表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第三節

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1209/1212

おかえしの日


 ────と、いった具合に。


 道を阻まれたら阻まれたで、歩みを止めない限りタスクは無限に湧き出してくるものだ。それは直接攻略に携われない俺も例外ではナシ。


 攻略参加面子の戦力を僅かでも向上させるため、取り急ぎ求める《水精霊の祝福》……その取得に要する【水俄の大精霊 ラファン】討伐ツアーの『脚』を務めたり、地味に序列持ち内では珍しい〝水〟適正持ちとして攻略を手伝ったり。


 他にも同じく最たる武器のフットワークを活かして、仲間たちの多忙を穴埋めしやすいのは役立たずとして嬉しい限り。仮想世界内で完結する用事かつ俺が代わりを務められる何かしらであれば、暫くは進んで雑務を代行する運びになるだろう。


 勿論、一人で行かせることになるソラさんも放っとけない。


 以前の対ラファン戦も一応『水中戦闘』の括りではあったが、かの水精霊の秘境は控え目に言って『滅茶苦茶ヒトに優しい水中(?)』という特別仕様。


 息ができる、喋れる、更にはアルカディア世界にあるまじき些細な水中抵抗と、ぶっちゃけ水中っぽい通常空間・・・・・・・・・みたいなものだったのでアレは例外中の例外だ。


 つまるところ、当然ながらラファン戦の時と同じようにはいかない。今では四種に増えているソラの魔剣も、おそらく単体それぞれでは使い物にならないだろう。


 新技開発、および特訓に付き合わないとな。ドイツ語の語彙も蓄えておこう。



 然らば、そんなこんな。差し迫ったタスク、課題は見上げりゃ乾いた笑いが零れるほどに山積み────即ち、いつも通りだ。モチベーションも貯蓄は十分いつもどおり


 ということで、早速のこと。


 俺も俺とて、攻略部隊のサポート業務を遂行せんと意気満点に息巻いて。お通夜みたいな会議の翌日から、元気よく空を翔け回ってやろうと……。




「…………張り切ってたんだけどなぁ」


 そう思っていたし、流れ的にも実際そうすべきだとは思うんだ。


 ────けれども、だがしかし、ところがどっこい。


『ぁ、はいはーい空気読めない男子が「そんなことより遊ぼうぜ」みたいな顔してまーす逮捕案件だと思いまーす今日を特別な日だと思っていないそうでーす』


「そこまでは言わないし思ってな」


「……全く、もう。そういうところは変わってもいいんですよ?」


「どういうところ? もしかして花より団子の権化だとでも思われ」


「由々しき事態ね。ホワイトわたし的には大問題」


「それは何が一体どういうことだよ適当なこと言っ」


「希君、お暇でしたら味見など如何ですか?」


「んでサラッと混じってるメイドよ何してんすか。ほんと何してんすか勘弁してください『なにも悪いことしてないのに』とか口が裂けても言えない身の上なんですから余計な火種を嬉々として持ち込んでくんなやめッ、おい、こら……ッ!」


 世界は何とも、ままらないというか。


 他ならぬ〝女子〟の二文字が表す世界最強無敵の生き物たちにとって、予定やら何やらといった些事は吹けば飛ぶどころか平伏して自ずと道を空けるモノらしい。



 ────斯くして、本日は3月14日。



 つまるところの、ホワイトデー。日本発祥の甘やかな記念日。



 それに際して有無を言わせず拘束というか拘留された我が身の現在地は、例によって謎に女子会の会場にもされている四谷宿舎の自室……ではなく、


 宿舎内設備たる、私的レストランの厨房内。なお本来の主こと我らがシェフもとい千歳和晴は外出中につき留守、賑々しくしているのは女子×4の布陣である。


 然らば、口元にズズイと寄せられる小皿を口ではなく手で受け取りつつ。併せて空色と緑色とガーネット、三対のジロリ&じとりとした視線に刺されつつ。


「どういう状況なんだ、これ……」


 遅まきながら、しかし時間が経とうが経つまいが変わらず湧くであろう困惑をぽつり。いろんな意味で訳がわからないというか、一体どんな顔で対してりゃ良いのか無限に困る今への疑問を零した────だってそうだろ、ツッコミは尽きない。


 なぜ、ホワイトデーなのに男の俺が盛大にアレコレされる側に回っているのか……と、それについては思いのままというか溢れる想いのまま、張り切って自作したチョコレートを先月の十四日に贈った俺が原因なので置いとくとして。


 なぜ、俺は俺のためと思しきアレコレを用意している場に連れて来られたのか。


 なぜ、それもそれでメイドに連れて来られたのか。


 なぜ、そんでもってメイドまでノリノリで俺宛てと思しき菓子作りに興じおり、


 なぜ、このメイドは三人娘を差し置いて厨房内で無双しつつ事あるごとに俺を構い倒してくるのか────いやマジほぼ全部メイドの所業じゃねぇか。


「……ハル?」


「ぁ、はいっ……」


 然して、道理。果たして、当然。


 本日金曜日ということで、学業を終えてからの合流と相成ったソラさん。驚くべきことに現実にも存在したファンタジーこと女子校から下校そのまま来たらしく、本日の装いは激レアな制服姿。追加のエプロン装備で攻撃力が天井知らず。


 なのだが、先程から約一名というか馬鹿おれ一名を見る視線が痛い。まだしも最初の方はニコニコしていたというに、時が進むにつれコレこの有様だ。


「その、なんだか、家で……斎さんと、二人で話してる時にも思ったんですけど」


「はい」


 まあ、言わずもがな。


「急に、仲良くなり過ぎじゃないですか?」


「ごめんなさい」


 俺とメイドが、百パー悪い。罪の比率は百歩譲って俺が三のメイドが七といったところだろ「うふふ」その微笑なんなのメイドさん怖いヤメテ────


「…………謝ったということは、何かしら攻められると痛い事実がある?」


『なんだ、浮気か。流石にソレは逮捕だけど。ん?』


 そんで、はい、地獄連鎖。


 以前のハッキリ『不得手』と言っていた頃と比べれば感動するような上達具合。それぞれ練習や特訓が順調に実を結んでいるのだろう、今や慣れた様子でキッチン調理に励むアーシェとニアも、俺を詰める最年少の疑問に乗ってきた。


 そしたら、俺が取るべき行動は一つだけ。


「あらあら……別に、隠すようなこ」


「まあ、うん。隠すようなことはないんだけどね。あれです、ほら、必要に際して。アーシェが配信アレ宣言アレしたもんだから俺の罪とか諸々云々をアレしてアレしなきゃってな具合に腹を割って話す機会を密かに設けた次第で────」


 この奇天烈自由人メイドが好き勝手あることない事ぶちまける前に、俺の言葉で嘘偽りなき事実を告げるのみ。さもなくば十中八九、死あるのみは想像に容易いゆえ。


 と、冷静を装いつつ内心で冷や汗を流しながらテンパる俺を他所に。


「……ん。そう、話したのね」


「……まずかったか?」


「いいえ。預かっていた〝タイミング〟は、あの日に行使したから」


 ギリ言い訳にはなっていない、程度の戯言から即座に全てを察したのだろう。そこから更に斎さんの反応までをも推理推測したのか否か……。


 まずアーシェが、納得した様子で静かに頷いた。ほっとするには流石に早いと理解しちゃいるのだが、それでも一応、ひとまず、ほっとしてしま────


「………………」


「…………、なん……ぁー……えー、とぉ…………?」


 ほらな、早かった。次鋒ニアちゃんの詰めが早い、近い近い。


『おい貴様』


「は、はい」


 然して、


こっちもでしょ・・・・・・・。いつ?』


「………………」


 おそらく斎さんに対するソラのように、親友に対して思い当たる節があったのだろう。まあソレはというかソレも当然、俺とて『あのひよこ何してやがる』とか思ったりはしない。理性に反して渋面を作りたくはなるが……。


「……お、一昨日、ちょっと…………」


 元を正せば俺の罪と正しく飲み込み、白状すれば声なき馬鹿デカ溜息。


 その後ニアは十数秒間たっぷりジト目で俺を睨め回しながら、手元を見もせずシタタタタッと残像を幻視する速度でスマホの画面を叩き────


『今後、あたしに黙ってデート禁止』


「誓ってデートじゃな……ハイ。禁止。約束しま、誓います」


 世界一可愛い膨れっ面で、俺の顔に言葉こえを押し付けた。


 おっかねぇけど超かわい────



「まあ、()()()()()()()()()()()。楽しかったですね、希君」



 はは、これが『息つく暇もない』というやつか。


 目前の妖精に秒で惚気た俺へ、抑え切れぬ『お嬢様LOVE』ゆえの釘差し……とか、そんなつまらない・・・・・真似をする御仁では決してない。


 即ち、断言してもいいが百パー面白がっているだけ。


 順当に収束へ向か……向かって、たか? いや、うん、向かっていたと信じたい状況に追加の引っ掻き回し迫撃砲をぶっ放したのは、奴を置いて他にはいないと感動ものの愉快犯メイド────然して、穏やかに天を仰ぐ俺。そして、


『おい貴様』


「……それは、話が変わってくるけれど?」


「………………ハル?」


 菜箸、レードル、ホイッパー。各々の得物を手に哀れかつ自業自得な獲物おれへ視線を集中させながら、揃って不可視の迫力オーラを滲ませる最愛なる三人娘たち。


 メイドは端で楚々として、ころころと笑っていらっしゃる。



 ────成程、アレが俺の仇。



 なんて……おそらくは、信頼の裏返し。それから僅かばかりの、お嬢様に代わって俺を苛めたい我欲。決して疑われているような形などで在りはしないが、事実として親しくなってしまったメイドさんの内心を多少なり読み取りつつ。



「……………………あの、弁護士とか、呼べたりします?」


「あら。よろしければ私が務めましょうか?」


「メイドはチェンジで」


『ねぇ、やっぱ仲良さそうだね。おい貴様。おい年上好き』


「ハル、よく見て。年上おねえさんならここにもいる」


「…………………………ハルなんて嫌いです」


「その、うん、少し待とうか俺もアレほら諸々まとめる時間というやつが必要で────あっ、そう、火! 火ぃッ! 料理中だろ危ないから一旦! ねッ‼︎」




 その日、俺は世界の誰より哀れで、世界の誰より自業自得で、世界の誰より賑やかで……────間違いなく、世界の誰より幸福な甘やかな記念日ホワイトデーに、


「あらあら……では、そちらは私が」


「おい弁護士メイドコラ引っ掻き回すだけ回して離脱すんなや待って助けてぇ!!!」


 良くも悪くも、息の根を止められ続けた。







なんだこれ。


ちなみに2/14当然のようにニアちゃんと一緒にいたニアLOVEひよこにも『お世話になっているから(?)』と一応チョコを贈っていたそうです。


つまるところ、例の事前に用意されていた三枝ひよりグッズ満載ひよひよスペシャル段ボールはフライングホワイトデーだったものと思われます。ひよひよー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このメイドほんまさぁ、、(好き) 唯一お姉さん名乗れないソラさんが拗ねちゃうのも可愛いなぁ…… そしてしれっとひよこにもバレンタイン渡してるハルと、フライングで返してるひよこ。ニアちゃんにはバレてない…
的確に混沌を引きずり回すメイドはいつもとしてフライングホワイトデー決めたひよひよさんwww。地獄が加速してらぁ
2026/05/06 18:28 しおりすぐ無くす読書好き
相変わらず引っ掻き回すのがお上手なようで。ドタバタ騒ぎですねぇ。矢印は確定してるといえどそれはそれ。妬くのはしょうがないですからね。ひよちゃさんもフライングでお返し済みでしたとは。ある意味一番目を封じ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ