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BLUE ROSE  作者: うさぎさん⭐︎
第三章 青いバラが咲いている世界に

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二. 枯れた花


「獏……閉じこもってばかりじゃ、体に毒だよ……」

 獏がこの世界に来て、約二週間後。

 部屋に入ってきたシエルが、花瓶の青バラを新しいものに替えようとする。

 茶色く変色したブルーローズ……

「なんてね、あたしもそんなに外出するほうじゃないんだけどね……」

 有り得ない青いバラ。

「待って、捨てないで!」

「え? だって……」

 茶色い花を手にとって、獏は呟く。

「有り得ない、不可能なブルーローズ。

 有り得る、可能なブルーローズ……。

 なら、この枯れた花は……どっちだろう?

 どういう意味だろう? やっぱり、枯れてしまったんだから、有り得ないって意味? それとも……」

「枯れてしまっても、ブルーローズは、ブルーローズ……」

 シエルは瑞々しいブルーのバラを一輪手に取って、その香りを嗅ぐ。

「幻には、香りがない」

「え?」

「幻術士の幻には、香りがない。だから、この花は本物だよ」

「そ、そうなの?」

「えぇ。少なくとも、あたしの知ってる幻術士の幻は……。

 だけど、あたしは、この花が嫌い……」

「どうして? だって、君は、この花のことをポジティヴに捉えてるんじゃないの?」

「有り得ない、有り得る、それは異世界のあなたたちの、この花に対する概念よ。少し、あたしも影響されたけど……。

 そうじゃなくて、勇者を召喚する前から、元々嫌いだったの」

 シエルは刺のある茎を睨む。

「刺、ハサミで切ったほうがいいのかなぁ……」

 花瓶の水を窓から捨てて、持ってきた水差しの水を新しく注ぐ。

 だけど、シエルは刺つきのまま、花版にバラを突っ込んだ。

「でも、こっちのほうが、自然でしょう?」

 獏は溜め息をついて、枯れてしまった花を、窓の外に放る。

 風が吹いて、空に飛んでいっていってくれたらいいのに。

 地面の上に落ちた花を見下ろして、そう思った。

「なんで、人はさ……花を愛でるかな。

 綺麗なものは、健康なイメージに繋がるから、見ていて、気持ちいいのかな?」

 たとえばクジャクは一夫多妻で、羽の美しい健康なオスは、複数のメスと交尾する。

「ならさ、なんでき、花は……茎を切って、花瓶に飾るんだろう……?

 綺麗なものをそばに置いておきたいから? そうして、枯れたものはすぐに捨て去る。

 すごい、酷くない?」

 獏は窓辺に立ったまま、シエルのほうへ振り向く。

 風が吹いて彼の茶色い髪が揺れる。

「捨てるくらいなら、最初からそばに置かなくてよくない?

 というか、そもそもざ、切り花ってさ、すっごいエゴっぽくない?

 茎を切られ、根を切り離され、それまでいた土から離され──……待っているは、死……。

 寿命を縮められてさ、よくわかんない人間の見せ物に……慰め物にされてさ、それで、幸せなのか? 幸せだったと思う?」

 枯れた花を見下ろす。獏は笑った。

「公算《プロパビリティ》のないのことから逃げるこのボクが、本当に勇者なのか?

 少しの可能性《ポシビリティ》も感じられない。

 ラフガ姫のいるという塔……どうしてそこに、ボクが行かなくちゃいけない? 行けると思う?」

 ヒビキの夢のことを、獏はシェルに話していた。自分の過去などに関する部分は除いて。

「勇気《カレッジ》なんて──ボクにはない!」


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