加入式
────んで、翌日の昼過ぎ。
「 っ て ぇ こ と で ぇ ! よ ろ し く ぅ っ ! ! ! 」
クラン【蒼天】ホームにて、全員集合。
夜型と言えども呼べば来る自称後輩一号ことテトラは常からヨシとして、ちょうど今日から春休みが始まったというソラさん、および『仕事』が連休中だという後輩二号カナタも併せ、ういさんと俺を含めて既存フルメンバー計五名。
無論、昨日ミィナに打診された事情については招集メッセージの文面にて共有済み。ゆえに役者が顔を揃えるや否やノータイム、とりあえずホームへ招待したミィナが堂々と声を張り上げても「なにが?」と首を傾げる者は一人もいない。
いない、が────
「わぁ……」
と、カナタ君。
「うるっさ……」
と、俺。
「………………先輩?」
と、テトラ。
約一名不詳が混じってはいるが、暫定一括り【蒼天】男子勢。各々で色合いは違えど「マジかよ……」みたいになっているのも、まあ当然の流れだ。
して、とりあえず言葉が続きそうな後輩一号に目を向け先を促してみれば……。
「【蒼天】は、なに? 単一最強クランでも目指してるの?」
「そんな野望、少なくとも俺は掲げた記憶がないんだけど……」
ほんとそれ、としか言いようがない困惑を聞かされ粛々と頷くばかりの状況である。……いやまあ別に、別にね? いいんだけどさ?
断る理由とか、全然あるわけもなく────
「あ、はは……ビックリは、しましたけど。はい」
「ふふ……賑やかになりそうですね」
ほら。ソラさんも我が師も、当然の歓迎ムードってな具合で────
「ん……ようやく正式な住人、だね」
「お前は昨日からマジそろそろ離れような、この引っ付き虫め」
リィナに至っては、まさしく今更感も山盛りなわけだし────と、な。
まあ、ほんと、そこまでは。
アイドル引退につき晴れて……なんて言っていいのかは不明だが、ともかく自由の身になったミナリナが新たな身の置き場を求めたって流れは自然っちゃ自然。
俺的には『むしろクラン未所属だったんすか』とか当然の如き無知諸々でツッコミたい部分はあったが、まあなんか色々あるんだろうて詳しい聴取は追々でヨシ。
重ねて既に引っ付き虫が半分クラメンだろコイツとなっていたこともあり……そりゃ急な申し出に驚きはしたし、いよいよ以って【蒼天】の総合戦力が意味不明な領域へ達してしまうことに謎の恐怖を抱きはしたが、結論。
まあ、別にいっか。くらいの話で受け止めるつもりだったのだが……。
「…………」
チラと、目を向ける。
誰にって、そんなもの────
「……なんだ、その目は。幽霊でも見たか?」
「現実味が無いって意味では、似たようなもんだな……」
堂々たるミナリナ同様、当然のように……ではなく。
我らがクラン既存メンバーを除いて、もう一人。自分でも空間に浮いている自覚はあるのだろう、微妙な表情で場に存在している男子に他ならない。
はい。三人目のクラン入り希望者、囲炉裏君である。
いや希望者ってか本人が昨日「じゃあ俺も入れてくれ」とか挙手したわけではなく、ミィナが「ほんでコレも一緒に」と言い出し「は?」を経ての今である。
お前もクラン未所属勢だったんけ、とはコイツに限って思わない。なぜって寝ても覚めてもソロで修行に明け暮れてんだもん、感想なんざ『だろうな』一択だ。
で……別にアレ、嫌とかダメとか、そういう感情があるわけもないが……。
「「…………………………」」
おそらく、視線を交わす俺と囲炉裏は今、全く同じ思考に染まっているだろう。
────え、マジでコイツと同じクランになんの? と。
いや、だって。アレじゃん。俺と囲炉裏ってなんというか、そりゃ今更あれよ仲が悪いとか言うつもりは更々ないけどもアレじゃんアレそういうアレとは別方向ってか別ジャンルだったじゃん? 相容れると相容れぬが矛盾なく成立して隣り合う感じの親友兼、悪友兼、殴り合いっこが常の先輩後輩にして共には歩かないタイプの野郎仲間って感じだったじゃん? だからその、ほら、俺からすれば囲炉裏が、囲炉裏からすれば俺が〝クラメン〟ってのは、ちょーっとこうなんてぇの慣れないというか成れないというか至極しっくりこないというか解釈違いというか無限に背中が痒くならざるを得ないというか唐突に響き渡る軽快なサウンドエフェクト。
◇【Ri-na】がクラン【蒼天】に加入しました◇
◇【Mi-na】がクラン【蒼天】に加入しました◇
そして視界端にポップアップする飾り気のないシステムログ。
「なにこれ、リィナちゃんが先? 秒の差でリィナちゃんがクラ先ってこと?」
「ふっ……」
「なんで鼻で笑ったの? 最近アレじゃね時々あたしに対して当たり強くない?」
「入り浸りの年季が違う。弁えて」
そして、野郎二人の気も知らずキャイキャイ楽しげな新人クラメンの赤青二名。
「なにを弁えろと……で、なにしてん。招待もう来てるでしょ、はよ」
そして……恋人(未来系)に言葉および小さな手で、足踏みしている背中を引っ叩かれ、らしくなく。頼りない感じにグラついて揺れた囲炉裏は、
「「…………………………………………………………」」
俺と睨めっこを続けるまま、のっそりと手を動かし……。
◇【囲炉裏】がクラン【蒼天】に加入しました◇
……流されるまま、めでたく俺の後輩になった。
なんだこれ。
「え、えと……その……よ、良かった、です?」
「…………問題ない。これから宜しく頼む、クランマスター殿」
「クラっ、マ、ちがっ……いえ、あの、形式上! 形式上だけですからっ……!」
いや、まあ、うん。
「なんだか、不思議な気持ちではありますが……よろしくお願いしますね」
「……はい、先生。…………たまにでも立ち会いができれば、嬉しく思います」
「っ……、ふふ……私の方こそ、是非お願いしたいくらいです」
重ね重ね、別にね。
「まあ、よろしく囲炉裏先輩。頑張って」
「君は一体どういう方向から見ているんだ。……こちらこそ、よろしくテ」
「ぁ先に言っとくけど、共有スペースでイチャ付くのは自重してよね。そういうの本当もう先輩たちで常に飽和してるから、自分たちの部屋でやって」
「わかった、君とは少し話をする必要がありそうだなテトラ。時間を作れ」
コイツが良い奴で、良い男で、皆から慕われる人間というのは知れたこと。
「……あ、その」
「あまり話す機会は無かったが、既に必要な分くらいは互いのことを知っているだろう。急なことだが楽に接してくれたら有難い、君も宜しく頼む」
「……。はい、勿論ですっ! よろしくお願いします、囲炉裏さん」
ウチのクラメンとて良い子&良い人に加えて、元々ほぼ身内の集まり。今更に相性問題やら何やらを憂慮する必要も皆無なのだから────
「「…………………………………………」」
「なんなんコイツら、ずっと見つめ合ってんだけど。付き合ってんの?」
「むぅ……今、もっと見るべき相手がいると思う。〝妹〟とか。ねぇ」
まあ、なんだ。
「スゥ────……………………ぁー、じゃあ……よろ、しく…………?」
「……、……スゥ────…………あぁ、そうだな。よろしく……頼、む……?」
違和感は拭えないが、とりあえず。
とりあえず謎に握手をするだけしといて……あとはもう、なるようになれ。時間に任せて新たな関係が馴染むことを、適当に期待して放り投げよう。
──Clan name【蒼天】──
◇Master :【Sora】
◇Sub master:【Haru】
◇Member :【Tetra】
◇Member :【Kanata】
◇Member :【Ui】
◇Member :【Ri-na】 New!
◇Member :【Mi-na】 New!
◇Member :【囲炉裏】 New!
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なんすかこの化物クラン、独立戦争でもする気ですか。
あと囲炉裏君だけ漢字ネームで草。
ちなみに何故アルカディアにおいてプレイヤーコミュニティが『ギルド』ではなく『クラン』なのかは過去にも独り言で呟きましたが理由アリだし『クランリーダー』ではなく『クランマスター』なのも理由アリ。でも物語には欠片も関わってこないし名称設定した誰かさんも恥ずかしがる(笑)と思うので理由云々の詳細を語る時は永遠に来ません。例によって想像したい人だけご自由に想像するがヨシ。




