第13話:最後の悪あがきと、無理難題のお茶会
(味方が……味方が一人もいない!! お父様とお兄様は予算と筋肉に釣られ、お母様は最初から王子側に寝返ってたなんて……!!)
テラスを包み込むのは、爽やかな風と大輪のバラの香り――そして、背後に立つ銀髪の王子から放たれる、息が詰まるほどの激重ヤンデレオーラ。
「ふふ、お義母様のお墨付きもいただけて光栄です。これで誰にも邪魔されず、リリアーナ嬢と語り合えますね」
「まあまあ、レオン殿下ったら。若いお二人でお茶でもいかが? わたくしは席を外しますわね」
「お、お母様!? 待って、行かないで――!」
私の必死の視線も虚しく、ベアトリスママは「ふふっ」と優雅に微笑みながら去っていってしまった。
後に残されたのは、私とレオン王子の二人きり。
(詰んだ……完全詰んだ……!! でも、でもッ!! 私はまだ諦めないわよ!!)
崖っぷちに立たされた私の脳内で、残された最後の回路が高速回転を始める。
(家の中で逃げられないなら、高いハードルを突きつけて諦めさせるしかないわ……! 作戦⑤【無茶ぶりで撃退(難題)作戦】!!)
私はツンと素っ気ない態度を取り、背筋を伸ばしてレオン王子を睨み上げた。
「殿下、そんなにわたくしとお過ごしになりたいのでしたら……条件がございますの」
「ほう? 何でしょう。喜んで聞き届けますよ」
「わたくし、ありふれた普通のお茶会や歓談には、正直もう飽き飽きしておりますの! わたくしを本気で振り向かせたいのでしたら……そうですね、まだ誰も見たことがないような『変わったお茶会』を企画して、わたくしを楽しませてみせなさいませ! それができないのでしたら、二度とわたくしの前に現れないでいただきますわ!」
(どうよ!! 王子様が自分で一からちょっと変わった趣向のお茶会を企画するなんて面倒くさいし、普通のセンスじゃ私を納得させられないわ! これで「面倒だな」って引き下がるか、変なお茶会になって失敗するかの二択よ――!)
勝利を確信し、フフンと誇らしげに胸を張る私。
しかし、レオン王子は微動だにせず、むしろその氷のように美しい顔に、ゾクッとするほど艶やかで濃密な笑みを浮かべた。
「……なるほど。『変わったお茶会』ですか」
(え……? 引かないの……!?)
「ただの優雅なお茶会では、あなたを満足させられない……。いいでしょう。あなたに『こんなお茶会は初めてだ』と喜んでいただけるよう、僕が趣向を凝らした特別なものを用意しましょう」
レオン王子は優雅に微笑むと、すっと私の手に自分の手を重ね、その手背に熱を帯びた口づけを落とした。
「あなたを驚かせ、僕との時間を心から楽しんでいただくためなら、どんな工夫も惜しみませんよ。……楽しみに待っていてくださいね、僕の愛しいお嬢さん」
(やる気満々じゃないのーーーーーー!! 普通は「変わったお茶会って何だよ」って困るところでしょーーー!?)
レオン王子の瞳に宿るヤンデレの炎は、以前よりも楽しそうに燃え盛っていた。
(やばい……。ちょっと諦めさせるつもりが、また本気を出させちゃったかもしれない……!!)




