表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
56/78

55✦一年前✧「間違いだったメイド」(2)

(魔獣だ──!)


うなり声にそう直感すると、テトは叫びながら道に飛び出した。


「メイド長!逃げてください!!」

「テ、テト!?」


シアナは突然茂みから出てきたテトに面くらいつつも、ただならぬ様子に身構える。


「た、多分魔獣です……、声が聞こえます……!」

「この森に、魔獣が……?」


警戒しつつも、シアナは脳内で必死に図書室で読み漁った本をめくる。

魔獣──それは、螺力で人を攻撃する獣の総称だ。

螺力は人間だけではなく生物全般に宿る。動植物すべてに。……しかし、その力を人間のように恣意的に使えるものは少ない。


しかし稀ではあるが、自然に、あるいは突然変異的に、強い螺力を操る生物がいる。

この世界では、人に害を為す螺力は「魔力」と呼ばれていた。


(確かに、この森では昔から魔獣の報告が相次いでいた……うかつだったわ。いえ、でも──)


シアナは背後に庇っているテトを見る。


(どちらにしても、今ここに来ないわけにはいかなかった。……何とかしてテトを逃がさないと……!)


「テト、まず風上に行くわよ!こっち!音をたてないようにして」


魔獣だろうと獣である以上嗅覚は頼りにしているはず。風上に移動すればおそらくこちらに気づきにくくなる。

音を立てないよう、風上にひたすら向かってゆくと、突然に開けた場所に出た。


森が大きくとぎれ、川……というか、崖になっていた。

向う岸までの距離は相当あるうえに橋はなく、崖はかなり高い……。


「行き止まり……」

「でも、うなり声も聞こえなくなったわ。しばらく様子を見て、風の流れに沿って移動し……」


そのとき、シアナははっと口を閉じる。……獣の声ではない、これは……。


「人だわ……、それも複数……!」


不安そうな話声、足音、そしてランタンの灯り……。

シアナは警戒心を露わにして、木陰に隠れると様子を見守った。


✦••┈┈┈┈••☽••┈┈┈┈••✦


しかし……。

森からひょっこり現れたのは、ソリーナとサッシャだった。


「ソ、ソリーナにサッシャ!?ど、どうして……」

「シアナメイド長!?……テトも!?」


互いに驚いていると、その後ろからぞろぞろとお嬢様付きメイド達が現れる。


「み、皆さん……!?」


テトも思わず声を上げる。


「皆……どうして私たちがここにいるとわかったの!?」

「それが、そうではなく……」


戸惑うシアナにソリーナが説明しようとした矢先だった。


「お、お嬢様、待ってください……!」

「何よ、だらしないわね……きゃぁ!?」

「だから、この道をお嬢様の足で歩くのは無理だと……」


森の奥からさらに現れたのは……、


「エ、エヴァルス様……、お嬢様!?」


かなりズタボロになった二人が憮然とした表情で立っている。


「あら!いつの間にかお嬢様たちを追い越しちゃったんですわね!?」

「だから、あの脇道の方に行っちまったんじゃないかって言ったのにさ」


マーシアとチェスカが声を上げた。


(ど、どういうことなの……?)


シアナとテトが顔を見合わせて戸惑う中、お嬢様が得意満面の笑顔で二人を指さした。


「ほぉら、見つけたわよ!!テト!シアナ!」

「お嬢様が……、テトとメイド長を追うと言い張りまして。途中までは馬車で来たんですけれど、道を間違ったらしく……」


ソリーナが説明を再開すると、リルネとラーサが疲れた様子で続けた。


「私たちも、お嬢様を追いかけてきたんですけれども、山道の中で見失い、焦っていたところでしたの」

「でも、お嬢様もエヴァルス様も見つかったし、テトやメイド長も無事で、良かったです~~」


最年少のユアンまで来ている。


──テトと同様に、お嬢様も道を間違い、それを追いかけてきた全員が、結果的にここに大集合……ということのようだった。


「ごらんなさい!わたくしの言うとおりの道で合ってたわね!」


お嬢様だけはそう言って胸を張ったが、エヴァルスは後ろでへたり込んでいた。


「と、とりあえず、ここは危険ですわ!魔獣がいるかもしれないのです。テトも見つかったことだし、早く森から……」


慌ててシアナがそう言った瞬間、森の奥から複数のうなり声が聞こえた。メイド達も気が付いたのか、怯えた表情で周囲を見回している。


「ま、魔獣ですって……?」


(まずい、囲まれている──)


「ら、ランタンの火で追い返せないかしら……、獣は火を怖がるわ」

「火なら、チェスカやマーシアの火螺術を使えば……!」

「森の中ではすぐに火事になってしまいますわよ!」

「魔獣は普通の獣よりは火を恐れませんし……」


メイド達がざわつく中、シアナはとっさに周囲を見回す。……ここは開けており木々は少ない。崖は高く、その下は川だ。


(森ではなく、ここなら──!!)


シアナは叫ぶ。


「テト!崖下の川に向けて、思いっきり螺力を放ちなさい!獣や森には向けないで!」

「え?か、川に?」

「ええ!……皆は伏せて!お嬢様もです!」


状況がわからないまま、シアナの言うとおりにテトは崖上から川に向け、螺力を放つ。


次の瞬間、その場にいた全員が目を見張った。


──テトの手のひらから、凄まじい火柱が飛び出たのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ