表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

「幸せは、まだ間に合うことだった」

久しぶりに帰った実家。

母は何も責めなかった。

だからこそ気づいた、本当に大切なこと。

幸福の日に届けたい、親子の物語。



次の休日。


私は実家へ向かった。


電車の窓に映る自分を見ながら、

何度も考えていた。


もし。


あの日、母からの電話に出ていたら。


もし。


『会いたいな』に返信していたら。


そんな後悔ばかりが浮かんでくる。


実家の最寄り駅に着く。


見慣れた景色。


何度も通った道。


なのに。


少しだけ違って見えた。


玄関のドアを開ける。


「おかえり」


母はいつも通り笑っていた。


その声を聞いた瞬間。


胸の奥に溜まっていたものが、

少しだけほどけた気がした。


リビングには、

私の好きだったお菓子。


テーブルには、

私が好きだったおかず。


何も言っていないのに。


母は覚えていた。


昼ご飯を食べながら、

私は聞いた。


「なんで言わなかったの?」


母は少し困ったように笑う。


「だって忙しそうだったから」


「心配かけたくなかったし」


その言葉を聞いて。


私は何も言えなくなった。


母はずっと。


私のことを気にかけていた。


なのに私は。


仕事が忙しいから。


疲れているから。


そんな理由で、

母を後回しにしていた。


気づけば外は夕方だった。


帰る時間になる。


駅まで送ってくれる母。


子供の頃は手を引かれていた道を、

今は二人で並んで歩く。


改札が見えてきた時。


母が言った。


「顔見られてよかった」


たったそれだけだった。


でも。


その言葉が。


今まで聞いたどんな言葉よりも温かかった。


私は思わず笑う。


「また来るよ」


母も笑う。


「うん、待ってる」


電車に乗る。


ドアが閉まる。


小さくなる母の姿を見ながら、

私はスマホを開いた。


母とのトーク画面。


今までほとんど返信していなかった場所。


私はメッセージを送る。


『今日は帰ってよかった』


数秒後。


返信が届く。


『私も』


たったそれだけ。


本当に短い言葉。


でも。


なぜか涙が出そうになった。


幸せって。


大きな出来事じゃない。


特別な日じゃない。


会いたい人がいること。


その人に会えること。


伝えたい言葉を、

ちゃんと伝えられること。


そして。


"また今度"を、


"今日"にできること。


窓の外には夕焼けが広がっていた。


私はスマホを閉じる。


そして思う。


幸せは。


失ってから気づくものじゃなくて。


気づけた時に、

大切にするものなんだ。


---

「あなたは最後に、親へ『ありがとう』を伝えたのはいつですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ