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ちょっと天然の女子はきらきらでピカピカになる  作者: ついざきまさひろ
第六章 世界は、あなたが考えているより、ずっと広い

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第2話 その手を振りほどき

 ***

 

 河原に戻ると、三人は、先ほどいた場所にはいませんでした。


 どこに行ったのかしら……。


 私はきょろきょろしながら、岸辺を川下のほうへとゆっくり歩いていきました。


 いません。


 いません。


 いません。


 とうとう、お父さんが勤めるリバーサイドホテルが見える所まで来てしまいました。


 お父さんは、今頃、お仕事に励んでいることでしょう。


 がんばってー、お父さーん! 


 この辺になると、泳いでいる人もまばらになります。

 これより先にいくと、流れが急になる所があるんです。

 そこからは、もう遊泳禁止区域です。


 と、川が左にゆるやかに曲がる所で、三人を見つけました。

 

 そこは遊泳禁止区域に入るぎりぎりの所でした。


 リクちゃんとグリズさんは、膝上まで水に浸かって、がっぷり四つに組んでいます。


 え? 

 相撲?

 相撲してるの? 


 二人のそばの岸には、お姉ちゃんが立っています。


 あ! 

 お姉ちゃんが私に気づいたようです。


 手を振っています。


「こっちのほうまで来て、何してるのー」

 私はお姉ちゃんに駆け寄りながら、叫びました。


 さっきいたところよりも、川の流れの音が、ずっと大きくなっています。


「相撲よ! 相撲! あれから、相撲、始めちゃったの!」

 

 お姉ちゃんは、怒っているようでもあり、あきれているようでもありました。


 先には、監視小屋が建っています。

 チェリー川の最も川下にある遊泳監視小屋です。 

 カッパーさんのいる監視小屋よりも、やや大きくて、新しい感じでした。 

 中で、人の動く気配がします。

 もちろん、それは、カッパーさんではありません。

 別の監視員です。

 もし、そこに、カッパーさんがいたら、相撲をとっている二人に気づいて、喜び勇んでやってくることでしょう。


「押したり、投げたりするのを、こらえながら、ここまできちゃったのよ」


「二人とも、疲れちゃってるんじゃない?」


 私は、お姉ちゃんの隣に立ちました。


「ああっ!」

 お姉ちゃんが悲鳴のような声をだしました。


 グリズさんが、リクちゃんを浴びせ倒しそうです! 


 と思ったら、何と、リクちゃんが、その身を大きくそらせ、グリズさんを、後方に投げ飛ばしました。


 うっちゃりです! 


 大きな水しぶきが、あがりました。


「リクちゃん、勝った!」


 私は、両手をあげて、ぴょんぴょん飛び跳ねました。

 

 川の中から、グリズさんが、踊るように飛びでてきました。


 ずぶ濡れです。


 大きく、頭を振って、しぶきをとばします。

 

 ……あれ? 

 

 ……リクちゃん?


 投げを打つまで見えていたリクちゃんの姿が、どこにも見あたりません。


「……リクちゃんは?」


「あそこ!」

 お姉ちゃんが、私の肩に手をあてて大声をあげました。

 もう片方の手で、川下を指さします。

 

 リクちゃん!


 リクちゃんは、もう十メートルも先に流されていました! 


 川底の流れが速くなっているようです。


 私は、Tシャツを脱ぎ、短パンに手をかけました。


「アユ! だめよ!」

 お姉ちゃんが私の右腕を強く掴んできました。


 私は、お姉ちゃんのその手を振りほどきました。

 短パンを脱ぎ、それとTシャツを、お姉ちゃんの胸に押しつけました。

 

 お姉ちゃんは何か叫んでいました。


 でも、もう、私は、お姉ちゃんを見てもいませんでした。

 サンダルを脱ぎ捨てると、川へ飛びこみました。


 川底の流れに乗ろうと思っていました。

 そうして、リクちゃんに追いつこうと。


 リクちゃん、待ってて! 


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