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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第四節

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戦局転々


 女神の眷属として『五色の御柱』に連なる仕様、また他の例で言えば『黒歪』ならざる〝黒〟と同様に、プレイヤーの視点にNPCの生命(HP)は可視化されていない。


 注視したところで頭上にカラーカーソルも出なければ、エネミーのように名前やステータスバーがアクティブ化されることもない。唯一の例外として臨時パーティを組む以外に、彼らをシステム上で捉えることは叶わないのが仮想世界の常。


 けれども流石に、心臓を穿たれて無事か否かくらいの判断は効く。


 如何に〝千憶〟NPCが大多数のプレイヤーを凌駕する武威を備えているとて、彼らは例外なく……あるいは俺たちプレイヤー以上にアルカディアの道理に従い縛られるように傷付き、消耗し、その力を使い果たすこともあるのは周知の事実だ。


 力尽きれば、彼らは確かに膝を突く────とはいえ、



「……………………聞きしに勝る、見事」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「ッ────っと……!」


 無言を破っての称賛は、置き土産が如く。


 致命を受けたセプトラ氏の身体が瞬くと同時、その身を覆い守るように現れたのは薄紅色の双角錐クリスタル。然して、咄嗟に紅槍を送還しつつ巻き込まれないよう後退した俺の目前────()()()()()()()()()()()()彼は、些細なエフェクトを残して。



 やはり、瞬くように消失した。



 これが、アルカディアにおける『NPCの戦闘不能』として広く知られる特殊演出。今では《強制交戦エンゲージ》や決闘システムの結界障壁機能などと起源を同じくする〝女神の加護〟ではという説が濃厚視されている特別扱い・・・・


 彼らの生命(HP)は、如何なる理由でも一割を切らない。そして如何なる理由の危機でも命をそこまで削られた場合、彼らは件の守護に抱かれて消える。


 つまり俺が容赦ナシ心臓をぶち抜いたセプトラ氏は死んでおらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()またピンピンした姿で世界に表れるだろうということだ。


 そう、重ねて、つまるところ────



「だぁっは安心したぁッッッ……!!!!!」



 状況に際して振り絞った無理矢理気味な戦る気で全速前進しつつ、得物を握り締める両手に滲んでいた緊張の冷汗は、手放していいということ。


 当たり前だろ舐めてんのか。もし万が一いやそりゃ十中八九どころではなく百パー無いとは思っていたが仮に今のでセプトラ氏がガチ死亡でもしていた場合、俺は仮想世界アルカディア史上初の殺人者プレイヤーとなっていたわけだ。


 脳裏で『大丈夫だ』と静かに告げる外れない第六勘(アルテラ=ノーティス)の後押しがなけりゃ、正直なとこ躊躇を捨てられたか怪しい────然して、結論から言えば結果オーライ。


 様々な流れと要因が噛み合い、手繰り寄せたのは最良の今。


 さあ思考を回せ。


 断じて遂げて、晴れて浮き駒と成った俺の脚を、どこへ向けるべきか。



 ────まあ、決まってるわな一択だ。



「 諸 々 、 各 員 、 あ と 任 せ ま ぁ す ッ ! ! ! 」



 ゴチャゴチャやってる暇はねぇ、今は瞬を惜しんで考えず動くことこそ『俺』の最良運用法。然らば指示ナシを告げる指示を高らかに叫び置くまま────



「──── ゴ ッ サ ン ッ ! ! ! ! ! 」



「────うオァアッッッ!!?」



 《天歩ロケット》連打の速駆け刹那。


 瞬く間に西陣地から中央地首脳司令部へ所在地を移した俺は、両足で虚空を削り制動しつつ俺を使うべき【総大将】の両肩を鷲掴みにして再び叫ぶ。


 当たり前だ、猶予はない。お師匠様のHPが、今なおも減り続けてる!!!


「西は片したぞ‼︎ おら使え・・ッ‼︎」


 言葉は端的に、ここの状況説明は要らない旨は言外に。


 視線を巡らせれば目に映るのは先程送り出したカナタの後ろ姿、つまり報告と指揮は既に交わされている。東へ向かう淀みない疾走もとい滑走姿を見れば、俺の知らない十数秒の内訳は大体のとこ察せられる────だからこそ、


 これは問いではなく、決議要求。



 とにかく行くべきだよな行くぞ宜しいなと、勢いのまま宣う俺に。



「だ、なんッ……────あぁ、そうだ! 出し惜しみは要らねぇ抱き殺せ・・・・ぇ‼︎」



「っしゃオラァッ!!!」



 危地における咄嗟の思考速度および判断力および勝負勘については、どこぞへ増援急行中なのだろう今ここには不在の【剣ノ女王アーシェ】に並ぶ我らが大将ドン


 ゴッサンは、焦る俺の勢いを殺すことなく活かして背を張り飛ばし────



「──────ッ……!」



 指揮の下に堂々と状況を翔けた俺は、不明状況・・・・の真上。


 即ち、濛々と立ち込める由来不詳な粉塵めかくしに没し、わけもわからないまま謎にHPを減らし続けて今や生命半分程イエローゾーン────ピンチに陥っていると思しき師の直上。


 あの【剣聖】が、離脱もできずに囚われている。ただそれだけを理由に悪戯な増援派遣を封じられた、困惑と焦燥必至の異常事態を見下ろす俺は、



真白ノ追憶アルヴ・コール────《緑繋グリエ》……‼︎」



 指令を全うすべく、振り上げた手に喚び出すは魂依の器。


 【真白の星剣アルヴ・ステラ色彩の偏在Ver(カラーバリエーション).3────気は乗らなくとも付き合え相棒、状況に関しちゃ十分ヒロイックだろ相手が誰だか知らねぇが見せ付けてやろうぜ!




「────いだけ、」




 そんでもって、約束通り()()()()()使()()()()()()()かんなぁ自称後輩一号テトラッ‼︎




「《黒天の鵬翼グリムノート》ァッ!!!」




 白剣に座して、輝く玉石は〝緑〟の色。


 斯くして、叫び放てば虚空より黒羽・・


 広く知られる概要は『詳細不明』と意味を成さない一文のみ。いまだに誰一人として────本来の主たる【不死】および、新たに俺・・・・を除いて仮想世界の誰も、


 正しい〝力〟の姿を知らない無限の闇が、不明に満たされた場を吞み込んだ。







戦争参加者「情報量が多い」

戦争視聴者「情報量が多い」

戦争筆記者「情報量が多い」

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― 新着の感想 ―
ううん、情報量が多い
今回の話でちゃんと理解出来たの千憶死なないのねヨシ! ( ΦωΦ)σぐらいなのですが?
2026/06/22 14:32 しおりすぐ無くす読書好き
糖分で右頬を打ち、情報量で左頬を打つ。両頬パンパンになるまで打ち据えてくる。そんな作品、アルカディア。
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