表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第四節

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1235/1284

幕間


 ────そして、更に時は流れ流れて……。


「いや、すまなかったね。忙しい時期に無理を言って」


「いえいえ全然。いつでも大歓迎です」


 とある日、夜。


「……まあ、店は意外なチョイスでしたけど」


「はは。これでも、どちらかと言えば舌は庶民的でね」


 隠れ家的な名店なのか、なんなのか。看板も暖簾も出していない一軒のラーメン屋……ラーメン屋? なのか……は、ちょっと明確な判断が付かないまでも、


「日本に帰って来たら、まず一杯と決めているんだよ。この店に限らず」


「成程。渋いルーティーンですね(?)」


 とにかく洒落た個室で古風なラーメン鉢を提供してくれる謎の店にて、何処かの海外から帰国したばかりだという徹吾氏────天下の『四谷開発』代表様にして俺の大切な相棒の御父上様でもある御方と、親しく卓を囲んでいた。


 俺が頼んだのは、オススメされた煮干しいりこ出汁のシンプルな醤油ラーメン。


 徹吾氏が頼んだのは……魚介出汁併せ大盛豚骨味噌チャーシューのメンマ大盛ネギ山盛り。プラス半チャーハン&肉餃子の男児欲張り黄金セット。


 育ち盛りの学生めいた勢いの注文に「大丈夫か……?」と心の中で呟きつつ慄いたものだが、トータルの健康は某メイドに管理されていると笑い飛ばされてしまえば言うことはない。多少の塩分過多など物ともせず長生きしてくれることだろう。


 まあ、さておき。


「「いただきます」」


 対面席、仲良く手を合わせて箸と蓮華を左右に装備。徹吾氏が蓮華を先に動かしたのをコンマ五秒で見てから倣い、とりあえず俺もスープを一口。


「「……美味い」」


 徹吾氏は、しみじみと。俺は、深く感心しながら。


 メニューに値段が書いていないどころかメニュー表が存在しなかったことなど、考えても仕方のないであろう不安は多々あるがラーメンは美味い────と、


「話は、聞かせてもらったよ」


 食事に突入しながら、徹吾氏が一生で一度は言いたいタイプの文言でもって話を切り出す。俺も俺で察した上で誘いを受けて此処にいるため、別に驚きはせず。


 気持ちいいほど豪快に麺を啜っているのに、やはりどこか風格というか高貴の気配が霧散しない四谷代表様……否、御父上様・・・・に再び倣いながら。


「……、はい」


 無駄な委縮はせず、食べて呑み込んでから堂々と頷く。うん、麺も美味い。


 ……然らば、


「前にも言ったが、私は娘と君が決めたことならば否を突き付ける気などない」


 徹吾氏は……徹吾さんは、穏やかな顔で薄く微笑み、


「────だから、おめでとう。君ならば、期待・・して託すことができる」


 俺とソラだけに留まらない、複雑で常識外れな関係性とか、諸々全部を踏まえた上で。迷う様子も悩む様子も見せないまま、祝福の言葉を渡してくれた。


「……いつかは、安心・・させられるよう努力します」


「本当に君は、賢く気が回る男だよ。……生き方は、上手いとは言えないがね」


 然らば、最後の手厳しい評も付いたものの表情と声音から冗談交じりは読み取れる。前にも言ったと彼が示したように、俺の方こそ同じこと。


 男に、二言はないのである。






 ────と、そんなこんなで。


「ありがとう、楽しい時間だった」


「こちらこそ」


 ラーメン屋(?)で、一時間強。


 俺基準では基本ないレベルの長時間居座りだったが、機嫌良さげな徹吾さんが言う通り楽しい時間だったと偽りなく言える時を過ごした帰り際。


 千歳印の送迎車が到着するまで数分間のロスタイム、そんな折に。


「時に、のぞみ君」


「……はい?」


 思わせぶりな声音に色を変えつつ、思わせぶりな話の切り替え方。


 明らかに俺を警戒させようと……あるいは、考え事をさせようとしている時の素振り。これまでも何度か経験している振る舞いに、構えて応答を返せば────


「そらから、そら・・のことは聞いたそうだね」


「…………」


 予想通り、振られたのは決して軽くはない話題。今回も軽々に堂々と「はい」と返すのが何となく憚られて、俺は口を噤みつつ静かに頷いた。


 ……しかし・・・


「そうか。……そうか、ありがとう・・・・・


 彼は、ただ感謝に類する言葉を一つ。


 さすれば一体どう反応したものやらと戸惑う俺を置いて、


「希君」


 再び、俺の名を呼び微笑むと────


明日・・の四柱を終えた後、また少し時間を作ってもらいたい」


 それは、果たして誰に向けられたものか。何処へ向けられたものか。おそらく目前の俺に対するものではないのだろう、ひどく優しい顔で……願うように。


そらが自分のことを君に話したように、私にも君に聞かせたい話があるのだよ」


 そんなことを言われてしまえば、当然のこと。


「……、はい」


 未来の『お義父様』の頼みとあらば……。


「喜んで」


 聞かぬ男が、いるものかってな話である。






 斯くして、第十三回目にして新生第一回目。


 四柱戦争前日の、男同士二人以外に誰も知らない幕間であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
明日のイベントの後だと普通ならすぐっぽいけど、驚異の時間倍率のおかげでどのくらい後のエピソードになるか全く想像つかないのがスゴい
いつの回の感想にも書きましたが、「話す」と言う事はその内容を「背負わせる」事でもあるので。 娘が話したという事はその内容を一緒に背負ってくれる人だと信頼したと同時に背負って欲しいと希望した人でもある訳…
2026/05/30 10:30 一般底辺読者
美味しそうな描写は置いておいて。やっぱり色々複雑そうですね…。把握済みというかなんというか。もう一日前でもあるんですね。どんな話があるのやら。妻息子とかも関わってきそうですよね。さすがにシステム関係は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ