第14話:レオンの密談と、迷走する妄想
(やばいやばいやばい……!! 私、なんであんな無茶ぶりをしちゃったのーーー!?)
自室に戻った私は、ベッドの上でゴロゴロと転がりながら頭を抱えていた。
「まだ誰も見たことがないような変わったお茶会」――。
あんなの、「めんどくさっ、じゃあもういいや」って王子が引いてくれるのを期待して言っただけのハッタリだったのに!
(あの人、完全に『面白そうだな』みたいな顔してたじゃない!! あの銀髪冷酷王子が考える『変わったお茶会』って何!? 想像もつかなくて逆に怖すぎるんだけど!!)
脳内での想像が止まらない。
* 妄想①:【筋トレお茶会】
「リリアーナ嬢、今日はプロテインと巨大な肉パイをご用意しました。スクワットを千回こなした後に嗜みましょう」
(※私が泣いて喜んじゃうからダメ!!)
* 妄想②:【魔物鑑賞お茶会】
「あの森であなたが拳で沈めたような珍しい魔物を連れてきました。檻越しに紅茶をどうぞ」
(※物理的に危険すぎるからやめて!!)
(うぅぅ……どれが来ても私の『可憐なお嬢様』の仮面が割れちゃう気がする……! どんな恐ろしい企画を用意してくるのよ……っ!)
自分が投げかけた無茶ぶりの罠に自分でハマり、激しい不安とパニックに陥る私だった。
◇
一方その頃――王宮のレオンの執務室。
「――というわけだ。何か、彼女が心から驚き、楽しんでくれるような『変わったお茶会』の案はないか?」
真剣な表情でデスクに肘をつくレオンの前で、専属執事と側近の騎士たちがポカンと口を開けて固まっていた。
「……殿下。大変失礼ながら、国王陛下からの密命(国境の件)を三日で片付けた後に真顔でなさるご相談が『お茶会の企画』でございますか?」
「当たり前だ。僕にとっては国境問題などより、リリアーナ嬢の笑顔の方が何百倍も重要だ」
即答するレオンの瞳には、一切の迷いがない。
「ですが殿下……『変わったお茶会』と言われましても。通常であれば、珍しい紅茶の葉を取り寄せたり、異国の高級ドレスをプレゼントするのが王道かと……」
「そんなありきたりなもので彼女が満足すると思うか? 彼女は華奢で可憐に見えて、その実――」
言葉を切り、レオンは愛おしそうに手首の布切れ(あの森での手当ての布)に触れた。
「――誰よりも逞しく、型破りで、眩しいほどに強いお方なのだ。生半可な演出では見抜かれてしまう。僕がどれほど本気で彼女を求めているか、その熱意が伝わるような……誰も思いつかないような企画でなければ意味がない」
冷酷で完璧と恐れられる第二王子が、一人の少女を喜ばせるためだけに、国家の頭脳をフル回転させて真剣に悩んでいる。
「ふふ……待っていてくださいね、リリアーナ嬢。あなたが僕から目を離せなくなるような、最高の趣向を用意してみせますから」
銀髪を揺らし、企むように艶やかな笑みを浮かべるレオン。
逃げ場をなくすための甘く危険な包囲網は、今まさに静かに練り上げられようとしていたのだった。




