表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/121

第86話

ビエラは言い捨てるように去っていった。


エルゼリアは考えていた。

どうしてノベトが人族の姿になれたのか?

この間に何があったのか?

本人に聞くしかない。

今はそれしか方法がなかった。


ベルゲに手紙を残し、エルゼリアはビエラの新しい店へと向かった。

店の名前は――


「ノベト商会…」


どういうつもりでビエラは店名をこうしたのか。

戸を開けると――


「中には…何もないわね。」


店としては異様な光景だった。

販売用の品は何一つない。

だが、家具や装飾が豪華で、内装に手が込められていることは明らかだった。

エルゼリアはため息をついて、カウンターの椅子に腰を下ろした。


考えれば考えるほど混乱した。

だから、今はただ一つだけを信じることにした。

きっと彼は来る。


そして、扉が静かに開いた。


顔を隠す鎧姿に、質素な服装の男が入ってきた。

不安げな様子で、彼は口を開いた。


「…元気だった?」


ノベトだった。


---


「つまり、俺に会えず怒ってるオデルリアをなだめてこいってことか?」

「そう、それだけ。」


エルゼリアと一緒にホルダーの森を走る俺。


オデルリア、いくらなんでもマジでやり過ぎだ。

俺なんかのために村滅ぼす勢いかよ。


「こっち。」


エルゼリアが一本の木を指差す。

どこか見覚えのある、妙に成長した小さな木。


「精霊樹…か?」

「早く、この木に触って!」


言われるがままに木に手を当てた瞬間、強い光に包まれた。

そして光が消えた時、目の前に広がっていたのは――


破壊されたエルフの村だった。

建物は新たに生えた木々に覆われ、かつての村の面影はなかった。


「これ…一体…?」


「私も聞きたい…」


と、地面に倒れた村長が呻く。


「村長!」


駆け寄るエルゼリア。


「…彼がノベトか…?」

「はい!一体、何が…」


「長老の一人が…“ノベトを売った”と精霊様に言ったのだ…」

「まさか…」

「お前たちが去った後も、意見は割れていた。“事実を言って許しを乞う”か、“信じて待つ”か…だが一人の愚か者が先に伝えてしまった…そして精霊様は激怒し…村に…」


まさか本気で怒りをぶつけるとは。

でも、こんなのは違う。

俺ひとりのせいでこんな目に遭うなんておかしい。


「村長、怪我人はどこに?」

「皆、家の中に閉じ込められて…把握しきれぬ…私は何とか抜け出したが…」


俺は最大出力で空間支配を展開し、村全域に癒しの魔法「万物修復」を放った。


破壊された家々は元通りに。

傷ついたエルフたちは癒やされた。


「エルゼリア、村長。他の皆の無事を確認してくれ。」


あまりの光景に、二人は呆然としていた。


「ノベト、これって…」

「説明は後。俺はオデルリアに会いに行く。」


俺は精霊樹の元へと駆け出した。


最初は、ただ静かに生きたいと思っていた。

でも違った。

俺は孤独にはなりたくなかった。


誰かと繋がったなら、その相手のために動いてしまう。


それが俺の本質だ。


今なら分かる。

覚悟はできた。


「おや、ノベト?」


「久しぶりだね、オデルリア。」


精霊樹の前に立つその少女のような存在。


「会いたかったのに、あんなこと言われたら…ちょっと怒るじゃない?」


「ごめん。でも、村を壊すのはやりすぎだろ。」


「私に従う種族なの。あの程度当然じゃない?」


「それ、お前基準だろ。俺の基準では違う。」


「……ノベト、やっぱり会えてうれしい。」


細めた目でオデルリアが言う。


俺は次元収納から鎧一式を取り出して装着した。


「成長したわね、ノベト。」

「俺は、もうエルフたちをいじめてほしくない。」


オデルリアは頬を膨らませた。


「でも、帰ってこなかったし、ノベトを売ったって聞いたし、怒るでしょ?」


「そこまで俺のこと想ってくれて嬉しいよ。だから――」


俺は胸に手を当てて言った。


「その怒り、全部俺にぶつけろ。」


オデルリアはその言葉に大笑いした。


彼女の笑い声が響くたびに、森の風がうねりを上げていく。


次の戦いの幕が、静かに上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ