その頃 / その頃
────然して、世界のどこかで仲良しクランが一層の親交を深めている折。
陣営問わず『序列持ち』が集う場所と言えば此処。アルカディア全人類の旗頭および、全会一致の参謀様がおわす城こと【騎士の王城 -エルファリア-】にて。
「それでは改めまして、詳細ミーティングを始めさせていただきます」
今日も今日とて努めて怜悧な声音を淡々と紡ぐ【侍女】様が、席に顔を揃えた面々を見渡しながら。会釈と共に、静かな宣告を響き渡らせた。
集まっているのは十名余り。
まずはヘレナの主こと【剣ノ女王】アイリスを含めた攻略選定メンバー。同南陣営からは【城主】メイ、北陣営からは【玉法】サヤカおよび【音鎧】リンネ、そして東陣営からは【無双】囲炉裏と【銀幕】ゆらゆら計六人。
然らば、と。
「事前通達の通り、こちら六名で最終決定とさせていただきます。……連絡への返信あるいは、この場へ集まっていただけたことを了解と受け取りました」
「………………」
まるで『連絡としての返事を寄越さなかった者』がいるかのような台詞と共に、ヘレナの片眼鏡が誰かを映しつつキラリと光を反射する。
別に返事は求めていないが案の定、どこかの銀色は無言かつ無反応であった。
お隣で裃を着こなす金髪の侍が小さく溜息を零しているのを見て、自分も相乗りするか一瞬だけ悩んだ後……呑み込んで、淑女は司会進行の役を続行。
「二年目となるリンネも含めて、今更この面子で連携云々の相談や訓練は必要ないでしょう。攻略自体に関しては、各々の力を存分に奮っていただければ」
席の端っこ。序列持ち台頭からヘレナの言葉通り約二年ほど、流石に『新人』とは言えない歴を重ねてきた元気娘が「ひえぇ……」と責任諸々の圧に小さく悲鳴。
定期女子会で知れた仲。他陣営の者へ対しては珍しい呼び捨てなど様々な意味合いで慣れたもので、ヘレナは薄く笑みを零すだけで視線は投げず。
「とはいえ、それぞれが多忙の身。悪戯に時間を浪費するリソース損失を避けるため、全力かつ一極集中的に臨んでいただきます。────期間は、おおよそ三日」
傍らの玉座に納まる〝主〟とだけ確認の視線を交わし、参謀は断じる。
「皆様から頂戴した直近の予定を参考にスケジュールを組ませていただきました。攻略進攻開始は明後日の正午より、集合は今日と同じく此処エルファリア」
「……送迎は、ハルが担当してくれる」
ついで、注釈のように挟まれる一言。主にサヤカとリンネが『自分が言いたかったのかな』とか『嬉しそう』とか、頬を緩め生暖かく微笑ましげな気配を放つ。
が、怜悧の【侍女】様は主こと惚気姫を諸共に迫真の無視。
「はい。それから────」
「ん。まあ、ウチはバフ役ってことで」
淡々と頷いた後に視線を横に振れば、傍らの席へ納まっていた【糸巻】ナツメが手をヒラヒラと振りながら適当……──を、装っている硬い表情で受け取った。
二年目の先輩とは異なり、こちらは真実まだまだ。
先輩だの後輩だのを気にし過ぎるというか、大事にし過ぎるというか。自分に代わる大規模戦闘指揮官としての先は、長い道のりが見えている────
さておき、
「攻略を仕掛ける【青源の深域】は、既存の北国跡地ではなく更に遠方の事実上未達領域。拠点を設営しての缶詰めになる以上、一般プレイヤーとの偶発的な接触や騒ぎを避けるためですが……ハル様とナツメの『調伏獣』間で連携することで」
「移動時間、爆短縮ってね。一万キロくらいなら二時間も掛からないわよ」
物理的な意味の長い道のりであれば、幸い今のヘレナたちには劇的な特効択が存在する────と、一年ほど前までの仮想世界の常識を粉々にする文言をナツメも口にするが、今更それに首を傾げたりツッコミを入れる者は一人もいない。
曲芸師、もとい【星架】様々である。
「輸送中は各自ログアウトにて待機、この間で昼食を摂るなど準備を整えてください。間違っても、ハル様の侍従が備える特殊スキル……光速(光速ではない)を興味本位で体験して、悪戯にコンディションを乱すことなどないように」
「「「………………」」」
「いいですね、リンネ」
「えっ名指しです!? しませんってば流石に! しませんって!」
「ふふ……」
「貴女もですよ、サヤカ様」
「ぇっ、あ、は、はい……!」
本当に、様々というかなんというか。その影響力が悪戯に蔓延するのも、ある程度は目を瞑るべきなのだろう────溜息くらいは、許されるだろうが。
……重ねて、さておき。
「移動に関しては、そのように。拠点設営に関しては……」
「はい、お任せを」
「姉の制御も、はい。ある程度なら、はい」
最近は方向性を変えた問題児と成りつつある『聖女』の両脇、いつもの如く控えていた〝鏡〟と〝剣〟……つまるところ、序列持ちの最たる良心へ視線を振った。
然して、揃い北の『三法』が完成。サヤカと併せて〝結界〟を構築することで如何なる不測の事態も事前排除が叶うゆえ、これ以上ない万全の備えとなる。
別の意味でも、万全の備えだ。
天然無茶ボケ、眠り姫、ほわほわ聖女、厄介オタク、そして究極不愛想唯我独尊不器用ツンデレ。流石に苦労人枠一つで面倒を見るのは困難だろうと。
席の端、侍が救いを仰ぐ目で双子を見ている。
どうか共に頑張っていただきたい────……なんて、しれっと留守番組に自分を納めているヘレナは早くも他人事のように、心中から応援を送りつつ。
「それでは……ここまで、質問のある方は?」
信を以って預けられた曲者もとい癖者たちの手綱を、慣れた手際で操り続けた。
◇◆◇◆◇
転移音を聞き取り、振り返って目に納めるまでの数秒間。
自然と仮想脳を過っていくのは、この瞬間まで今日に考え続けた予想案や妄想案……別に俺だけに限った話ではないだろう、恥じる必要のない楽しみ方だ。
カナタは仮に纏身体なら絶対〝犬〟だよなとか、いやでも転身を選んだとしたら遂に今まで男と仮定していた微謎に解答が示されるのではないかとか。
お師匠様はマジわっかんねぇ。纏身なんでも似合いそうだけどニアと同じく〝龍〟あるいはアーシェと同じ方向性(?)で〝天女〟とかもアリアリのアリ。けれども何となく転身を選びそうな気もすんだよなぁ、お爺様への憧れ込みでとか。
正直、システム的な性能面は我ながら迫真のガン無視。
あれが似合うよなーとか、こうなったら面白いなーとか、完全に極個人的な娯楽としてワクワク予想タイムを好き勝手に楽しませていただいた次第だが……。
さて、と。
結局のところ、訪れる現実の衝撃に勝る妄想や無し。ういさんの新しい姿も、カナタの新しい姿も、どっちも楽しみだなぁ────なんて、そんな風に。
割かし、軽い気持ちで振り向いた俺は、
「 」
ちょっと理解の及ばぬ光景を瞳へ映すに至り、思考ごと言葉を丸ごと失い吐息すら漏らさず完全無欠に瞬間フリーズ。両脇のソラとテトラの気配も俺同様。
さすれば、時の止まった中で動くのは俺たち三人を除く二人だけ。
「あ、あら……? なんだか、とても動きづらいような……」
ちょっと筆舌に尽くし難い我が師および、
「…………………………そう、でしょうね……わぁ…………」
ちょっと変更点が見当たらない、後輩二号。
────いや、うん、ある意味そっちの方が謎のカナタ〝君〟……なのか〝ちゃん〟なのか結局は判断不明で来やがった『そのまんまカナタ』は置いとこう。
今は何よりも、目立った大事件で俺の心は手一杯だ。
動きづらい、と本人も口から零しているが……さもありなん。道理だろう。
「…………………………………………そ、そーれは、予想外、っすねぇ……?」
なぜって、そんなもの。
「……? …………??? ……え、あの、ハル君? たち……」
普段とは、ほんのり異なる気がしないでもない声音が、上から聞こえるように。
「…………小さくなりましたか?」
体格が、まるきり変わってしまったのだから。
「えー、とぉ…………いや、逆っす。逆です我が師よ」
「逆……?」
「いやまあ確かに俺も《転身》で縮みますけども、そうじゃなくて、ういさんが大きくなってんですよ。────メチャメチャ身長、伸びてます」
斯くして、手鏡など気の利いた物が存在しない第二世界。俺の目に映る〝姿〟を隠さず告げれば、見慣れぬ【剣聖】は……しかし、実に見慣れた仕草で。
「………………………………まあっ……!」
おっとり穏々。ゆっくりじっくり焦らず和やかに容を変えた自らの姿を見下ろし眺めた末、お淑やかな驚きを示しながら楽しげにコロコロと笑んだ。
はい。笑んで、しまって、
「────はぁ、ぅ……」
俺の隣で、相棒撃沈。ぶっちゃけ俺も直撃弾を貰い気を失いかけていたが、先に堂々と沈んだとはいえ想い人の前。気合いで持ち堪えつつ頭の隅で素数とダンス。
ダメだって。
いや、致死だって。
こんな、こ、こんなものが……────
こんなものが、在って、赦されるのかと。
おそらく、ちょうど〝表〟の俺に並ぶくらい。女性にしてはハッキリ高身長。
普段は肩で揃えられている灰色の髪は色をそのまま、特殊称号『剣聖』の強化効果である《布都御魂》を纏う際の如く真っ直ぐ流れる長髪に。
スラリと長い手足、常の灰色から彩を変じた金色の瞳……そして最たる変化もとい『特徴部位』は、右前頭部。小さくも確かな存在感を放つ真白な〝角〟が一本。
その姿、素直に言葉で表すのなら────浮かぶのは〝鬼〟の一文字。
つまるところ……小さな大和撫子ではなく、完全無欠に大人の大和撫子へと究極的かつ反則的な超次元進化を果たしてしまった我が師は、こちらを見下ろして。
「うふふっ……」
実に楽しそうに頭を撫でることで、まず一手。
「────後は頼んだテトぁ…………」
「なにを!?」
弟子に完全なるトドメを刺しつつ、嬉しそうに微笑んだ。
とまあ、ひとまず故人は置いときまして。
トランス披露済みが増えてきたので、ここらで各人の選択理由をオマケ公開。
──転身組──
主人公:MP二本も使えるとかコレ一択じゃね?(MP爆浪費ビルド並感)
囲炉裏君:ビルド二枚目が欲しかった(広域殲滅特化魔法士型)
オーリン:ビルド二枚目が欲しかった(自己弱点潰しの敏捷特化型)
──纏身組──
ソラさん(天狐):性別変更ちょっと怖い。
アーシェ(森人):そうだ、モフモフで誰かさんを誘惑しよう(企画倒れ)
ニアちゃん(龍):誰かさんに可愛い可愛い言われてる狐っ子ちゃん羨ましい。
テトラ君(猫):MP二本目もビルド二枚目も必要ナシ。
フジさん(翡翠):動物好き。ネコ飼いたい。
ルーちゃん(犬):レディですから!!!!!!!!!!(???)
お師匠様:誰にとは言わないけれども、こっちの方が喜ばれるかなって。
カナタ(?):そろそろ大丈夫かなって思った。
──白座攻略参戦未判明組──
ゴッサン:不明
ゲンさん:不明
雛さん:不明
──お披露目機会が無さそう組──
ロッタさん:《纏身》リス(可愛いとリアル奥さんに大好評)
ゾウさん:《転身》高身長ブロンド美女(誰その女と妻に揶揄われた)
──世間様──
《転身》人気が大氾濫中にて人口比率爆傾を維持。
なお細かい部分だとテトラ君(猫)はアメリカンショートヘア(黒)
ルーちゃん(犬)はダックスフント(茶)がモデルタイプらしいです。
あれルーちゃん犬型纏身体って描写してなくね???
まあいいか。
言わずもがな、いつものことですが完全に各々の思考に任せているため
部外者の意向とかは全く介在しておりません。あしからず。




