親しみ馴染んで輪が一つ
────然して、有言実行。いや言ったのは俺で実行したのはサファイアでと分かれちゃいるが、主と調伏獣は魂で繋がっている存在同士らしいので実質一人。
ともあれ宣言していた通り、初日の『夜襲』程度なにするものぞ。
そも必要最低限の狩りしか行っておらず【星屑の遺石】……全ての【星屑獣】に共通する討伐戦利品であると同時に、全ての【星屑獣】が求める成長の糧でもある遺石を蓄えてもいない小集団を目掛けて大群が押し寄せる道理もない。
湖の中から、あるいは台地の外側から。
散発的に現れる〝ワニ(?)〟やら〝コンドル(?)〟やらを片っ端からサファイアが摘まんで遠くへポイ以下無限ループにて無事終幕。
俺のMPを除いて失われるものが一切ない、極めて平和な時間であった。
任せっきりで見てる俺たちは中々にコメディな絵面を楽しませてもらったし、サファイアも『お仕事を任された』&『たくさん遊べる』のダブルポジティブで機嫌良さげだったし、漏れなく全員が幸せだったのは間違いないだろう。
────と、いうことで。
「くぁ…………っと。そしたら、もう今日は早いとこ寝ちまうかぁ」
一日の終わりを意味する夜襲明けの静けさの中。
哀れな格下【星屑獣】たちを、惚れ惚れするような手際で場外投棄するサファイアの様子を肴にビール……は、流石に無いものの。俺が拠点から持ってきた『干支森』特産果実酒を楽しんでいたゴッサンが、欠伸混じりに締めの音頭を呟いた。
「そうだな、頃合いだ」
然らばと、晩酌に付き合っていた囲炉裏が正面方向の虚空……おそらくは己がステータスバー下部に点灯する、星空イベント恒例『眠気』デバフを見つつ頷き、
「んまーね、初日だし。この辺にしといてやろう」
その背中に凭れて真っ黄色な葡萄(食感はリンゴで味はメロン)をモギュモギュしていた赤いのが、誰に対する上から目線だよといった適当を宣い……。
「「────………………………………」」
「……ふふ」
それぞれ、俺の膝および肩を占拠中。
甚だ安心しきったような表情で可愛らしい顔の付いた頭を預けるまま。既にスヨスヨ夢の中へ旅立ってしまっているリィナとソラを眺め、ヘレナさんが微笑む。
おそらくは、現在進行形で奇妙で奇天烈な関係性を育んでいる俺たちへの配慮。言葉にはされなかったが……視線の合った黒い瞳が、モノクルの奥で『家族のようですね』とハッキリ語っていた────なんて、まあそれは今更ヨシとして。
「夜番、任せちまっていいのか?」
「ん。あぁ、問題ないぞ」
丸太椅子から立ち上がりつつ俺に確認を投げたゴッサンへ、座ったまま肯定を返す。ゆうて特に必要だとは思えないが、どうせイベントの要睡眠タイミングを明け方に調整している俺は今暫く眠くはならない。要するに夜番とてルーティーンだ。
「どうぞ、ゆっくり休んでくれ。明日の朝食も適当に用意しとくから」
「至れり尽くせりじゃねぇの。んじゃまぁ、存分に甘えさせてもらうぜ?」
と、頷けば素直に嬉しそうな顔を見せるゴッサン。
で、迫るは過剰威力じゃれつきの予備動作。
それについては、俺に凭れるスヤスヤ良い子×2を順番に指し示して『起こして構わんと申すなら別にいいぜ来いよオジジ』と鉄壁の構えで撃退しつつ。
「アーシェ」
「ん」
すぐ隣。そっちはそっちでウトウトしているニアを甘やかしていた姫に目を向け声を掛ければ、ソラとリィナをヒョイと右に左にと抱え直し立ち上がる俺に同期。
「んぉぅっ…………ぇ、あの、起きてます。歩けます、けども……」
いきなり誰よりも王子様な『お姫様』に迫真お姫様抱っこで抱え上げられ、若干ぽやついた声で反応を零すニアちゃん。寝落ちまで約二分といったところだろう。
そしたら、大人しく抱っこされとけと。
「さて……ちょちょいのちょい、と」
影糸で編み宙へ浮かべた揺り籠へ、両脇に抱えた片方。即ちリィナを丁重に放り込み、アーシェに抱えられているニアの頬を空いた手で軽くつついた。
「むぇ……」
まあ可愛らしい鳴き声だこと────なんて、無意識に惚気ていた俺を他所に。
「……それじゃ、私も休む。おやすみなさい」
「おうよ。おやすみさん」
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「うーぃ、おつかれーぃ」
おやすみの挨拶を交わしたアーシェが、チラと俺に目をやり歩き出す。
「リィナはミナリナテントに放り込んどくぞー」
「あいよーぃ、よろしくーぅ」
然らば、と。俺もミィナへ相方について一言を投げながら、ソラを改めて両腕で抱き直しつつ姫の背中を追い掛ける────さすれば、
「………………ありゃもう、家族に片足突っ込んでるわな」
「……片足で済んでいるように見えますか?」
「なんかもう、一周回って甘いってか温いよね」
「………………本当に、大した奴だ」
「ほんで君は何をボソッと『感動した』みたいに呟いてんの? しみじみとさ」
まさしく、怒涛。
背後から一斉にワチャワチャと、ハッキリ聞こえるヒソヒソ話ならぬガヤガヤ話が届いたが────なんというか、こういうのも重ねて今更のこと。
「……ハル?」
「うん?」
「私たちのテント、いつでも来ていいから」
「まあ落ち着け、寝言は寝てる時に言うもんだぞ」
「来たくないの?」
「まあ落ち着け、寝言は寝てる時に言うもんだぞ」
すっかり慣れてしまったもので、気にすることなく。
俺はアーシェに先導されるまま、三人娘用のテントを目指し歩いていった。
「────…………んきゅ、………んぅ……、……………………」
道中、有言実行。
ミナリナテントに、爆睡している自称妹を丁重に放り込んでおくのを忘れずに。
バカンス休暇編は次でラスト。おそらく死人が出るでしょう。




