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第82話

「私もそう願ってました。」

「どういう意味だ?」

「私、今年で14歳になります。貴族はこの年になると王都の王立学院に通わないといけないんです。それぞれの適性に合った学科で3年間学ぶんです。」

「…リアネットの適性は?」

「魔法使いです。」


なるほど、この国の教育制度はそうなってるのか。


「私があの呪いに長く耐えられたのも、魔力量が多かったからなんです。本当に限界だって思ったとき…ノベト様が救ってくれた。」


感謝してくれてるんだな。

表現は不器用だけど、心からの感謝を俺やビエラに伝えてるんだろう。


「もちろん休暇があればまたここに来ますけど、でもこうしてノベト様とたくさん思い出を作りたかったんです。」

「いい思い出になったか?」

「はい、絶対に忘れません。私のわがままに付き合ってくれてありがとう。」

「分かった。お前がここに戻ってくるのを待ってるよ。」


リアネットは晴れやかに笑った。


それから、リアネットが王都に行くまでの間、できる限り一緒に過ごした。

服を買いに行ったり、美味しい料理で有名な店に行ったり、この街の歴史や伝説の話をしたり、魔法の基礎を教わったり。

ビエラが護衛として同行することになったこともあった。


「それ初耳なんだが!」


道端のベンチでクレープを食べているリアネットに声を上げた。

リアネットは一口かじりながら穏やかに答えた。


「これから通う学校には私を補佐してくれる侍従が必要なんです。本当はノベト様を推薦したかったんですが…」


少し寂しそうにため息をつくリアネット。


「護衛の役割もあるから、Bランク以上の女性冒険者から選ぶことにしたんです。」

「それでビエラが適任だったってわけか。」


リアネットはコクリと頷いた。

Fランクの自分がちょっと誇らしくなった瞬間だった。


「ちょっと待て、じゃあビエラの店はどうするんだ?」

「当分は代わりにお店を見てくださる方がいるので大丈夫です。」


ビエラ、そんなこと一言も言ってなかったな。

必要ないと思ったのか。

ふと疑問が浮かんだ。


「リアネット、今はもう魔法使えるのか?」

「残念ですが、分かるのは適性だけです。それを学ぶのが学院の役割ですから。」

「そうか、少し残念だな。基礎くらい知れたら良かったのに。」

「理論くらいならお教えできますよ。」

「本当か?ぜひお願いしたい。」

「もちろんです。」


こうして、リアネット先生から魔法の基礎を学ぶことができた。


魔法は基本的に、水、火、風、土、金属、光、闇、そして無属性の8つの属性があるらしい。

適性は学院で検査を受けて知ることになるそうだ。

卒業までその適性を磨き、立派な魔法使いを目指すのが学院の方針。

魔法使いだけでなく、剣士、武闘家、治癒士などのクラスもある。

カリキュラムは似たようなものだろう。

卒業後は自分の進みたい道を選ぶらしい。


一番希少なのは治癒士。

人の命を扱うため、国最大の教団が管理していて、卒業後にその職につけるのはごく少数らしい。

次に人気なのが魔法使い。

魔法は使い方次第で大きな力を発揮できるため、戦争にも関わるし、生活用魔石に魔法を付与する仕事もあるため進路が広い。ただ、それだけに努力しても認められるのは難しいらしい。

次に戦闘職の剣士や武闘家。

こちらは身体が資本で、ひたすら鍛錬し軍に入るか冒険者になるのが一般的だそうだ。


「正直…ノベト様は立派な治癒士だと思います。」

「俺が?俺は武闘家だぞ。いや、その前にベトだし。」

「でも私の呪いを解いたのは高位の治癒士でもできなかったことです。」

「たまたまだと思うけどな。」

「いいえ。あれだけの治癒をするには莫大な魔力が必要なんです。本当にすごい治癒士だと思います。」

「そこまで言われると照れるな。」

「だからこれからもよろしくお願いしますね。」


リアネットは手を差し出した。

俺はその手を取り、軽く口づけの真似をした。


「ああ、こっちこそよろしくな。」


そして、リアネットが王都へ出発する日が来た。

領主や使用人、そして俺も馬車の前で見送った。

そのとき、ビエラが俺を呼んで何かを手渡してきた。

奇妙な模様の刻まれた腕輪だった。


「これ何だ?」

「遠距離通信の魔道具。」

「…ずいぶん高そうだな。」

「当たり前でしょ。めったに手に入らないものを何とか手に入れたの。魔力を込めて呼びかければ、どこでも会話できる。」

「なんで俺に?」

「私もこれからリアネット様について行くし、何かあったら困るでしょ。」

「そういうことか。」

「毎日連絡しろとは言わないけど、私が呼んだらちゃんと返事してよ。」

「分かった。」

「それと、あとで新しい店に顔出して、私の代理人に挨拶しといて。」

「別にいいだろ。」

「お前のこと知ってる人だから。」

「今の俺のことも知ってる?」

「さあ、どうだろうね。」

「誰なんだよ。」

「行って確かめなさい。じゃあね。」


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