第21話:悪夢の二十四時間密着看病!
(ちょっと待って……!! なんでこうなるのよーーーーーっっっ!!!)
ベッドの上で掛け布団をあごの下まで引き上げ、私は内心で盛大に叫んでいた。
「静養中だから会えない」という絶対防壁を築いたはずだった。
なのに、目の前にいる銀髪の王子は、その防壁を力ずくで踏み荒らし、なんなら自ら『看病』という名目で私の私生活に100%居座る構えを見せている。
「顔色が優れませんね……。やはり熱があるのでは?」
「で、殿下……ッ! お気持ちは大変ありがたいのですが、王子殿下に看病していただくなど滅相もございません! それに、万が一病が移ってしまっては……!」
必死に引きつった笑顔で遠ざけようとする私。
しかし、レオン王子は一切引き下がる気配を見せない。それどころか、サファイア色の瞳を重く揺らしながら、私の額にそっと自分の額を重ねてきた。
(((((距離ゼロ!! 距離ゼロですわ殿下ーーーーーっっっ!!!!!))))))
至近距離で交わる視線。王子の吐息が私の肌をくすぐり、美しい銀髪の毛先が頬に触れる。
あまりの顔の良さと、密着度の高さに、私の心臓が「ドックン!」と爆音を立てた。
「……ふむ。熱はなさそうですが、少し顔が赤いですね」
「そ、それは殿下が近すぎるからですの……っ!!(※本音)」
「ふふ、体調が悪くても、相変わらず愛らしい反論をされますね」
レオン王子は額を離すと、満足そうに目を細めた。そして、サイドテーブルの上に置かれた桶から固く絞った濡れタオルを取り出すと、私の手を優しく取って指先から丁寧に拭い始めた。
「僕の不手際であなたを倒れさせてしまったのです。僕に罪を償わせてくだされば、移るものなど何もありません。……それに、あなたの側にいられるなら、病の感染など僕にとってはご褒美のようなものですよ」
(言ってることのヤンデレ度が完全に限界突破してるのよ!! 感染をご褒美って言わないで!!)
「殿下、あのお粥をお持ちしました」
部屋のドアが開き、侍女が運んできたのは、王宮の超一流シェフが作ったという極上の滋養スープ粥。
湯気とともに、香ばしい鶏ガラと高級ハーブの優しい香りが部屋中に広がる。
(ぐ……っ! 昨日の夜、森でアーマード・ベアをぶん殴ったあと何も食べてないから、お腹が空きすぎて倒れそう……!)
「さあ、リリアーナ嬢。僕が食べさせて差し上げますね」
レオン王子はスプーンでお粥をすくうと、ふー、ふーと丁寧に息を吹きかけて冷まし、私の口元へと寄せてきた。
(また『あーん』のターンが来たーーーーー!!)
「あ、あの……! お粥くらい自分で食べられますわ……っ!」
「ダメです。病人に無理をさせるわけにはいきません。……さあ、口を開けてください」
(「病気」のせいで自分で食べる権利すら奪われたのーーーーー!?)
逃げ場のないベッドの上で、私は王子の手から甘くて重いお粥を一口ずつ食べさせられるという、過去最大の甘やかし(拷問)を受ける羽目になるのだった。




