表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/121

第97話

「ノベト様……」


パリオンはノベトに感謝を伝えようと顔を上げたが、そこにいたのはノベトではなく、豪華な印象を与えるベトだった。


「……ベト?」

「教皇様、どうやら彼は教皇様を治療するために全力を尽くして、気を失ったようです。」

「……そうですか……」


パリオンはベトの前で片膝をついて感謝の意を表した。

教皇がベトに感謝するこの場面は、他の誰かが見たら驚愕する光景だろう。

続いて彼は領主フェレオラにも膝をついて感謝を述べた。

当然フェレオラは慌ててパリオンを起こそうとした。


「きょ、教皇様。これはいけません!」

「このような奇跡を授かる機会をくださった領主様には、これでも感謝が足りないくらいです。別の形での御礼は後ほどいたします。」

「お立ちください、教皇様。」

「今は……このままでいさせてください。」

「いけません! 誰かに見られたら大変なことになります! 立ち上がってください!」


フェレオラは力を込めて無理にでもパリオンを立たせようとしたが、パリオンはまったく動かなかった。

本来の力を取り戻した魔族を、人族がどうこうできるものではない。


「教皇様、お願いですからお立ちください! なぜこんなに力が……」


その時、フェレオラは背後に冷たい気配を感じた。

ゆっくりと振り返ると、扉の隙間から視線が覗いていた。

その視線の主は、フェレオラ邸のメイドであるヘレンだった。

彼女は以前もノベトとフェレオラのやり取りを見て誤解したことがある。

ましてや今、ベトを前にして教皇が膝をつき、領主がそれを止めようとしているこの状況は、彼女の誤解をさらに深めるには十分だった。

フェレオラはごくりと唾を飲み込んだ。


「ヘ、ヘレン……」


扉の隙間の瞳がじっとりと光る。


「領主様が……教皇様を……」

「待て、これは誤解だ! 教皇様! 何か言ってください!」

「……この奇跡に感謝を……」

「くそっ! 王の兄であるフェレオラ・アポロニットが教皇に命ずる! この誤解を解け!」


フェレオラはこのような状況が再び起きたことに我を忘れ、形式的にしか存在しない王の兄の権限まで持ち出して叫んだ。

フェレオラは心に誓った。

次にこんなことが起きたら、素早く席を離れるか、誰かを呼んで誤解のないようにしようと。


騒動が収まった後、ノベトは応接室に移され、パリオンはメイドのヘレンに誤解を解く説明をした。

ヘレンはまたしても落胆したが、教皇自らの言葉とあって納得してくれた。

そして、邸宅の応接室でパリオンとフェレオラが今後について語り合うことになった。


「本当に夢のような出来事ばかりでしたね。」

「ええ……私もまさかこんな展開になるとは……」


パリオンは用意されたお茶を一口飲み、話を続けた。


「今の私にははっきり分かります。ノベト様の使う力は、この世界のそれとは本質的に異なります。少し感知してみましたが、私でも正確には解析できませんでした。場合によっては、私以上の力を持つ存在とも言えるでしょう……」

「それはつまり……ノベトがいつか王国にとって脅威になる可能性があるということですか?」


フェレオラの目が鋭くなった。

それにパリオンは笑みで応じた。


「私が教えた弟子です。常識も心得た方ですし、よほど不合理なことが起きない限り、脅威になることはないでしょう。」

「そうですね……ノベトは静かに暮らしたいと望んでいますから。」

「ならば……私の魔力が戻ったことをノベト様のおかげだと話すのも、再考すべきかもしれませんね。」

「どうか再考を! 面倒な事態になる可能性もありますから!」

「確かに、有名になればその分厄介ごとも増えることは私が一番知っています……」

「それにしても……ノベトはまだ意識を取り戻しませんね。もう一週間になります。」

「私の魔法でノベト様を回復できるか分かりませんが、一度試してみましょうか? 魔力の扱いには慣れてきましたから。」


フェレオラとパリオンはノベトのいる部屋へと向かった。

室内は毎日掃除されており、きれいに整えられていた。


「領主様、ベトの由来をご存知ですか?」

「確か……アポロニア女神の恩寵を受けた者だけが作れるという、安息の贈り物と聞いていますが。」

「はい、その恩寵を受けた種族は人族でした。他の種族が技術を教わっても、絶対に作れません。」

「そうなのですか……」

「そんな女神の安息の贈り物が、ここまで豪華な形で存在している……これもまた、何か意味があるのかもしれません。」

「まさか、ノベトは女神の……」

「……考え過ぎかもしれません。それでは、始めましょうか。」


パリオンは右手をノベトのマットレスにそっと当てた。

生まれて初めて感じるふかふかさ。

感動も束の間、彼は少しずつノベトに魔力を流し込んだ。

もっとも基本的な治癒方法──魔力を注入し、高速の自己再生を促す方法だった。

教会の癒し手たちがよく使う術式。

それゆえ、リアネットの病を癒すには力不足だった方法でもある。


パリオンは気づいた。

ノベトは外傷を負っていない。

ならば、問題は精霊核にある。

彼はさらに魔力を送り、ノベトの精霊核に到達した。


「これは……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ