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『可憐な公爵令嬢(物理最強)ですが、森で助けた冷酷な第二王子に正体を暴かれて激重ヤンデレ化されました』  作者: CASCADE


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第5話:病弱令嬢(※部屋で激しい筋トレ中)


「ふーっ……ふーっ……! 九百九十八……九百九十九……一千っ!!」

ドスゥン!!

夜会から帰宅した翌朝。自室の床で最後の一千回目の腕立て伏せを終えた私は、荒い息を吐きながら汗を拭った。

(はぁぁ……! 朝のトレーニングは心が洗われるわね……じゃなくて!!)

バッと立ち上がり、頭を抱えて自室のベッドへダイブする。

(ヤバいヤバいヤバい!! 昨日の夜会、完全に詰んでたじゃない!! なんで手の手当てだけで特定してくるの!? あの王子、人間観察の能力が鋭すぎでしょ!!)

枕に顔をうずめてゴロゴロと転がる。

あの冷酷で美しすぎる銀髪の王子――レオン殿下の執着に満ちた瞳と、手背に落とされた冷たい口づけの感触が脳裏に焼きついて離れない。

(『命と心を奪っていった責任』って何!? 助けてあげておいてそんな重すぎる言いがかりつけられるとか理不尽すぎるんだけど!!)

だが、ここでパニックになって自暴自棄になれば、私の負けだ。

私はむくっと起き上がり、不敵な笑みを浮かべた。

(ふふふ……甘いわね、レオン殿下! 私にだって知恵はあるのよ! どんなに執念深く追い詰めてこようと、要は『会わなければいい』のよ!!)

そう、私の思いついた完璧な回避計画。

作戦①:【病弱アピール(引きこもり)作戦】!!

(これよ! これしかないわ!! 今日から私は『夜会の疲れで倒れてしまった、儚く病弱な公爵令嬢』になるの! お茶会の誘いも、王宮からの夜会も、全部『体調不良』を理由に辞退!! 部屋に引きこもっていれば、王子だって手出しできないはず!!)

屋敷から一歩も出ず、自室で完璧なおいとま生活(※中でスクワット千回&腹筋千回)を送り続ければいいのだ。

(ふふん! 完璧すぎる! 我ながら天才的な閃きだわ! これで私の可憐なお嬢様ライフも、おうち筋トレ時間も守られる――!)

「リリィ! 大変だ!!」

バァァァン!!!

勝利を確信して一人でドヤ顔を決めていたその瞬間、部屋のドアが勢いよく吹き飛ぶような音を立てて開いた。

飛び込んできたのは、青ざめた顔をした長兄のサイラスお兄様だ。

(びっくりしたぁ!? お兄様、乙女の部屋はノックして入ってよ!!)

「お、お兄様……? どうなさったの? わたくし、なんだか急に体調が……」

慌てて胸を押さえ、儚げに目を潤ませて「病弱ムーブ」を開始する私。

しかし、お兄様はそれどころではない様子で、手に持った銀の装飾が施された高級感あふれる手紙を突き出してきた。

「リリィ、体調どころじゃないぞ! 王宮から……いや、第二王子レオン殿下から直筆の手紙が届いたんだ!!」

(……はい???)

「内容は何なんだ……!? 開けようとしたら『リリアーナ嬢以外が開封した場合は国家反逆罪とみなす』って凄まじい呪いみたいな封ろうがしてあって開けられないんだよ!!」

(呪いみたいな封ろう!? どんだけ重いの手紙一枚に!?)

プルプルと震えるお兄様から手紙を受け取り、私は引きつった手で封を切った。

中にあった上質な便せんを開くと、そこには流麗で美しい文字が躍っていた。

『愛しいリリアーナ嬢へ。

昨夜は素晴らしい時間をありがとうございました。

あなたが夜会の疲れで体調を崩し、引きこもろうとされるかもしれないと考え、先回りしてこの手紙を送ります。

明日、あなたを『王宮のバラ園』でのプライベートなお茶会にご招待いたします。

もし拒否されるようであれば、僕自らローズベル公爵邸へ出向き、あなたを抱きかかえて王宮へお連れすることになりますが……よろしいですね?

追伸:逃げられると思わないでくださいね』

(先手打たれてる―――――――!?!?!?)

私の「病弱引きこもり作戦」、開始わずか三分で完全終了。

(なんなのこの人!? 私の思考パターン全部読まれてるんだけど!? 恐怖なんだけど!! 自宅まで強襲して抱きかかえて拉致するとか、王子がやっていい脅迫のレベルを超えてるでしょうがーーー!?)

「リリィ……? なんて書いてあるんだ……?」

心配そうに覗き込んでくるお兄様の前で、私の顔からはすーっと血の気が引いていくのだった。


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