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BLUE ROSE  作者: うさぎさん⭐︎
第五章 あたしだけのブルーローズ

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一. 光の勇者


「シネ‼︎」

 大地が大きく揺れる。

 かまいたちが、ラフガの肌を切り裂く。


 不可能を可能にする青いバラ。

 子どもの誕生を祝福する青いバラ。

 ねぇ、どこに咲いてるの?

 どこに行けば逢えるの?

 有り得ないのに有り得ないのに──


「うわぁぁぁああッッ‼︎?」

 眩しすぎる光が溢れる。

 肌を切り裂かれ、倒れたラフガの目の前──


「ば、獏……?」

 体のあちこちから血を流したが、陽姫を庇うように、立ち現れ、その場に膝をつく。

 ──光の姫を助ける勇者。


「はぁはぁはぁ」

 息を乱し、獏はシエルを見上げる。

「シ、シエル……?」

 それから、ラフガやヒビキを見る。

「何? ヒビキがテレポートさせてくれたの?」

「……ぼくじゃない」

「じゃあ……」

「たぶん、それはおまえの力だ。獏」

 同様に息を乱したラフガが言う。

「頼む、獏。シエルを……助けて……」

 そのままラフガは気絶する。

 獏も気絶しそうになる──なんとか、こらえる。

 ヒビキは彼のそばに膝をつき、獏を支える。

「大丈夫か、獏……? 

 いいよ、おまえ、もう、帰れよ」

「え?」

「日本に帰してやるよ、オレの力で。

 このままじゃ、マジでおまえ、死ぬかも……。

 い、いや、びょ、病院に……!

 あぁ、ど、どうすれば……? 

 元の世界に戻ったら治るのか? ど、どうなんだ?」

「……ヒビキは……?」

「もしも伝説が本当なら……。アンキを倒し、国を救うのは、このオレ……」

 ヒビキは獏のマントを切り裂いて、それをきつく結び、獏の肩と胸と脚の傷を止血しようとする。

「ご、ごめ、慣れてないから、うまくできない……あぁ、それに、陽姫もどうにかしなきゃ……」

 ヒビキはラフガに近寄り、今度は自分のマントを切り裂き始める。

「陽姫を助けに来たのね? 獏──」

 シエルは泣きそうな顔をした。

「なんでよ、獏? 陽姫じゃなくて、あたしを助けてよ……!」

 シエルは獏のほうへ手を伸ばす。

「ねぇ、あたしを助けてよ? あたし、あたし、陽姫になりたかったの……そうして、陽姫の勇者のあなたに逢いたかったの……‼︎」

「シエ……」

 血の気の引いた顔で、獏は笑う。

「ごめん、ね……君の勇者になれなくて……」

「大空を──本当の青い空を、あたしと一緒に飛んでくれる人が、欲しかったの……!

 青いバラを、あたしに青いバラを……」

 青いバラが欲しかったの。

 あたしだけのブルーローズ。

「シエル……君は、飛べる……。

 きっと……空を……青いバラと共に……」

 ──青いバラを贈ってくれる人が。

「シエ……ごめ……」

 獏の体が傾ぐ。彼に手を伸ばし、その体を抱き、ヒビキはシエルを睨む。

「アンキ……てめー‼︎」

 その体を静かに地に横たえ、ヒビキは立ち上がる。

「いい奴だったじゃんかよ、コイツ──バク、いい奴だったじゃねーかよ‼︎

 オレと、おまえに──青いバラを贈ってくれようとして──……なのに、てめー‼︎」

「だ、だって……」

 ヒビキの幻獣たちが、シエルを取り囲むように現れる。

 シエルの風の暗獣たちも、シエルを護るように現れる。

「だって、ヒビキにはわかんないよぉ‼︎ 陽姫にも、獏にも──わかんないよぉ……ッ‼︎」

「アンキ、でめーいい加減にしろよなッ!

  そんなんじゃ、一生誰も、てめーのことなんかわかってくんねぇよ‼︎」

 わかりたくても、いくらを手を差し出しても……

「青いバラなんかなくったってあったって──もうどっちでもいいじゃねぇか!

 おまえには、バクがラフガが……ぼくだって、いるのに……ッ‼︎」

 いや。もう、シエルは何度も差し出されているはずだ。

 ブルーローズを。

 受け取らうとしないだけで。

「……獏がいつか、あたしの部屋の花瓶に、ブルーローズを生けてくれたの……。

 嬉しかったな……」

 シエルは小さく言って、笑う。

「さようなら。ヒビキ」

「……は?」

「帰っていいよ、あんた。

 伝説は、所詮、伝説よ。

 あんたにあたしは倒せない」

「何……?」

「もう、いらない。バイバイ」

 ヒビキはシエルに近づこうとする。

 それを風の暗獣が阻み、ヒビキの幻獣も動く。その隙に──……

 早口に、シェルは唱えた。

「異世界への扉よ開かれん。我の勇者よ元の世界へ元の時間へいざ帰れ‼︎」

 ヒビキの姿がそこから消える。

 幻獣たちも、すべて消え去る。

 召還と違い、送還には儀式がいらない。

 それをシエルはヒビキに話していなかった。

 ヒビキはこの世界から自由に脱出はできるが、自力でこの世界へ戻ってくるのは、不可能だ。

「さて……と」

 地上に降り立つと、シエルは倒れたまま動かない獏とラフガに歩み寄る。


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