四. アンキ
「まぁ、よくお似合いですわ、勇者様」
部屋に再び入ってきた姫は、猿を見て胸の前で指を組む。
「そ、そうかな?」
「えぇ、とてもすてきですわ」
「あ、あはは、いやぁ、照れるなぁ」
目を細くし、嬉しげに笑う獏に、少女は歩み寄る。
「え、えっと、ここは姫の離宮なんだよね?
え、えぇとこれからどうするの?
やっぱり王宮に行って王様とご対面かなぁ?」
彼女の葡萄色の瞳から表情が消える。
「…………お逢いしてくれるはずがない」
「え? どうして?」
「いくら勇者様を召還しても……。あの方はお逢いしてはくれない……」
「あ、え、え?」
嘘のように明るく、彼女は笑った。
「忙しい方なのですわ」
「ど、どうして? だって、君のお父さんだろ?」
「…………忙しい方なのですわ」
「う、うん……。でも……」
なんだか納得できない。
「お父様はお父様のやり方で、ラフが姫を捜索しております。
捜索隊を出したり、情報を収集したり。ことを公にはできませんので、極秘裏にですが。
勇者様……」
彼女は毅然とした瞳で獏を見上げる。
「わたくしたちは、わたくしたちのやり方で、姫君を捜しましょう」「う、うん……。あ、そうだ。肝心なこと聞き忘れてた。
君の名前は?」
「え……」
少女はなぜか俯いた。
「…………アンキ……」
「アンキ? 変わった名前だね。あ、ボクは日向獏っていうんだ」




