第十三回四柱戦争
『────さぁさぁ毎度のこと言ってる気がしますが遂にやって参りました‼︎ 仮想世界アルカディア夢の大祭、第十三回! 四柱戦争のお時間ん~でっす!!!』
『開幕まで残すところ三十分弱ぅ! 此度も存分に盛りりゃ────噛んでませーんッ! 盛り上げてくぜ毎回恒例直前番組【クアッドウォー・ビフォアー】‼︎』
『進行はお馴染み、ワタクシ野々宮蜜柑こと現西陣営は第五席ぃっ!【彩色絢美】ノノミちゃんでお送りいたしまーっす! いぇぃえーいッ!!!』
──────……
────……
──……
現実時刻、午後八時三十分前。
「テンションたッッッけぇ」
「ノノミちゃん好きー」
「噛んだ。珍しい」
おおよそ一年の時を経た今に至り、最早『溜まり場』を越えて第二の家。
四條邸宅の広々としたホームシアターに集まった大学生の三人組が、スクリーンの大画面に映し出された情報番組を前にして口々に言葉を交わしている。
「はい、お待たせー」
そこへ合流するは、グラスを載せた盆を手に現れた正真正銘の家人────四條令嬢こと楓が親友の隣へ納まって、いつもの並びが出来上がる。
然して、口々に礼を言う美稀、俊樹、翔子と共に楓が目を向けるは……。
『注目は何と言ってもぉ―――……いや語り切れるかぁっ‼︎ 三十分で語り切れるかぁッ!!! 無理でしょ何もかも変わるってんですよ知りませんよ一体どうしろってんですか何をピックアップしろってんですか! ねぇカンペもソレ指示じゃなくて白旗になってるから! 適当にノリで、じゃないんだよなぁ!!!!!』
「荒ぶってんなぁ」
「ノノミちゃんは可哀想な時が一番かわいいんだよ」
「……〝製作〟に携わるようになって、今では少しだけ気持ちがわかる。彼女に限らず、番組制作関係者の類は全員諸共に可哀想」
「あ、はは…………ほんとに、どうなるんだろねぇ」
いつにも増して、やけっぱち感を満載して勢いのまま突っ走る恒例番組。
────延いてはソレを通して目前に迫る、今や非現実的な事実として他人事ではなくなってしまった夢の大祭『四柱戦争』の如何へと。
今日も今日とて、その舞台へ身を投じて彼方を翔ける各々が親友の背中へと。
「…………アイツ、終わったら合流するとか言ってたよな」
「マジで来たらウケるよね、いろんな意味で」
「生放送……ではなくても、時差あり並行オンエアを本人と観戦するって不思議」
「無理はしてほしくないけど…………でも、ふふ。楽しそうだよねっ」
親愛、憧憬、その他アレコレ。視線と共に幾多の感情を向けながら、来たる舞台の行く末を見守らんとする友人たちが────世界に無数ある、光景の一端。
ゲームを越えて、もう一つの世界。
色鮮やかに、鮮烈に、果てしない光景を以って既存世界を魅了した新世界が、現実に居並ぶ仮想現実として認められ日常と相成り……早四年と暫く。
現実世界の誰もが目を向けるなど、当然のこと。
今に実在する英傑たちの輝きを、至極の娯楽として期待するなど必然のこと。
然らば、沸々と熱を上げる無数の視線が、声音が────
『いやだから無理だよ酷いよ台本の厚みからしてギャグだったもん!!! だからせめて一時間にしようって言ったんじゃんプロデューサーのバーカ!!!!!』
賑々しく、着々と、カウントダウンの打刻を演じていた。
◇◆◇◆◇
──────……
────……
──……
◇間もなく【四柱戦争】開始時刻です◇
◇参加プレイヤーは、各陣営の戦時拠点内で待機してください◇
────と、いうわけで。
遂に始まるらしい新生『四柱戦争』ではあるが、結局のところ大雑把な概要しか知らされちゃいないため参戦者の内心は基本的に概ねフワっとしている。
改めて並べ立てようとしても、おそらく『PvE』おそらく『拠点防衛戦』おそらく『どうせ死ぬほどキツイ』とザックリした予測しか立てられなかったのが現実。
それならそれでと様々な状況に対応できるよう……まあ、我らが頭脳陣の采配で最善と思しき人員が選抜されたが、実際どう事が転がるかは全く予想できない。
お先は真っ暗。見通しが立たないという意味で。
不安は無限大。どうせ加減を知らぬ幻想世界という意味で。
────選抜『序列持ち』内訳は、東六名、西一名、南二名、北一名の計十名。
順位上から、東陣営イスティアより序列一位【剣聖】、二位【無双】、三位【星架】の四位【総大将】、そして五位および六位の【左翼】と【右翼】。
西陣営ヴェストールより序列二位【遊火人】。
南陣営ソートアルムより序列一位【剣ノ女王】、三位【城主】。
北陣営ノルタリアより序列二位【群狼】。
────そして選抜『一般枠』内訳は、元序列持ち数十名を含む四陣営連合。
東から約三百、西から約二百、南から約四百、北から約百にて計千名。事実上、現アルカディアにおける対群団戦闘の結論に等しい上澄み中の上澄み軍団である。
準序列持ちと謳われるような特別に次ぐ特別だけではなく、その他とて『その他』では片付けられないような精鋭中の最精鋭。仮に極一部の例外枠たるバケモノが存在しなければ、間違いなく天辺を取っているような各分野の猛者ばかり。
冗談ではなく、これでダメなら全部ダメと匙を投げて然りな錚々たる面子。
ぶっちゃけ、なにが待ち受けていようと負ける気はしない。
そもそも『負けたら何が起こるのか』というペナルティ云々さえ示されていない以上、負けたところで一体なんなのかってな具合ではあるが……ともあれ、
重ねて、負ける気はしない────然らば、
◇戦時フィールドへの転移を実行◇
◇これより【四柱戦争】を開始します◇
いつも通り勝ちに行こうぜ、と。
持ってく意気など此度も変わらず、それ一つで十二分だろう。
盛り上がってこうぜ。
なお首脳陣談、本音を言えば上記に加えて【熱視線】と【不死】と【双拳】と【銀幕】と【赫腕】と【灼腕】と【彩色絢美】と【折紙】と【藍玉の妖精】と【鉄延】と【重戦車】と【全自動】と【剛断】と【騎士】と【糸巻】と【足長】と【詩人】と【女傑】と【旅人】と【玉法】と【鏡法】と【剣法】と【散溢】と【大虎】と【音鎧】と【変幻自在】と【雲隠】を連れて行きたかったそうです。
ままならないね。




