奔星降地
「────いやもうマジで次から次へと盛り沢山で嬉しいなぁッ……!」
ご機嫌な鬼ごっこの最中に在って、此度の異変にも即座に気付いた……というか、これに関しては例え超速限界挙動と並行したとて気付けなければアホの類。
天を突く光塔、見覚えのある光景。
過去の四柱で何度も何度も何度も目にしたソレは、他ならぬ〝柱〟屹立の演出に酷似していた。けれども出所が既に場へ据わっていた〝拠点核〟由来であることから、似て非なる何らかの報せなのだろうとは容易く察せられるところである。
とはいえ、こちとら仕事中。
ゴッサンに伝えた『バリ余裕』の啖呵は真実であるにしろ、ゆうて脚の回転を緩められるほど〝敵〟の湧き速度は温くない。更に背中を追ってくる手の内の死こと基本的に俺を殺すまで止まらない凶刃にも「待った」は通じない。
迸る〝雷〟の魔力を喰らいて雷速……までは流石に至らないが、豪速回転しながら俺の駆け足にピッタリくっ付いて離れない速度で飛来する大戦斧の巨刃。言わずもがな捕まってしまえば、俺もエネミー諸共に断砕撃砕粉微塵エンドだ。
ゆえに、とりあえずは共に務めを……いやアイツの中では主人を磨り潰すことこそが務めなのだろうが、その殺る気を有効活用して散歩がてら〝敵〟を蹂躙し尽くすまでは暢気に状況確認もしていられない────と、そのように。
慌ただしい有様を見る者には「冗談をぬかせ」と言われるだろうが、至極冷静に今を俯瞰するまま現状維持リスキルマラソンを続けること十数秒の後。
おおよそ、城塞外周を五度ほど回った辺りのタイミングだった。
「……おっと?」
宙を埋め尽くす燐光……夥しく夜闇を彩っていたエネミー死亡エフェクトの青い光が、周回を重ねるごと明らかに薄れていっていることに気付く。
ほぼほぼ蹂躙は【星引斥ノ指斧】任せにしていたし、俺を殺しがてら周囲にも殺戮を撒き散らす馬鹿呪物の勢い一つで事足りるためヨシとしていたが……。
それゆえに、自らに伝わる手応えが希薄で認識が遅れた。
「なんだ、品切れか」
四方四箇所に開いた大穴から、敵の湧出が止みつつあることに。
目前、通り道。構築軌跡を塞いでいた蝙蝠────よくよく間近で見ると哺乳類というより爬虫類めいた造形の面をしている翼竜ライクな造形の新型を一蹴。
文字通り足場として足蹴に、そのまま《天歩》の出力で蹴り潰す。
そうして数秒、更に一周を重ねた後。
「っと……ふーむ、一段落?」
敵の群勢を蹴散らした数が理由か、あるいは時間か気まぐれか光塔で天を突いた拠点核が理由か……それこそ知る由もないが、湧出終局にて掃除を終えた俺は一旦の降下。然らば身内の様子見がてら、足を着けたのは西の拠点付近で、
「わ、と……先ぱ────」
ちょい待ち出張陣営護衛中の後輩二号や、まだ危ないから近付くなと。
「ぇ、ぁっ」
地に降り立ちながら首を捻る俺を見とめるや否や、ぶんぶんと振られる犬の尻尾を幻視する勢いで嬉しげに駆けてきた可愛い自称後輩を左手で制しつつ────
外転出力『廻』臨界収斂。《天歩》並びに《天閃》並列起動および右腕《拳嵐儛濤》三百発全装填、威力破壊規模一点凝集浸透撃────略して、
「 ハ イ 、 お す わ り ぃ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」
対【星引斥ノ指斧】専用ゼロ魔力ぶちのめし拳骨。つまるところ躾けの一撃。
「うわぁッ!?」
然して、カナタの悲鳴を添え物に。
意図して魔力というか魔法的要素をゼロに絞り、なおかつ余波による周囲への被害を考慮した全衝撃内部沈着型のグーが健気に俺の命を目掛けて飛来した電撃バリバリ煌めく斧刃【星引斥ノ指斧】の横っ面もとい側面にドンピシャで直撃。
衝撃も爆風も、何もナシ。されどカナタが思わず声を挙げて然りの轟音が盛大に響き渡り……────秘密特訓の成果に則り、無事決着。
素直に『敗北』を認めたマイフェイバリット呪物は、その見ようによっては禍々しい巨刃姿を呆気なく霧散。俺の手に素体であるサイコロを残して……。
「おつかれ。多分また呼ぶから楽しみにしとけ」
大人しく、眠りについた。
「……、……………………」
さすれば、場に残るは傍にて呆けているカナタ然り────
「「「「「………………………………………………」」」」」
西陣営の皆様から贈られる、歓声よりも優先された呆れと畏怖の視線と無言。
「……ぁ、っぁ、あわ、あぁわぁわわわわわ…………!」
果たして静けさだけではなく、畏怖を通り越してガチ恐怖と思しき様相の【雨音一粒】殿……前期西序列第九席として『緑繋』攻略に関わった緑色の幼女が、コミカルに身を震わせる姿で些細な和みを場に齎しているのは救いか否か。
「ぁー、まあ……はは」
さもありなん、こんなバケモン仮に見る側へ回れば俺とて怖い。
……さておき、
「HAHAHAどっちがエネミーだよ! ってな具合ですよねぇっ! お見事ぉ!」
「……前にも言ったけど、それはギャグで言ってらっしゃる?」
ドシンと軽い衝撃、次いで首に回される全体のスケールに比して貧弱が過ぎる細っこく短い腕。のっしのっしと俺を称えるために寄って来てくれたのだろう、それこそエネミー紛いなティラノサウルスの着ぐるみ────
前期西序列第十席【百発屋】殿へ、苦笑いを返しつつ。
「えーと………………もしもし、ゴッサン?」
ひと仕事を終えた俺は例によって、そうするべくして、大将殿へと声を掛けた。
※注:転身体の爆美少女姿です。
西陣営は入れ替わりが激しいというか、シーズン毎の入れ替わりが基本的に当たり前な陣営だからね。上に長らく居座ってる御人たちは全員おかしいだけだから。
そんなことより雫ちゃんとバラスト氏が好きです。
西陣営の中でも屈指の────────な二人が好きです。




