第22話:必殺! 罪悪感スナイパーと次なる一手
(くっ……! このままでは『あーん』の過剰摂取と至近距離の顔面暴力で、私の理性が崩壊してしまう……っ!!)
ベッドの上で王子の甘い看病に包囲された私は、最後のカードを切ることを決意した。
(押してダメなら引きまくる!! 王子の私に対する『激重な愛と過保護』を逆手にとってやるわ!!)
「リリアーナ嬢? お粥が熱かったでしょうか……?」
心配そうに覗き込んでくるサファイア色の瞳。
私はすっと視線を伏せると、両手で顔を覆い、肩をプルプルと小さく震わせ始めた。
「……っ……う……ぐすっ……」
「リ、リリアーナ嬢……!? どうされたのですか!?」
完璧だったレオン王子の表情が、一瞬でパニックに染まる。
私は瞳にじわっと涙を溜め(※必死の演技)、泣きじゃくる可憐な少女を完璧に演じきりながら、消え入りそうな声で訴えた。
「うう……殿下……わたくし、情けなくて……っ。お忙しい殿下に、このような病床の身のお世話までさせてしまうなんて……! わたくしのせいで殿下のお手を煩わせ、ご迷惑をおかけしていると思うと……お心が潰れそうなほど苦しいのですわ……っ!!」
「ご、迷惑など! 僕はただあなたを――」
「いいえ……っ! 殿下が優しくしてくださるほど、わたくしの罪悪感が膨らんで熱が上がりそうですの……! お願いですわ、殿下……どうか、わたくしにこれ以上の罪悪感を背負わせないで……今日はお引き取りくださいませ……うわぁぁん!」
ぽろぽろと零れ落ちる大粒の涙(※嘘の涙)。
(どうよ!! 『自分が側にいることが彼女の毒になっている』と思い知らせる必殺の罪悪感攻撃よ!!)
「っ……あ……」
レオン王子は、まるで雷に打たれたかのように硬直した。
愛する人を看病していたつもりが、自分の存在自体が彼女を追い詰めて涙を流させていた――その事実は、執着心の強いヤンデレ王子にとって何よりの致命傷だったのだ。
「……すみません。僕が……僕の自己満足が、あなたを苦しめていたのですね……」
顔を青ざめさせ、激しい後悔と葛藤に苛まれるレオン王子。
「……分かりました。今日はこれで失礼します。ですが、どうか自分を責めないでください。悪いのはすべて、あなたを追い詰めた僕なのですから……」
レオン王子は絞り出すような声でそう言うと、傷ついた捨て犬のような切ない表情で、何度も振り返りながら静かに部屋を去っていったのだった。
◇
ガチャリ。
部屋の扉が完全に閉まり、王子の気配が遠ざかったのを確認した瞬間――。
バサッ!!!!
「勝ったーーーーーーー!!!!!!」
私は掛け布団を跳ね飛ばし、ベッドの上でガッツポーズを決めた!
「見たか銀髪冷酷王子!! 女の涙(※演技)の威力を甘く見るんじゃないわよーーー!!」
涙を指でぬぐい、私はふははと高らかに笑い声を上げた。
ついに……ついにあの強固な絶対領域(二十四時間密着)を破り、王子を一時撤退させることに成功したのだ!
「ふぅ……でも、あの王子の顔からして、しばらくは大人しくしてくれるはずだけど……」
私はベッドの端に腰掛け、顎に手を当てて考え込んだ。
「病気作戦」で時間稼ぎはできた。だけど、体調が戻った(ということにした)後、絶対に王子はまた別の角度から攻めてくる。
(次は何で来る……? 買収、要塞化、無茶ぶり、病気……全部攻略されたりカウンターを受けたりしたわ。……なら、次はもっと根本的な『物理的距離』を取るしかないんじゃないかしら……!?)
「病み上がりで空気が綺麗な場所で療養したい」と称して遠くの別荘へ逃げるか?
それとも、まったく別の新しい作戦で揺さぶりをかけるか?
ベッドの上で拳を握り締め、私は次なる完全逃走計画の構想を練り始めるのだった。




