第2話 その手を振りほどき
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河原に戻ると、三人は、先ほどいた場所にはいませんでした。
どこに行ったのかしら……。
私はきょろきょろしながら、岸辺を川下のほうへとゆっくり歩いていきました。
いません。
いません。
いません。
とうとう、お父さんが勤めるリバーサイドホテルが見える所まで来てしまいました。
お父さんは、今頃、お仕事に励んでいることでしょう。
がんばってー、お父さーん!
この辺になると、泳いでいる人もまばらになります。
これより先にいくと、流れが急になる所があるんです。
そこからは、もう遊泳禁止区域です。
と、川が左にゆるやかに曲がる所で、三人を見つけました。
そこは遊泳禁止区域に入るぎりぎりの所でした。
リクちゃんとグリズさんは、膝上まで水に浸かって、がっぷり四つに組んでいます。
え?
相撲?
相撲してるの?
二人のそばの岸には、お姉ちゃんが立っています。
あ!
お姉ちゃんが私に気づいたようです。
手を振っています。
「こっちのほうまで来て、何してるのー」
私はお姉ちゃんに駆け寄りながら、叫びました。
さっきいたところよりも、川の流れの音が、ずっと大きくなっています。
「相撲よ! 相撲! あれから、相撲、始めちゃったの!」
お姉ちゃんは、怒っているようでもあり、あきれているようでもありました。
先には、監視小屋が建っています。
チェリー川の最も川下にある遊泳監視小屋です。
カッパーさんのいる監視小屋よりも、やや大きくて、新しい感じでした。
中で、人の動く気配がします。
もちろん、それは、カッパーさんではありません。
別の監視員です。
もし、そこに、カッパーさんがいたら、相撲をとっている二人に気づいて、喜び勇んでやってくることでしょう。
「押したり、投げたりするのを、こらえながら、ここまできちゃったのよ」
「二人とも、疲れちゃってるんじゃない?」
私は、お姉ちゃんの隣に立ちました。
「ああっ!」
お姉ちゃんが悲鳴のような声をだしました。
グリズさんが、リクちゃんを浴びせ倒しそうです!
と思ったら、何と、リクちゃんが、その身を大きくそらせ、グリズさんを、後方に投げ飛ばしました。
うっちゃりです!
大きな水しぶきが、あがりました。
「リクちゃん、勝った!」
私は、両手をあげて、ぴょんぴょん飛び跳ねました。
川の中から、グリズさんが、踊るように飛びでてきました。
ずぶ濡れです。
大きく、頭を振って、しぶきをとばします。
……あれ?
……リクちゃん?
投げを打つまで見えていたリクちゃんの姿が、どこにも見あたりません。
「……リクちゃんは?」
「あそこ!」
お姉ちゃんが、私の肩に手をあてて大声をあげました。
もう片方の手で、川下を指さします。
リクちゃん!
リクちゃんは、もう十メートルも先に流されていました!
川底の流れが速くなっているようです。
私は、Tシャツを脱ぎ、短パンに手をかけました。
「アユ! だめよ!」
お姉ちゃんが私の右腕を強く掴んできました。
私は、お姉ちゃんのその手を振りほどきました。
短パンを脱ぎ、それとTシャツを、お姉ちゃんの胸に押しつけました。
お姉ちゃんは何か叫んでいました。
でも、もう、私は、お姉ちゃんを見てもいませんでした。
サンダルを脱ぎ捨てると、川へ飛びこみました。
川底の流れに乗ろうと思っていました。
そうして、リクちゃんに追いつこうと。
リクちゃん、待ってて!




