第23話:作戦⑦【遠避&領民取り込み作戦】
「ふふふ……これぞ完璧な一手! 作戦⑦【『療養のための遠避&領民取り込み』作戦】よ!!」
病気が治った(という体にした)私は、さっそく「空気の綺麗な遠方の領地で静養したい」と両親に直訴した。
王子の罪悪感アタックがまだ効いていたおかげで、「彼女の負担になるなら……」と珍しくレオン王子も遠出を止められず、私は都から遠く離れた山間の別荘へと見事に移動することに成功したのだ!
(勝った……! 物理的な距離さえ取れれば、いくら王子でも毎日執拗につきまとうことはできないわ!)
馬車を降り、清々しい山の空気を取り込みながら、私はふふんと鼻を鳴らした。
だが、これだけで終わらないのが今回の私の真の狙いだ。
(ただ逃げるだけじゃ、また王子が追ってきた時に外堀を埋められるわ。だからこそ――この土地の住民(領民)たちを全員私の味方にしておくのよ!!)
作戦の全貌はこうだ。
この別荘地で「儚げで可憐だが、健気で優しい病弱なお嬢様」としてのイメージを完璧に植え付ける。
そうすれば、もし王子が強引に連れ戻そうとしたり圧力をかけてきた時、領民たちが「あんなに可憐で儚いリリアーナ様を苦しめるなんて!」と一斉に私を守る盾(世論)になってくれるはず!
(フハハハ! 我ながらなんて完璧な情報戦かしら!!)
「さあ、そうと決まればさっそく営業活動開始よ!」
私は可憐で儚げなドレスに身を包み、日傘を優雅に差し伸ばすと、弱々しい足取りで別荘近くの村へと向かった。
◇
「まあ……あのお方が、公爵家から療養にいらしたリリアーナ様……?」
「なんてお綺麗で……でも、今にも風に吹き飛ばされそうなほど儚げなお方だ……」
村に入ると、珍しい公爵令嬢の姿に村人たちがざわつき始めた。
(かかったわね!! ここからが私の本領発揮よ!)
私は今にも倒れそうな儚げな笑みを浮かべ、小さな声で村人たちに声をかけた。
「皆さま、はじめまして……。わたくし、体を痛めてこちらで静養させていただくことになりました、リリアーナと申します。どうか……よろしくお願いいたしますわ」
儚げに胸元を押さえ、可憐にお辞儀をする私。
「まあ! なんてお優しいお方……!」
「あんなに美しくて可憐なお嬢様が、病に苦しまれているなんて……!」
「俺たちが絶対にお嬢様をお守りするぞ!」
(よっしゃぁぁぁぁ!! 掴みは完璧!! 村人たちの目が一瞬で『守ってあげたいアイドル』を見る目に変わったわ!!)
私の目論見通り、村人たちは一瞬で「可憐なリリアーナ様」の熱烈な味方となった。
(これで物理的距離も確保! 地元の世論も味方!! 王子、いくらあなたでも、領民全員に愛される儚げなお嬢様を強引に連れ去ることはできませんわよー!)
高らかに勝利を確信した私だったが――この時、私はまだ知らなかった。
この村の近くに、「村人たちを困らせる凶暴な魔獣」が生息しているという重大な事実を。




