↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLUE ROSE  作者: うさぎさん⭐︎
第一章 君が大空を羽ばたけるように

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/35

八. 青バラ畑


「でも、どうしてボクなの?  君は姫なんだから、君が言えばたくさんの人が動くだろうに、どうしてボクと君と二人だけで……」

「少数精鋭ですわよ、勇者様。小回りも利きますし」

「うーん。まぁ、ゲームとかではよくあることだけど……。

 でも、そもそも本当にボクが勇者なのかなぁ……」

「心配せずとも、直にわかりますわ。誰が、真の再者なのか……」

「それもそうか。じゃあ、ボクは精々がんばるかねぇ。っつっても」

 青バラ畑の中にある小道を進みながら、猿は首を傾げる。

「手がかりっていってもなぁ、ここのどこにあるのかなぁ?

 なんかアイテムでも落ちてるんだろーか……」

 獏はしゃがみこんで青バラ畑を調べだす。

「でもなぁ、ゲームと違って、現実でキーアイテム入手するのって、困難そうな……」

 猿は手を止める。

「…………あ、あった!」

 拾い上げたのは、金鎖。空を睨んで吠えるオスライオンの横向きの姿──なぜかマントをしている──の描かれた金のメダルがついている。

「こんな簡単に見つかっていいのかなぁ……」

 とにかく姫に見せようと、獏は立ち上がる。

「……あれ? 姫? アンキ姫?」

 どこか緊張感のなかった獏の顔が強張る。

 絹を裂くような姫の悲鳴が耳に響く。

「ア、アンキ姫っ⁉︎」

 漠はペンダントを握ったまま、声のしたほうへ走る。

 ホワイトウルフがいた。

 白い毛並みに赤い──血のような瞳。全副、一メートル三十~

四十センチといったところか。

 姫は青バラ畑の中に開けた円形の休憩スペースに仰向けに倒れ、そのすぐそばにウルフ──その片足が、姫の胸の上に載せられている。

「ひ、姫ッ……⁉︎」

「いや、助けて……勇者様」

 葡萄色の瞳に、少女は涙を溜めている。

「モ、モ、モンスター⁉︎ ま、街の──しかも、公園に……」

 姫の胸に前足を載せたまま、ウルフは獏を見上げ威味する。

「ど、どうしよう、武器も何もないのに……!

 ボ、ボクは、文系だから、ア、アクションは苦手なのに……っ!」

 獏の右手が光り出す。

「な、なに⁉︎」

 見ると、それは、手の中のペンダントの輝きだ。

 ペンダントは光となり、長く細く形成する──、一振りの剣を。

「…………!」

 ライオンの描かれた金色の柄《つか》を握り締め、獏は息を呑む。

 ウルフが唸り声を上げ、獏に飛びかかる。

「う、うわ! そんな、いきなり!」

 奇跡的に左に転がるようにして避け、慌てて身を起こす。

「ゆ、勇者様……!」

 少女の声に、獏は顔を引き締め、剣を握り直す。

 再び飛びかかってくるウルフに向け、剣を振るう。

 ──ボクが逃げれば、こいつは彼女を手にかけるかもしれい………!

「ボ、ボクがこいつの注意を引くから、君は逃げて……!」

 気づくとそう叫んでいた。少女は驚いた顔をする。

 が、その言葉に一番驚いたのは獏自身だ。

「……早くッ!」

 ウルフは先ほど受けた一撃に、肩から赤い血を流し、獏から距離を取った場所にいる。

「で、でも、勇者様……」

「早くするんだ!」

 獏が姫のほうを向いたその隙に、ウルフの爪が獏に迫る。

「……がっ⁉︎」

 反射的に剣を振るが、ウルフは眺んでそれを避け、続いて跳び、獏の左足に噛みつく。

「うわぁぁぁっっ⁉︎」

 思わず剣を取り落とし、その場に尻餅をつく。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 耳元で心音がする。鼓動が爆発しそうなくらい敷しくなる。

 ウルフは今度は漠の左肩に噛みつく。

「う、うわぁぁッッ⁉︎」

 背が石畳に叩きつけられる。ウルフにのしかかられて、獏は顔を真っ青にした。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 このままでは、喉を食いちぎられる!

 剣を、剣を取らなきゃ……

 すごい力で押さえられている──

 このままじゃ……

 ウルフが赤い瞳を残忍に狭め、獏の喉元へ食らいつく!

《バカヤロウ!》

 刹那声が響き、赤い髪に金のメッシュを入れた少女の顔が脳裏に浮かぶ。

 金の光━━剣が金に光っている。

 光に目を瞑り、寸前で動きを止めたウルフの体へ、素速く手にした剣を薙《な》ぐようにする━━ウルフは後方へ跳んで避ける。

《おまえは、オレを殺す気かッ!》

 獏はそのまま剣をウルフへ向け伸ばす。剣から金色の光が走り、ウルフの体を包む。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 雷に撃たれたように動かなくなったウルフへ、獏は立ち上がり、左足を引きずって近づき、その体目がけて剣を振るう。

 それを引き抜くと、赤い血が吹き出して、獏の体を濡らす。

「はぁはぁはぁ」

 動かない獣を何度も何度も剣で刺し、それを屠《ほふ》った。

「………ッ?:」

 返り血に染まった自身の服と屍を見、獏は戦慄し、絶叫する。

「な、なんで、なんで……ッ⁉︎」

《おちつけ、バカ! 幻影だ!  それは命なき魔術で作り出された虚《きょ》だ!)

「ま、まぼろし……?」

 獏は目を狭め、ホワイトウルフの死体を見つめる。

 すると、氷がものすごい早さで溶けるように、死体は跡形もなく消え去った。

 服も元通り、血塗られてなどいない。脚の傷も肩の傷も嘘のように戻って━━治っている。

《幻術と甘く見るな! 人は湯と言われれば、水を熱いと感じることもある。同様に、術中に填《はま》ったまま、命に関わる傷を負えば、骸《むくろ》にだって成り果てる)

「き、君は、一体……?」

 声は響くのに、もう赤い髪の少女の姿は感じられない。

《オレは、オマエの──》

「勇者様!」

 黄緑色の髪の姫が、獏に駆け寄ってくる。

「勇者様、よかった……」

 彼女は頬に幾筋も戻を流し、それでも遠慮がちに獏の腕に手を添える。

「…………な、なにがなんだが……。女の子の声が聞こえて、か、体が勝手に動いて、気づいたら狼を殺してて……」

 獏は青バラ畑を見回す。

 もう、赤毛の少女の声すら聞こえない……。

「か、彼女が、ボクを操って、助けてくれたのか?

 だ、誰なんだ? 気のせいか、ボク、どこかで彼女を見たことがあるような──思い出せない……」

 額に手をやり眉を寄せ唸る獏。

 姫は目を半眼にし、どこか遠くを見るようにし、小さく笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。