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BLUE ROSE  作者: うさぎさん⭐︎
第三章 青いバラが咲いている世界に

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五. 青いバラが咲く世界


 獏は言葉を探すようヒビキを見る。

「──そういう、同情した目でオレを見るな!」

 ヒビキは獏を睨む。

「おまえなんか、何もできないじゃないか!

 この世界に来てさえ、一人じゃ何もできないじゃないかっ!

 おまえの陽姫は、オレの手の中だ!

 やろうと思えば、いつでも殺せる!

 それはつまり──おまえも死ぬってことだ‼︎」

 ヒビキはシエルに手を伸ばす。

「行こう、アンキ。

 意味ねーよ、コイツ‼︎  期待外れもいいとこだッ‼︎」

 シエルは獏とヒビキを見比べる。

「君は……ボクに何を期待したの……?」

 ヒビキは目を見開いて、獏を見返す。

 それから、おかしそうに声を上げて笑い出す。

「はははっ、決まってんじゃん、せっかく手に入れた力、思う存分使って戦える相手、それだけだよッ‼︎」

「……『君じゃアンキを救えない』、そういったね?

 あれは、どういう意味? 陽姫じゃなくて、アンキって、言ったよね?」

 ヒビキは顔色を変える。

「うるせーよクソシジイ‼︎ てめー、塔に来る気さえねーじゃねぇかよッ‼︎

 てめーなんか、陽姫とこの最低な国と一緒に死んじまえ!」

 ヒビキはシエルの手を強引に掴む。

「オレと来い‼︎ アンキ‼︎」

 シエルは静かにヒビキの手を離す。

 その手を自分の胸に当てる。

「……もう、やめない? ヒビキ」

「なっ──⁉︎」

「だって、獏も陽姫も、関係ないじゃない……。

 そういうのは、八つ当たりとか、そういうんじゃないの?」

「な、何いきなりいい子になってるんだよ!」

「やっぱり、もう、よそうよ、ヒビキ」

 ヒビキはシエルを──獏を睨む。

「こいつのせいか! こいつに影響されたってのか?

 なんでだ、アンキ? こんな偽善者でいいってのか?

 ……ぼくは、いやだ……っ!

 ──してだよ、アンキ。ぼくは君の望んだとおりに──。

 君の代わりに──……」

 ヒビキは一見笑ったような顔で言う。

「壊れちまえ、こんな世界!」

 シエルの葡萄色の大きな瞳を見つめる。

「君も、思ったはすだ。壊れちまえって」

「──」

「こんな国も、幸せな陽姫も、それこそこの世界ごと壊れちまえって──‼︎

 だから、まず、一番ムカツクこの国と、陽姫を壊しちまおうとしたんじゃんかよッ!

 なのに、なんでだよ……」

 ヒビキは天使のように笑った。

「ぼくが君の代わりにみんなやっつけてあげる。やさしー姫。

 君は優しすぎてかわいそうで、見てられないよ……。

 何度も殺されそうになったのに、君は鳥かごの中で大人しくしている。 

 だから、ぼくが……」

「……優しいんじゃない。弱虫なだけよ……。

 鳥かごの中で飼われていれば、とりあえず今のまま生きられるから──。それだけよ」

 ヒビキは下を向く。

「コイツでもぼくを殺せるかもしれない方法。

 ──それは、アンキ、君を殺すこと。

 ……そんなことまで、コイツに教えて……君は、そんなにぼくが……嫌か?

 コイツが──コイツが、君の真の勇者だったらよかったんだ……?

 そう、思ってるんだ……?」

「ヒビキ……?」

「なにそれ? コイツになら、君は殺されてもいいってこと?

 ぼくがコイツを殺すのは、嫌だってこと?」

「ヒビキ……あたしたちは似すぎてるから……だから、あたしが求めていた人は、たぶん……」

「ぼくじゃなくて、こんな偽善者?」

「だってきっと、あなたが求めている人だって……あたしみたいなのじゃなくて……」

「魂を同じくするなんていっても、所詮ぼくらは他人だった──そういうことだね。アンキ?

 君はぼくを真には理解できないし、ぼくだって君を真には理解できない──仕方ない」

 ヒビキは溜め息をついた。

「悲しいよ、アンキ……」

 ヒビキはシエルに手のひらを突き出す。

「ヒ、ヒビキ……?」

「今度はぼくが君を飼ってやるよ、アンキ。

 鳥かごじゃな くて、ライオンやなんかのを閉じ込めるようなケージが、念のためもう一つ、あったよね。

 きっと気に入ると思うよ」

 獏が動く。

「ま、待て! 君は、」

「我、汝を誘わん──、ケージにバードを閉じ込めん」

 シエルの姿が掻き消える。

「シ、シエル!」

 獏が手を伸ばしたときにはもう遅い。

「ぼくは幻術が得意だけど、こういうテレポート系なんかもできるってわけだよ。

 っつーかさ、オレさ、ラフガはもちろん、アンキよりも、マジックレベル高いみたいだぜ?

 呪文やらの勉強も必要ねぇ。

 そうしようと思うだけで、オレさ自然に魔法使えるしさ、必要なら自動的に呪文口ずさめるんだよ。

 やろうと思えば、アンキなんか目じゃないくらい幻獣召還できるし。かまいたちだって雷だってなんだって、いくらでも起こせるぜ。

 便利だよなぁ、幻揃って。

 塔にいながら、離宮のおまえだってマジで殺れるぜ。

 この世界ってさ、オレのためにある。そう思わない?」

 腕組み、ヒビキは獏を挑発的に見上げる。

「さて、どうする、陽姫の勇者?」

 ヒビキは面白そうに言い直す。

「意気地なしで、卑性者で、偽善者の日向獏?」

 シエルがいない替わりに、ブルーローズが彼女のいたそばで風と揺れている。

「今、この場で跪《ひざまず》いて、オレの靴でも舐めて、あぁあと三回廻ってワン? とかやったら、オレの気も変わって、おまえのこと元の世界へ帰してやって、陽姫も開放してやるかもよ?」

「…………」

「やれよ。おまえには、それがふさわしいよ」


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