一方その頃リバーシブル
「────……ん?」
進捗良好、三箇所目。
巡る五芒星の頂点にて再びの留守番をしていた折のこと。不良と淑女が転移門を潜ってから二分少々、もう暫く帰還は先だろうなといった頃合い。
軽やかなサウンドと共に、一通のメッセージが届けられた。
重ねて単なるメッセージなら今日は朝から頻繁に受け取っている。ゆえに誰彼からの連絡自体は珍しいものではないが……流石に、コレに関しては。
好きな女の子からのモノとあらば、一旦放置する男が何処にいるという話だ。
────とはいえ、
「なぜにメッセ」
差出人欄に記載されているのは【Nier】の四文字。
つまるところ俺との無制限念話権を持っているニアからの『手紙』ってなわけで、アレを造ってからは初ということもあり首を傾げて然りの珍事。
然らば、口頭で伝えにくいことか……? などと微妙に不安を覚えつつ────
「……………………………………………………っふは」
やや警戒しながらメッセージを展開した俺は一人。あまりにもあんまりであんまり極まりない〝絵〟を見せ付けられ、思わず気の抜けた声を零して空を仰いだ。
そして跳ね上がった視界に追従するはメッセージ窓。文字など一つも綴られていない本文欄のド真ん中へ映し出されているのは、添付された画像が一枚。
「なんだよ。自慢かよ……」
中央に、困っている顔の我が相棒。そして両脇から『はい、あーん』の構えでクッキーなりチョコレートなりをソラの口元へ差し出しているニアーシェの並び。
バックは賑やか極まる二重の意味で〝おかしな〟風景で満たされており、もう本当に様々な意味合いで夢の光景と言って差し支えない画像幸福度だ。
勿論、光の速さで保存した。あとで許可取って現実に持ち帰ろう。
────ってか、
「ぁー……パフェとか食いてぇ」
普通に羨ましい。間違いなく俺を甘党スイーツ男子(笑)と知っての狼藉、絶対に許さんぞニアあんにゃろうと推定首謀者に柔らかな恨みを念じていると……。
「うん?」
ポコン。再びの新着メッセージ。
然して、なんぞやトドメの追撃かと身構えたのは一瞬。差出人【Sora】の表記を見て一切の疑いを捨て去りながら二通目を開いてみれば────
【Sora】:ポケットの中。
綴られていたのは、一言だけ。ならばと、やはり疑うことなくインベントリを開き相棒と統合されている〝ポケット〟の中を漁る……さすれば。
「……、…………はは、嬉しい差し入れだこって」
溢れていたのは、大量を超えて膨大と称するに足る多種多様な菓子の山。
察するに、かの有名な『お菓城』にでも遊びに行ったのだろう。素直に、いろんな意味で羨ましいなと……三人それぞれへ、僅かばかりの嫉妬を覚えながら。
俺も暇があれば行ってみようかな。えぇ、寂しく一人で。
────なんて、誰も見ていないがゆえに格好付けることなくガキっぽく拗ねながら。インベントリから取り出したチョコを一粒、口の中へと放り込んだ。
……なお、その後。
「ヘイゆら。オヤツあるけど食べるぅ?」
「ぁ? いらねぇ」
「あらぁソラさんからの差し入れなのになぁ残念だなぁ」
「……、…………チッ、貰っといてやる。寄越せ」
「そこは素直に『欲しい』って言────おいヤメロ弾幕を浮かべんなキレ易い若者かよ。サヤカさんは如何です? そりゃもうアレコレ沢山ありますよ」
「まあ、お城の……嬉しいです。ちょうど最近、恋しくなっていたもので」
天使からの甘い差し入れは、不良と淑女にも好評であった。
キリ。




