六. 街へ
姫は赤いコートを着ている。フードを深く被っていた。
「……ここが、我が小国バースの城下町です」
「けっこう整然としてるねぇ」
石造りの家々を見渡し、復はマントをたぐりよせる。
「ちょっと、寒いけど。そういえば燃料資源って、石油とか石炭なんかのことだよね? 灯油ストーブとかあるのかな?」
「えぇ、ストーブはありますわよ」
「でも、君の離宮のボクの寝てた部屋には普通の暖炉しかなかったような」
「バードケージにはそんな物は有り得ません」
「…………、えっと、じゃあ、その、」
「大国ほど立派ではありませんが、列車も走っていますのよ」
「……自動車もあるんだね」
道を走ってゆく赤いスポーツカーを、獏は限めしげに見る。
「……ボクはもっと、中世ヨーロッパとか、ローマ神話とか、聖書とか……あぁいう感じの世界観のファンタジーが好みなのに……。
あぁ、でも、飛行機がないのが救いかなぁ──って⁉︎」
空を見上げ、獏は息を呑む。
「で、でかい……、しかも服着てる‼︎」
空を人間大のイヌワシが一羽飛んでゆく。大きな茶色い翼。鋭いくちばし。黄色い瞳。黒い爪の生えた鳥類の足──……。
「あぁ、バードピープルですよ」
「バードピープル?」
「ええ、この国ではヒューマンとバードピーブルが共存しているんです。
バードピープルたちはわたくしたちと同様の言語を話し、その翼に人の腕と手を隠し持ち、人同様に道具を使用できますのよ」
「す、すげ~〜! だからファンタジーって好きさっ!
……あ、そういえばどうしてボクは君の言葉が──この世界の言語がわかるんだろう?」
「それは、わたくしの巫女の力で可能にしたのですわ。
……王族や貴族にはヒューマンタイプが多いのですが、別にバードピープルを差別したりはしません。彼らには彼らのよさがあると、ヒューマンはバードピープルを、バードピーブルはヒューマンを尊敬していますのよ」
「いいねぇ」
「でも、ヒューマンとバードピープルの間には…………子どもは産まれません──」
「そうなんだ……なんか、残念だね」
姫は無言で獏を見る。
「だってさ、いいじゃん! バードハーフっていうかさぁ、人間に翼が生えたら! 天使みたいでさぁ、すっげーいいよッ‼︎
あ、それとも、上半身が鳥で下身が人間とか? そういうのもいいなぁっ!」
少女は葡萄色の瞳をほとんど閉じるようにして下を見る。石畳の道し
──……。
自分の影を確認して、彼女は顔を上げる。
「勇者様は……」
獏は他のバードピープルを探し、嬉しげに空を見ている。
「勇者様は──……」
葡萄色の瞳が強い感情を帯びていることに、獏は気づかない……。




