49✦☾突撃、隣?のトルドー家
セラヴェル家大お茶会計画は大成功に終わった。
一番の目的だったトルドー家への足掛かりも得られたし、ユーテリア様についても新しい人間関係を知ることができた。
(さすが、お嬢様のご提案だわ……!)
それに、建前とはいえ「お嬢様のお披露目」だって重要だ。
「皆様、おまじないチャームについては、殿方には内緒ですわよ!わたくしたち、女性だけの秘密ですわ!」
軽くウインクをしては来客たちをお送りするお嬢様に、見惚れる令嬢たちをしっかり確認!
そうでしょうそうでしょう!!と叫びたいのを我慢して、私もひたすらお辞儀を繰り返す。
(お嬢様は美しさのあまり、近寄りがたい雰囲気になりがちなのよね!でも、実は親しみやすいのも伝わったはずだわ!)
「願いが叶ったら、チャームはこちらへお持ちくださいませ!新しい物を差し上げますわ!当然無料サービスですわよ~~~!!無料!」
(こ、こういう、妙に庶民的なところも……魅力ですわ!)
なぜあのセズネイ様やアデリーナ様に教育を受けて、こうなったのかは本当に謎だけれど……。で、でも、そんなところもギャップ萌えってやつなのよ!!
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そしてその日の夜。さっそく我々はトルドー家に向かっていた。
本当はせめて翌日にしたかったのだが、誘拐した犯人を目前にした子ども達は、もう我慢の限界だったのだ。
「最初からわかってたんだ。行ける理由ができたなら、すぐにでも行く!」
レザは一人でも走ってトルドー家に突入してしまいそうだ。
そして、トルドー婦人も“特別なチャーム”は少しでも早い方が良いとのことだったので、気が変わらないうちに約束をとりつけてしまった。
(一応、大きめのチャームを予備に作っておいて良かったわ)
“チャームにまじないの力を込める“という名目での訪問だ。
子ども達はテスタ、イオ、レザの年長組を連れてゆき、残りの二人はマーシアとお留守番。
チャームにある仕掛けをするため、火属性のテトと水属性のリルネも連れてゆく。
そして、トルドー婦人が“失追者”であるなら……、気持ちがわかるだろうライラさんにも特別に同行をお願いした。
そして。
「あの子たちは今、セラヴェル家が預かっていますのよ?その家族の安否に関すること、わたくしが行かないわけにいきませんわ!」
好奇心に目を輝かせるお嬢様も当然ついてきた。
確かに、初めてお伺いするお屋敷にメイドと子供たちだけというのも妙なので、仕方なく……い、いえ、喜んで、同行いただくことにした。
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トルドー家での段取りはあらかじめ打ち合わせしてある。お嬢様がどこまで台本に沿ってくれるかは不明だけれど……。
まず屋敷内に入るなり、お嬢様が言うのだ。
「……セラヴェル家の血筋を継ぐ者として……この家に残る強い悲しみを感じますわ」
うつむいておられたトルドー婦人ははっと顔を上げられた。
私はおもむろに、お茶会で配った物より一回り大きなチャームを取り出し、ガラス部分にそっと指をあてる。
「……幼い女の子が見えます……。本来、トルドー家の円環に乗るべきではない子ども……、そういった子に心あたりはありませんか?」
婦人は真っ青になったまま、黙って首を横に振り続ける。
「……円環の流れに逆らうようなことに、心当たりは……」
「ありませんわ!!!」
悲痛な叫び声が響いたその瞬間、私はテトとリルネに、ひそかに目で合図を送る。
二人が目を合わせて頷くと同時に、チャームのガラス部分が砕け散った。
「きゃ……っ!!」
「まあ、……特別なチャームが突如砕けるなんて、こんな不吉な……」
テトの火螺術とリルネの水螺術の合わせ技である。二人とも、訓練の成果か、大分ガラスの特性を操れるようになってきた。
「奥様……!やはり、本当のことを申し上げましょう」
お茶会にも来てらしたメイドが、トルドー婦人にすがりつくように訴え出た。
「奥様だって本当はわかってらっしゃるのに……、あの子は違いますわ……!ラトレア様ではございません……!」
「ラトレア……?」
テスタやレザがとまどったように顔を見合わせる。
──事前に、セズネイ様に相談し、約三年前から五年前までの期間にあった貴族社会の訃報は全て調べてある。
……トルドー家では、四年前に当時七つの御令嬢が病気で亡くなっていた。──ラトレア様とおっしゃった。
「……トルドー婦人、チャームはもう一つ用意してございます。今度こそまじないの力を込められますように……、どうか、本当のことを」
がっくりと力を失い、倒れるように座り込んだ婦人に……、突如二階から執事らしい男性が階段を駆けおりできた。
「奥様!大変でございます。ラトレア様が……!」
ラトレア様……、って。
「それ、ココのこと!?」
そこまで黙って我慢していたレザが叫んだ。
「ココに、何かあったのか!?」
止めるまもなく、テスタとイオも階段を駆け上がってゆく。
「お、お待ちになってください!」
慌ててメイドや使用人が追いかけていった。
私は一瞬迷ったものの、座り込んで動けなくなってしまったトルドー婦人のお世話をライラさんにお願いし、遅れて追いかけた。
「お、お嬢様!そのように階段を駆けあがると……」
子ども達と同じノリで追いかけたお嬢様はというと、当然のように転び、当然のように私がスライディングクッションとなる。
──他家でもこれをやることになるとは……階段ではスリルが増すわね。
「え!?ス、スティラ様!?シアナ様!?だ、大丈夫ですか……!?」
「大丈夫ですわ!これはうちのいつもの光景です!」
リルネがとっさに答える。
「い、いつもの……?セ、セラヴェル家ではそうですの……?」
「様式美のようなものなのです!」
「こ、これが環伯家の美……」
テトも補足したが、トルドー家の使用人たちには衝撃と誤解を与えてしまったようだわ……。で、でも今はそんなことを言っていられない。
「ココはどこにいるの!?」
レザが鋭く叫んで、二階の回廊を見回す。
……おそらくさきほどの執事が慌てて開け放したままのドアから、──金色の光が溢れていた。
「ココ!?」
子ども達……、そしてお嬢様や私達もその部屋に飛び込んだ。
──そこには、見たことが無い光景が広がっていた。




