ピクニック継続中
さて、現状の【第二世界】について特筆すべき点は三つある。
まず一つは言わずもがな。正式実装された『トランスシステム』を入場に際して獲得できることであり、世間の木登り熱が再点火した主たる要因はコレだ。
今は当然というか戦闘コンテンツを嗜む猛者層が脇目を振らずに突っ走っている状況だが、まあ近い内に商売もとい助け合いが本格化するだろうといった具合。
早い話、以前【剣ノ女王】と【剣聖】が職人たちをキャリーしたのと同じこと。
連結部隊攻略解禁、そして『竝枝界拓』の実装。
プレイヤー側の戦力増強要素が一挙に爆盛されたゆえ、中層上位程度の実力者が揃えば多少の余裕は望めるようになったらしいのが今日この頃の鍵樹事情。
即ち現状でも幾らかのパーティが隙間を用意できるわけで、そこに希望者を納めて百層まで『お連れする』────報酬云々は要相談ってやつだ。
オンラインゲームの新規実装要素は、得てして新参初心者ライト勢には手の届かない遥かな高みの憧憬案件になりがちだが……ま、そこは俺たちの理想郷。
全くもってMMOらしくないと謳われる良好民度の仮想世界に在って、嘘みたいな話だが〝ぼっち〟は割かし絶滅危惧種。賑いからあぶれて指を咥える者が氾濫する恐れは少ないだろう。引き籠もりを連れ出してくれる陽キャが飽和してるからな。
絶滅危惧種に関しても、散歩で軽率に地獄へ行き着くアルカディアに限って『ぼっち』を気取れる奴は大体ガチ。潜在カナタ君の人口は計り知れない。
それこそ気さえ向けば引く手は数多なはず、誰が心配する必要もないだろう。
────さておき、二つ目。加速倍率が推定無限。
ずっとコレなのかどうかは神様もとい神の御使い様のみぞ知るだが、今のところ【第二世界】に流れる時間は俺たちが『緑繋』攻略第二幕で経験したアレのソレ。
つまるところ、どれだけ【第二世界】に滞在しようが入退場にて生じる時間は一秒足らず。元の【第一世界】に帰って来るまで現実の時間が進むことはない。
そのせいでというかおかげというか、この【第二世界】で他のパーティと遭遇することは現状メチャクチャに稀。いや稀ってか、ほぼほぼ無。
おそらくコンマ一秒にも満たないズレが数時間、数十時間どころか数百、数千時間あるいは文字通り無限のズレとなるわけで、仮に意図してタイミングを合わせようとしても早々ってか確実に成功しないだろう。
基本ここで交流できるのは、同時入場したパーティ面子のみということだ。
無限加速倍率が体験できると多少の騒ぎは起きたらしいが、先日アーシェが例の配信で諸々説明したアレコレが早期沈静に一役買ったとかなんとか────と、
それもさておき、三つ目。
そのくらいしか特筆できる点が存在しないというのが何よりの特筆点。
トランスに関しては入場にて取得さえしてしまえば最早【第二世界】は関係なく好きに運用できるわけだし、無限倍率加速に関しても滞在上限が日毎一時間に定められているため無限に長閑な無の時間を貪り続けることもできやしない。
ぶっちゃけてしまえば結局のところ、端的に虚無コンテンツ。
一度でも足を運べば『もういいかな』となって然り。たとえば仲良し美少女三人組とかが俗世の喧騒から解き放たれて至極いと尊き平穏な時間を享受するとかなら需要ってか救いは無限大だが、そうでもなければ……────まあ、ね。
別に、長居するような場所ではないってことで。
「────ハル君、ハル君。見てください……!」
「はいはい、見てます。見てますよ」
滞在した時間は、十数分程度だっただろうか。貰うモノだけ貰って早々に究極平穏虚無空間を後にした俺たちは、一路どこへなりとも適当に。
例によって我が僕の気分に任せて第二ピクニック場を求めていた折、ふと「あ、ちょうどいいじゃん」と用事を思い付いたテトラの挙手要望に反対ナシ。
とある毒沼地帯に降り立ったのだが……。
「太刀が、放てますっ……! 普通にっ……!!!」
「そうですねぇ。お見事お見事ぅ」
その隅っこにて、お師匠様が迫真の大はしゃぎ。
いやもうずっとなんだけれどもさ。大お師匠様になってからずッッッとハチャメチャご満悦なんだけれども────いざフィールドへ繰り出し、満を持してといった具合で刀を取り出したらコレこの様子。もう誰にも止めらんねぇぜ。
なにしてんのかって、今は本人も言っている通り『普通に太刀を放っている』即ち単に鞘から太刀の刃を抜き放っているだけ。本当に、ただそれだけ。
終わらぬ抜刀納刀無限ループである。
しかしながら、ただそれだけのことが本来は……。
「腕が長いとは、なんとも素晴らしいっ……!」
叶わなかったことなのだから、これを笑っては失礼だろう。
仮想世界のアバターに関しては本人の意志によるものだが、けれどもソレは『あくまで〝己〟が刀を振るため』という尊ぶべき信念を形にしたがゆえのもの。
彼女を身長で推し量る者など、今に至り世界の何処にもいるはずがないが……間違うべきでないのは、それは彼女が意地を貫き通した結果に過ぎないということ。
ソレそのものは、決して彼女が望んだ現実などではないということ。
つまるところ────
「ハル君! ほら見てくださいっ!」
「見てます。もうずっと見てますから。穴が開いても知りませんからね俺」
どうぞ無限に大はしゃぎしていただいて、一向に構わないってことだ。
信念がブレている……のではなく、今の【剣聖】様を正しく表すのであれば『順調に殻を破り続けている』というのが相応しい言葉になるだろう。
たとえば『王冠』然り、たとえばスキル然り、装備品然り、過去では頑固なまでに手を付けようとしなかった仮想世界の当たり前を、今の彼女は受け入れる。
ならば当然、新たな〝姿〟も同様に。
与えられた力、降って湧いた力、誠に結構。それら全てを征服して正しく自分に含めてしまう楽しさを、ようやく知れたばかりなのだから────
「むしろ、今まで一体どうやって抜いてたんですか。手品?」
「それは……こう、努力で」
「努力で腕は伸びませんて」
「伸びます」
「ちょっと落ち着きましょう。著しいキャラ崩壊は未来の自分が後悔しますよ」
どうぞ、このまま突き進んでくれることを弟子としても期待しよう。
キャッキャはしゃぐ鬼大和撫子剣聖お師匠様(大)
それを穏やかに見守る白髪青眼超絶美少女弟子(男)
空間が濃すぎる。他三人の描写してる暇なかったじゃん。
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◇Status◇
Title:剣聖
Name:Ui
Lv:151【45】
STR(筋力):700
AGI(敏捷):200
DEX(器用):500
VIT(頑強):300(+300)
MID(精神):200
LUC(幸運):0
Lv.3《速考》
◇Skill◇
・至刀ノ導手
《無限無明》-Activated-
Off《天地壊闢》
Off《絶刀域》
Off《断界至刀》
Off《我溢の境地》
Off《刀命の矜持》
Off《戦衣無縫》
Off――――――
Off―――
Off――
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・Active
《剣聖ノ晴心》
・Passive
《リミットブレイク》
《仙眼ノ光瞑》
◇Arts◇
【結式一刀流】
《飛水》
《打鉄》
《阻霧》
《天雪》
《枯炎》
《重光》
《七星》
《昇雨》
《揺霰》
《鋒雷》
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《唯風》
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◇Status / Trance◇
Title:剣聖
Name:Ui
Lv:151【45】
STR(筋力):900
AGI(敏捷):200
DEX(器用):500
VIT(頑強):450(+300)
MID(精神):──
LUC(幸運):0
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あと唐突に【剣聖】様の現ステータスです。お納めくださいまし。




