「知らなかったのは私だけだった」
母が病院に通っていたことを知った私。
でも、本当に苦しかったのは病気の話じゃなかった。
返信できなかった、たった五文字のメッセージだった――。
兄からのメッセージが続く。
『母さん、もう半年くらい病院通ってるよ』
頭が真っ白になった。
半年?
そんなはずない。
私は何も聞いていない。
でも。
すぐに気づいた。
聞いていなかったんじゃない。
聞こうとしていなかった。
兄とのトークを遡る。
そこには。
『今日は検査の日』
『結果待ち』
『母さん少し元気ない』
そんなメッセージが並んでいた。
私は全部見逃していた。
仕事が忙しい。
疲れている。
その言い訳で。
母の変化を見ないふりしていた。
その時。
母とのトーク画面を開く。
そこには。
私が返していないメッセージがたくさんあった。
『風邪ひいてない?』
『ちゃんと寝てる?』
『最近寒いね』
『無理しないでね』
全部。
私を心配する言葉だった。
なのに。
私は一つも返していなかった。
胸の奥が少し痛くなる。
何気なく。
さらに上へスクロールする。
すると。
あるメッセージで指が止まった。
一ヶ月前。
母から送られていた。
『会いたいな』
たった五文字。
その言葉に。
私は返信していなかった。
既読だけつけて。
そのまま忘れていた。
その瞬間。
どうしてだろう。
病院のことを聞いた時よりも。
そのメッセージの方が苦しかった。
母はきっと。
病気のことを話したかったわけじゃない。
ただ。
会いたかっただけなんだ。
スマホの画面が滲む。
私は母とのトーク画面を見つめたまま動けなかった。
その時。
通知が表示された。
母からだった。
『今週は帰ってこれそう?』
私は震える指で文字を打つ。
そして。
送信ボタンを押した。
『今度じゃなくて』
『今週帰る』




