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BLUE ROSE  作者: うさぎさん⭐︎
第三章 青いバラが咲いている世界に

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四. もう一人の勇者


 地上に降り、シエルは言う。

「さぁ、獏。わかった? ──」

 足元に、ブルーローズが咲いている……。

 シエルは数歩獏から離れるように歩いて、振り返る。黄緑色の髪が揺れる。

 葡萄色の瞳が、獏の目を見上げる──……

「嘘、だよね……?」

 獏は笑う。

「冗談、きついよ……」

「本当よ。──誰からも愛される光の姫。国を幸福に導く祝福の子。

 そんなふうに呼ばれる陽姫。彼女の国にもね、伝説が、あるの。

 国の王室たる姫の危機を救うため、現れる異世界の光の勇者の伝説が……」

「やめて、くれ……」

 獏は一歩、シエルに近づく。

「そんな答えは、知りたくない……」


「約束が、違うよね。アンキ」


 ふいに声が響き、二人のそばに、赤い瞳に白い髪に白い肌の少年が立っている。

「勇者様……」

 ヒビキだった。

 シエルは確かに、ヒビキのことを勇者と呼んだ。

「──」

 獏は息を呑む。

「そいつがぼくの塔に来るまでは、そのことは、秘密にする約束だったよね? ぼくの姫」

 ヒビキは獏を見る。

「そういうことだよ。たくはアンキの勇者。君は陽姫の勇者──……」

 赤いキャップのつばの位置を直し、ヒビキはシエルに歩み寄る。

 肩にホワイトビジョンを留まらせている。

「仕方がないなぁ……。

 まぁ、いいよ。アンキ。

 ぼくはコイツを気に入らなかったけど、青はコイツのことがそれなりには気に入った──だから、教えてやった、ってこと?」

 獏はヒビキとシエルを見比べる。

「ぼくはさ、君よりも先にアンキに召喚されたんだよ。

 別に国の危機かどうの、そういうのは関係ない。

 アンキはさ。ぼくに違いたかったんだってさ。

 魂を同くする、このぼくに!」

「……そうよ……。

 あたしは、昔から、何度となく、離宮の広間の一室で、召喚の魔方陣を描き。勇者様を呼び続けた。

 たくさんの本を読んで、独学で得た魔方陣なんかの知識と、あたしの魔力で。

 何度も何度も失敗した。

 やっぱり、あたしじゃだめなんだって、あたしは伝説の勇者の姫なんかじゃないし、無理だって、あきらめかけた。

 でも──姫と魂を同じくする勇者という伝説は、あたしには魅惑的すぎた。

 だって、そんな人が本当にいるなら──こんな闇姫のあたしでも──あたしの気持ちをきっとわかってくれる……そう思った」

「その通り。

 ぼくは、彼女の気持ちがよくわかった。だから、考えたんだ。

 滅びに導く闇の姫といわれる、アンキの勇者であるぼくと、幸福に導く陽《ひ》の姫といわれる、ラフガの勇者である君──ぼくらが戦って、ぼくが勝ったら、こんな最任な国は減ばしてやる。

 だけどもし、君が勝ったら──そんときはまー手を引いてやるか。

 ……あんたに滞在期間が設定されてるっていうのも、嘘だよ。

 ぼくらの気が向かなければ、あんたは元の世界へ帰れない」

 ヒビキは獏を見上げながら笑う。

「おかしいじゃないか。同じ有り得ないはずの混血なのに、ラフガは祝福の子。アンキは災いの子──」

「……陽姫は、ライオンハーフなのよ。

 あの国は、ライオンビープルと、ヒューマンが共存している。

 だけど、有り得ないはずの子どものラフガは、だからこそ、不可能を可能とする祝福の姫として、王に民に、好かれているのよ……!」

「有り得ないはずの混血のなせる技が、ラフガもまた、魔法が使える。

 光系だか雷系だかの魔法だ。

 だが、あいつにはあまり魔法の才ばない。そ

 の代わり、剣の才には恵まれたらしい。

 ついでにいうと、ぼくは君と同じ日本人だよ」

「⁉︎ 日本人……⁉︎ じゃあ、」

 獏は赤い瞳に白い髪に白い肌のヒビキを改めて見つめる。

「君は──アルビノ……?」 

 ヒビキは瞳を伏せるように──浅く開いただけで、妙に大人じみたような疲れたような顔で笑った。

「ぼくは光に弱い。目があまりよく見えない。体が弱い。あまり長くは生きられないだろう……。

 ぼくの白すぎる肌を髪を──そして、特にこの血の瞳を……、みんな気味が悪いと、怖いという……だからかは知らないが、ぼくは小さいとき親に捨てられ、ずっと施設暮らしさ。

 でも、健常児だって平気で捨てる親がたくさんいるんだ、ましてやアルビノのぼくが捨てられたとして、なんの不思議もあるまい?」

「でも、髪を染めて、カラーコンタクトでも入れれば……それなりに」「それのどこが楽しい? やったよ、やらされたよ、最悪だ。

 だからもうやめた」

「……たしか、アルビノは突然変異? 

 ノアの箱船のあのノアも、アルビノだったって、話を聞いたことがある……」

「突然変異は進化のため──その説が正しいなら、アルビノのこのぼくも、天才であっていいはずだ。

 何か、特殊な能力を持っているはずだ。

 ……だから、嬉しかった。アンキに召還されたこのぼくは、この世界では幻術が使える……! 選ばれた存在だ‼︎」

 ヒビキは愉しそうに笑う。

「ずっと、思っていた。

 瞳の色も髪の他も肌も関係ない世界に行きたい。

 有り得ないはずの青いバラが咲いている世界に行きたい。

 そこでなら、ぼくは偽りの色に自分を染めなくていい。

 不可能なはずの青いバラが咲いている世界なら、なんでも有り得るから。

 可能だから」

 

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