後。
単純な威力でいえば、周囲の全て……東陣地に居た全ての者を消し炭と化すに足る莫大なエネルギーの奔流が、パチパチと瞬く残滓を置いて天へと昇り切った後。
轟音に代わり、舞い降りた静寂の中で。
「──────────……、び……………………っくりしたぁ……けど」
無事を以って零される一つ。
言葉通りの多大な驚きにて呆けたミィナの声音が、静けさを揺らした。
然して────
「………………、……ん。流石イスティア」
「────いや流石に自爆は想定してなかったすけどねぇッ!?」
「────まあそれはそれとして慣れてっから最近は特にぃ……‼︎」
「────どこぞの我らが究極ビックリ芸人のアレコレを思えばなぁッ……!」
天へと昇った……──否、周囲無差別に撒き散らされようとしていた轟雷の渦は、なにが起ころうと対処すると決めて備えていた『東』の手中。
威力を削られ、行き先を阻まれ、流れを変えられ、意に反して天へ。
魔法士たちが展開した数多の障壁および、各々が持ち得る魂依器など特異な対抗手段を惜しむことなく注ぎ込まれた併せ技により、大被害の未来は覆され────
「………………いや、うん。流石に肝は冷えたけど、ねぇ……」
称賛を呟いたアイリスを含め、過ぎ去った突如の危機に対する遅ればせの叫びを口々にする勇士たちを含め、冷や汗を垂らしつつも息を吐いたロッタを含め、
被害、ゼロ。
跡形もないのは、雷光の中で微かに薄紅を瞬かせた〝敵〟一人のみ。
致命を察知した瞬間に飛び退いたとはいえ、ほぼ魔法陣の中央部に居た者たちさえ五体満足どころか掠り傷もナシ────言わずもがな、望外にして僥倖。
けれども、他ならぬ東陣営であればと【剣ノ女王】も納得する無事の間にて。
「…………っ、……ぁ、へぅ」
「「おっと」」
歴戦の最精鋭。アルカディアンにしてイスティアン。そんな者どもでさえ驚き呆けて避け得ず心拍を上げた、文字通り電撃的に過ぎ去った致命の危機。
流石に刺激が強かったのか、気が抜けてしまったのか。瞳をパチクリした後ふらついたソラを、両脇の非姉妹が仲良く支え……──そこが、段落となった。
「────ロッタ。……さん」
「ロッタでいいよ、お姫様。……うん、あぁ、同意だ。ひとまず、またこれで暫くの猶予時間が『────ッ』っと……どうやら、念話障害も直ったらしいよ」
アイリスが声掛けにロッタが答え、また途絶えていた〝大将〟からの入電を口に出して場へ伝える。然して、ゴルドウが何と騒いでいるかは知らないが……。
『────アイリスっ!?』
「…………ん、大丈夫よヘレナ。ちゃんと無事」
アイリスはアイリスで、無事を問う自らの腹心に対応しつつ膝を折る。
開幕から何度目のことか、また戦場から危機感が姿を消したことを感じ取るまま……再び、性懲りもなく、如何様な〝次〟が襲来したとて大丈夫と信じるまま。
流石に、怒涛の展開ばかりで少し疲れた────と、あの【剣ノ女王】が、赦しというより率先した手本を示すように、誰より先に座り込んだものだから。
その場に居る誰もが、その瞬間。
とりあえず、また一つ確かに修羅場を切り抜けた事実を祝いながら……。
「だぁっは……‼︎ 緊張続きはオッサンにゃキツイっ……!」
誰が呼んだか、東陣営の防衛隊長。今しがたの大魔法無効化に繋がった警戒陣構築および万が一の備えを指揮していた【ElephantThree】ことゾウさんを筆頭に、
皆を同志として誰の目も憚らず、ドサリドサリと腰を下ろしていった。
……唯一、いまだ内に在る推定問題ナシと思しき残存戦域。
黒翼の球界を、各々で眺めながら。
◇◆◇◆◇
斯くして、時は僅かに流れて数分後。
「────想像以上に、手札を切らされています」
城塞内中央部、首脳陣地。
集う四陣営指揮官の面々は、南の【侍女】が端的に……しかし僅かばかりとて確かに苦々しげに断言した状況確認を受けて一人残らず頷いた。
「まったく、呆れたもんだ……まだコレで一時間程度しか経ってないって?」
「防衛側やさかい、後手が前提で仕方ないとこもあるんやろけど……」
「まあ、よろしくねぇな。先が怖ぇなんてもんじゃねぇ」
言わずもがな、それは重なる同意の前置き。
苦々しく言ったヘレナに、言葉通り呆れ返った様子のカグラ、いつもの如く弱音に素直に糸目を更に細くしているジンが続き、締めるゴルドウが────
「今んとこが様子見だとすりゃ……この調子だと、二十四時間なんざ持たねぇぞ」
誰もが思っている、現時点での未来図を躊躇わず口にした。
そして、反論は上がらない────当然だ。
ここまで確かに無事無傷無事故の犠牲ナシで辿り着いてはいるが、それは特記戦力を中心として惜しみなく『手札』と尽力を捧げてきた結果。
生存時間に、消耗度合いが見合っていない。
戦場に身を置くことで蓄積していく疲労は、時間が経つにつれて加速度的に増加していくものだ。つまり、このペースで対応に回っていては先がない。
重ねて、つまり────
「ですが、ようやく〝敵〟は見えました。ここからです」
「だね。ヒト相手ってんなら、職人とて戦い方は心得てる」
「まぁ俺は苦手分野やけど、なんもわからんのとは大違いやねぇ」
「おうよ。この調子で好き勝手やらせなけりゃ、なんも問題ねぇわな」
全会一致。
相手……ようやく戦争相手として姿を現した〝千憶〟と同様、こちらも継続していた『様子見』を捨て去ればいいだけのこと。そのために必要なモノは……。
「それじゃ────『大駒』二つ分の報酬は、存分に使わせてもらうよ」
今しがたのフェーズを乗り越えたことで、十分に振り込まれている。
「おう、任せた。────カナタ、次だ。悪ぃが南へ特急で頼む。────野郎ども、壁の内側に引っ込んで備えろ、また『急襲』がありゃ各自の判断で叩き潰せ」
「メイ、予定通り築城に掛かります。迎えが到着次第まずは西へ────ジン様」
「了解ヘレナちゃん────皆、多分やけど間もなく次が来るから備えとき。指揮は俺とハギ君が執るさかい、南の子たちの部隊を連れて生存優先の時間稼ぎや」
ヒトの相手は慣れたもの。
戦争の相手は慣れたもの。
不慮の相手は慣れたもの。
未知の相手は慣れたもの。
此処にいるのは、東西南北アルカディアの各陣営を四年に亘り率いる者たち。
「おちょくられんのはここまでだ、次からは戦り返すぞ東陣営」
「ようやく腕の振るい時さね、造るよ西陣営」
「各員、連携を密に対応を細に。南陣営の得意とするところです」
「ほんなら北陣営は自由に、かつ堅実に、普段通り結果を目指すとしよか」
〝千憶〟の英傑────数も戦力も知る由はないが、相手にとって不足ナシ。何者も恐れず畏れず、それぞれの手は指揮官たりて〝駒〟を従えるのみである。
癖つよつよオンパレードな各陣営トップ層を取りまとめるとか、どんだけのカリスマ性と諸々の処理能力を備えていれば可能なんですかね。
カグラさんに限り率いるというか勝手に人が付いてくるタイプの度胸バリバリで実績ハチャメチャのカリスマゴリゴリ姐さんとかいう地味にバグ存在だけども。




