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アルカディア ~サービス開始から三年、今更始める仮想世界攻略~  作者: 壬裕 祐
君がために在る世界、誰がために去る未来 第三節

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失青の眼下に在る蒼天


  とかなんとか、師弟の戯れは一旦ここらで良しとして。


「んじゃ、ちょっと向こうの様子も見てきますんで……いいですね、うろうろフラフラしちゃダメですよ? ほらサファイアも見張り・・・────ン゛ンッ゛、目印に待機させとくんで、絶対に傍を離れないように。わかりました? 大丈夫です?」


「……わかりましたが、ハル君には後で〝お話〟があります」


 大はしゃぎも大はしゃぎで周囲が見えていないようで、一応しっかり理性諸々は残っていたらしい。言いたい放題な弟子へ流石に向けられた半眼を受け流しつつ、俺は任務を言い付けられて張り切った仕草を見せる愛僕サファイアに師守を任せて移動。


 ういさんの限界突破した無邪気のほほん癒しの波動で相殺されていたものの、重ねて現在地は毒沼地帯・・・・。即ち言っちゃなんだが見渡す限り陰気の楽園だ。


 相も変わらず〝青〟を失っている空が仮に平常運転だったとしても、テトラが言うには晴天確率ゼロパーセント。足元はグチャグチャのベシャベシャがデフォルトで、不穏に泡立っている場所を迂闊に踏み抜けば猛毒の間欠泉が御挨拶。


 他にも毒々しくて肉々しい……なんか、なに? 紫色の海ブドウみたいな植物がチラホラと沼から生え、心地良いとは言い難い生暖かな環境風に揺れている。


 着陸前に「あれなに?」とテトラに聞いたところ、なんでもない風に「近付いたら爆発するから気を付けてね」と言われた。ご機嫌な生態系が窺えて誠に結構。



 ────とまあ、そんなエリアを慎重に歩いて約二分。


 ういさんと俺を置いて先行していた三名。我が相棒と後輩一号および二号の背中を見つけるのは……まあ、フィールド全体に充満している実に身体に良くなさそうな薄靄を無視すればだが、基本的に視界が開けた環境ゆえ難しくなく。


 然して、一人だけ早々に耳と尻尾を仕舞ってしまったソラさん含む年少組の姿を発見。足音を隠さず近付いていけば、テトラの黒猫耳がピクリと揺れた。


 え、あざと……なんて慄くと共に視界スクショの誘惑を堪えつつ────


「どうよ、釣れてる・・・・?」


 一見しただけでは他と何も変わらないように見える毒の沼。けれども注意深く観察すれば、確かに『深さ』が違うことに気付けなくもない毒溜まり・・・・の目前。


 仲良く微笑ましく並んでしゃがみ込んでいた、外見年少組へ声を掛ければ……。


「「「うーん……」」」


「あぁ、ダメそうですねぇ」


 一発で状況を察せられる声音が三重で返され、俺は思わず笑ってしまった。


「……笑ってないで、手伝ってよね。なんのために人手を頼ったと思ってんの」


 さすれば、即座に突き込まれるは半眼の視線とツッコミの声音。


 次いで片手に持つ状況に際した得物……────即ち『釣竿』から伸びる反応皆無な糸とウキへと退屈そうに眼を戻したテトラが、更に溜息を一つ零す。


 深々過ぎて、また笑ってしまった。


「ほんッッッと、クソゲー。レイドの方が全然マシだよ」


「その発言は序列持ちが過ぎるだろ君」


 とまあ、此処────毒物使いアルカディアンの()()()()()()()()として知られる【美毒家の水溜まり】へ何を目的に訪れたのかと言えば、端的に素材採集。


 ここで釣ることのできる【トキシック・ミミック・キャラックフィッシュ】とかいう馬鹿ほど長い名前の〝お魚さん〟が、テトラ君は無限に欲しいとのことで。


「ほら、ソラ先輩もカナタも大体やり方わかったでしょ。手伝って」


「ぁ、は、はいっ……!」


「俺、釣りするの初めてです。現実あっちでも仮想こっちでも」


 インベントリから追加の釣竿を計三本、取り出しては配る黒尽くめの黒猫少年。然らば俺も三人中ぶっちぎり至極ぞんざいな勢いで投げ付けられつつ、日頃の行いによる可視化された評価値と納得して大人しく受け取り……レッツ仲間入り。


 地味に転身体状態ではソラよりも低い伸長を年少組に並べて、腰を落とした。


 あぁ、長閑────環境が致死の毒に満ち溢れた沼地じゃなけりゃなと、おそらく同時に苦笑いを零した俺とカナタの心は繋がっているはずだ。


 然して、


「ってか、誰も居なくね? 定番スポット・・・・・・とは一体」


「そりゃ、毒使いが定番じゃないんだから当然でしょ。調合からなにから自分で賄ってまで毒物を愛用するプレイヤーなんか、僕だって僕以外に見たことないよ」


「えぇ……」


「でも、定番なんて言葉が使われる程度に情報が整っているということは、確かに人口は存在するってことですよね。少なくとも、情報が集積するくらいには」


「だろうね。実物には会ったことないけど」


「ほーん……」


「どうして、でしょう……? 皆さんテトラ君と同じ隠密プレイを……?」


「さぁ。毒使いなんて全員共通で性格悪いコミュ障の陰キャってだけかもよ」


「テトラお前、自分を含めりゃ許されると思ってメチャクチャ言ってるだろ」


 俺、ソラ、テトラ、カナタ。仲良く並んで平和に駄弁りつつ揃って釣り糸を毒沼もとい毒池に垂らすも、やはり揃って反応皆無。……これ、本当に魚とかいんの?


 ────と、疑い始めたタイミング。


「……? っ、ぇ、あ、わっ……!?」


 クン、と。


 片手サイズの小さな得物に相応しい力量というか、特に迫力等は感じられない勢いで……しかし確かな動きで、ソラの釣竿に繋がるウキが毒の水面に沈む。


 見るに、間違いなく相手は小魚程度。現実で考えれば魚どころか、下手すりゃ鯨とも綱引き可能かもしれない仮想世界の超人アバタースペックの敵ではない。


 ……とはいえ、そこは初々しい女子代表ことソラさん。


「て、てとっ、テトラ君っ! これっ、どうっ、釣れた後のこと聞いてないっ!」


 これ以上ないくらいの、期待通り。グリップを逃すまいと両手で必死に釣竿を握り締めた姿勢で固まると共に、動揺の極致にて甚だテンパり悲鳴を上げる。


 然らば、隣で「あらやだ超かわいい」と断りもせず本能のまま視界スクショを連射する役立たずパートナー……の、逆サイド。


「落ち着いて、そのまま」


 動じることも惚気ることもない自称年下老成年中クールボーイが、スッとソラの持つ釣竿の先へ手を伸ばす。そして、その指先が竿先へ触れた瞬間。


「はぇ……?」


 ピタリ、小さなスケール感で水面を暴れていた糸の動きが止まる。


 はたして如何様な手応えの変化だったやら。ぽつり気の抜けた声音を零しつつ困ったようにソラが目を向ければ、指示を仰ぐ視線を受けたテトラは軽く頷き……。


「巻いて。ほら早く」


 一言、二言。良い意味で端的かつ明快な指示だ。


 さすれば、ソラは素直にカロカロとリールを巻いていき────


「ぁっ、釣れ……!────……ぁ、わぁ…………」


「うーっわ……」


「うわぁ……」


 予想通りの、小ぶりな魚体。糸に繋がれたソイツが毒の池から姿を現した瞬間、お手柄に嬉しそうな声を挙げかけたソラを含めて初見三名の反応がシンクロ。


 ソラ、俺、そしてカナタ。一様に顔を引き攣らせる俺たちの目前、ぷらぷら力なく糸先に揺れているのは────なんか、こう、()()()()()()()()()()()()


 無理矢理リアルフィッシュを例えに充てるとするのであれば……いや知らねぇ。自慢ではないが俺に魚類の知識なんてものが早々あるはずがない。


 なんというか、三角形・・・。漢字の『山』みてぇな具合に三枚の直立した背鰭が目立つスマートとは言い難い体形。そんでもって真ん丸な目玉が胴体のド真ん中に据わっており、どこを見てんだか不明な様子でグリングリンと右往左往。


 その他、刻一刻と落ち着きなく変わり続ける体色も特筆すべき点だろうが……なによりキモイのは断トツで口部。なんか、あの、飛び出してる・・・・・・


 なんと言っていいのやらってな感じ。こう、グォパッて感じで歯と歯茎が唇の外へ丸ごと外出してると言いますか……────いや、あの、うん。もういい。


「テトラ、仕舞ってくれ」


「はは」


 はは、じゃないんだよ。ほら見ろソラさんナチュラルに俺へ釣竿を押し付けてきたじゃん。少女のメンタルはアレに関わりたくないってさ。


 男子とて可能な限り関わりたくないタイプの面だったもの。無理はない。


「あ、はは……ええと、テトラ君。さっき何したんです?」


「うん? あぁ、毒締め・・・


 と、ビギナーズラックか否か釣果一番乗りと同時、ギブアップした相棒から釣竿を受け取りつつ。ついでに軽く頭を撫でる甘やかしを並行する俺および満更でもなさそうに受け入れるソラを放置して、ビギナー二号が熟練者へ質問一つ。


「まあ要するに【ミミック】が此処の看板要素で『美毒家』って呼ばれてる魚なんだけど……あいつ、食べて気に入った毒の自給自足を始める生態があるんだよね」


「……ぁ、うん。わからないけど、続けてください」


 そんで、何やら訳の分からない常識を語り始める熟練者。


「簡単に言えば、より強い毒に身体を適応させた上で自己複製する能力があるんだよ。で、馬鹿なのが基本的に適応限界がないってところ。つまり……」


 何やら、珍しく楽しげに至極少数の人間限定であろう常識を語る熟練者。


「【真似っこ魚ミミック】を材料にして上手いことやれば、釣るのが面倒ってだけなコイツよりも遥かに稀少かつ貴重な最上位クラスの毒物だろうと複製できるって話」


「「「へぇ……」」」


「ただ、流石に生きたまま瞬時に適応できるほどの化物じゃないからね。いきなり強毒とか複数の毒を喰わされるとキャパオーバーで暫く気絶するんだよ。だから、スキルでもなんでもいいから糸伝いに毒を送り込めば簡単に釣れるってこと」


「「「へ、へぇ……」」」


 なんかさっきは薄っすらネガキャンしてたけど、コイツ結構あれだろ毒を好んで使ってる・・・・・・・タイプだろ────と、内心で思ったのは俺だけではないはず。


 活き活きしてんなぁ……なんて、個人嗜好の自由を尊ぶべく生暖かい微笑みを浮かべつつ。改めて片手竿二刀流を構える俺の視線に気付いたのだろう。


 テトラは小さく「ん゛んッ……」と、それもそれでらしくない咳払いを一つ。


「……贅沢は言わないけど、十匹くらいストックできたら嬉しいから。頑張って」


「「「はーい」」」


 囲む三人それぞれから、年上らしい我儘肯定の返事を引き出した。




 ソラさん、あなた釣竿さっき俺に投げたでしょうが。どう頑張るつもりかな?







頑張って応援します。かわいい。


ちなみに意識高い系の別名を付けられている【トキシック・ミミック・キャラックフィッシュ】さんですが釣り上げ困難な要因は複数存在しており、


・単純に個体数が少ない

・当然ながら別種の生き物も毒池内に生息しており邪魔者多数

・個体毎に細かな食事の〝嗜好性〟が存在している

(餌の形、香り、動き等々ミミックごとに別物と言っていい好みがあるため、釣り餌の如何のみならず釣り人の気配や竿操作などでも食い付くか否かが変わる)

・ハズレ個体に当たると一瞬で釣り糸を嚙み切られる


大体そんな感じ。熟練者曰くのクソゲーに偽りナシ。

テトラ君が釣竿を複数常備していたのも人手を頼ったのも訳アリってこと。






それから前話あとがきに載せるのを完ッッッ全に忘れてたんですけれども


──────────────────

◇Status◇

Title:剣聖

Name:Ui

Lv:151【45】

STR(筋力):700

AGI(敏捷):200

DEX(器用):500

VIT(頑強):300(+300)

MID(精神):200

LUC(幸運):0

Lv.3《速考》


◇Skill◇

至刀ノ導手スサノオ

《無限無明》-Activated-

Off《天地壊闢》

Off《絶刀域》

Off《断界至刀イディアルテ・エスパーダ

Off《我溢の境地》

Off《刀命の矜持》

Off《戦衣無縫》

Off――――――

Off―――

Off――

 ――

 ―

 ―


・Active

剣聖ノ晴心プログレス・アストレア


・Passive

《リミットブレイク》

《仙眼ノ光瞑》


◇Arts◇

【結式一刀流】

飛水ひすい

打鉄うちがね

阻霧はばきり

天雪あまゆき

枯炎かれほむら

重光えこう

七星ななほし

昇雨のぼりあめ

揺霰ゆりあられ

鋒雷ほうらい

 ――――――

 ―――

 ――

 ――

 ―

 ―

唯風ゆいかぜ

──────────────────

──────────────────

◇Status / Trance◇

Title:剣聖

Name:Ui

Lv:151【45】

STR(筋力):900

AGI(敏捷):200

DEX(器用):500

VIT(頑強):450(+300)

MID(精神):──

LUC(幸運):0

──────────────────


はい。現【剣聖】様のステータスでございます。お納め下さいまし。

幾つかのスキル詳細に関しては別の機会に説明が入るかもしれないとのことです。


スキルデリートしてたんちゃうの云々って話も纏めて、ね。

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