三. 闇姫の力
「獏って、絵が上手!」
「ふふふ。数少ないボクの特技なんだ。高校のころは、フリマで似顔絵売ったりしたなぁ……。結構、人気あったんだ……」
なんだか急に凹んだ顔をし、気を取り直し、獏は言う。
「なぜか、ボクにはあのとき、彼女の姿が感じられて、声が聞こえて、体が勝手に動いて、ウルフをやっつけられた」
「不思議ですわね」
「ラフガ姫はやっぱり、あの公園へ──青バラ畑に行ったんだよ!
それで、このペンダントを落とした」
「そのわりには、お父様の手の者が公園を調べてる感はありませんでしたわ」
「気づいてねぇんだよ、あのヘボ国王。使えねぇ」
「獏ったら……。不敬罪になりますわよ?」
「だってそうじゃないかッ! それよりも、君の巫女の力のほうがよっぽど役立つよ! だって、君があの場所を突き止めたんだから!」
「う、うん……」
「きっと、ラフガ姫はお忍びで、他の奴ら──SPとかにも知られないように、手がかり残らない感じに見事に──忍者マスターみたく、あそこに行ったんだよ! じゃなかったら、いくらあの国王でもとっくにそれくらい突き止めてる」
「う、うーん……。あのね、獏、ごめんなさいっ!」
シエルはいきなり頭を下げた。
「巫女姫って呼ばれてるってのは嘘なの! 確かにあの場所は、わたくしの力で水晶球を使って探り出したんだけどさぁ、あたしの力はさぁ、巫女っていうより、バードハーフっていう、突然変異みたいなもん? のなせる技みたいなのよね。
っつーかむしろ魔法? あたしが恐れられるのはさぁ、この力のせいでもあるんだよね……」
「え? え? ちょっと待って、」
「あたしは風の魔法使いみたいなのよね」
半眼で、シエルは獏を見た。
「──どう思う?」
「ど、どうって……ていうか、じゃ、じゃあ、かまいたちってのは……」「あーあれ? あたしの力。さすがに疫病とか地震とかまでは関係ないっていうか、偶然だろって感じだけど」
「……そ、そんな」
「あ、勘違いやめて! 違うっつーの。別にわざとやったんじゃないの、あたしさぁ、自分の攻撃系魔法ってなんでかあんまコントロールできないのよね。赤ちゃんのときはまーよくわかんないけどさ、まー生存本能なのかな?
攻撃してくる奴ら、風の魔法とか、風の暗獣召還することで殺っちゃったみたい。でさ、公開処刑とかふさげすぎなことされたときもさ、別にわざとあんなことしたわけじゃなくてさ、命の危機的状況になると、あたし暴走しちゃうみたいなのよね」
「…………」「
たぶんさぁ、弱種ってのはさあ、何か他とは違う特殊な力なんかを持つことによって、自分を護ろうと──生き延びようとするんじゃないかなぁ。
たとえば体が弱い分、頭がいいとか顔がいいとか。突然変異とかってのもそんな感じ?
だから、あたし、魔法なんていう、普通はできないことができるんじゃないかと自分では思ってるのよ」
「ちょっと待ってくれ」
「悪いことしたとは思ってるのよ。過剰防衛だって?
けどさぁ、あの時はあぁしなきゃ、あたしは殺されてた。
でもさぁ、あたしだってさぁ、闇姫とか存在そのものが罪深い姫だとかいわれてさ、──完璧には否定できないけどさ、全部あたしが悪い? だからあたしは死ななきゃだめ? ただ自分が生きようとするのはそんなにいけない?
確かにあたしは人を殺したけど、だって、それは、あんたたちがあたしを殺そうとしたからじゃない! お父様だって兵だって民だって、処刑の時、どんな眼であたしを見てたと思う? あぁ、もう思い出したくない……ッ!」
「…………シエル」
「なによ、獏。
あーこの言葉遣い? ほっといてよ、そうよ、こっちが地よ!
勇者様の前だからかわいこぶってたのよ。でもなんとなくもういーやって感じ?
あんた、おもしろい奴よね、獏。まさか名前考えてくれたり、お父様の所へ乗り込んだりするとは思わなかった。
……初めてよ、そんな人……」
「う、うーん、え、えぇとえっと……」
テキストを同度も読み返すように、頭の中で今聞いたことを整理し、獏苦笑気味に言う。
「……う、うん、大体わかったよ。そういうことだったんだ」
「うーん、なんか言いたいこといったらスッキリしたー‼︎
獏って聞き上手よね? なんだか話しやすいし」
「そ、それはどうも……」
「だからさぁ、罪滅ぼしってーんじゃないけど、とっととラフガ姫見つけてさ、お父様たちに恩着せてやろッ‼︎」
楽しそうに笑って、シェルはぬるくなった茶を啜った。




