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第70話

「報酬の高さに釣られて、いろんな“ベト”を持ってきた人もいたそうですが……」

「いたそうですが?」

「リアネット様はペレオラ領主のご令嬢ですから。領主様が嘘をついた者たちに相応の罰を与えたそうです」


ああ、なんとなく分かる気がする。

たぶん、回復できるかどうか試したのだろう。

あの時の領主様は本当に怖かった。

そして、俺が行けばすぐにバレるだろう。

鎧のせいで。


「Fランクとは言え、実質Sランク級のクエストだと考えてください。だから、おすすめはできません」

「その通りだな」

「噂ですが、今はBランク冒険者“魔導具の女王”ビエラも探しているらしいです」


Bランク? ビエラがそんなにすごかったとは。


「競争相手が手強いですね」

「そうですね。他には同じBランクのベルゲとエルゼリアも探しているとの噂も……」


ベルゲ、エルゼリア。まだ俺を探してくれていたんだな。感動だ。


「でも、そのお二人は今ホルダーの森に行っています」

「暴走行進が起きるかもしれないからか?」


イリアがうなずいた。


「そうか……俺にできる仕事は本当に何もないのか?」

「ええと、ポーションの材料になる薬草採集がありますが、ホルダーの森に行かないといけません……」

「分かった、とりあえず検討してみるよ。ありがとう」


俺はクエストを受け取り、ギルドを出た。


「テン、ホルダーの森の状況はどうなってる?」

「分析開始……完了。

ホルダーの森 現在状態:魔力混濁度上昇中(地上基準レベル E → C へ上昇)

地下部:固定された魔力の求心点を感知。

構造分析:自然型迷宮生成中。

活性度:64.3%

推定深部存在:未確認の高位魔力体1体、迷宮の主と推定。

補足情報:森全体の魔物等級 平均1ランク上昇」

「迷宮が突然できたとしたら……自然発生とは思えないな」

「同意します。検知された魔力痕跡は人族型文明体が残したパターンです」

「人族“型”? 人族“ではない”のか?」

「はい。この森は誰かの手で意図的に変質されています」

「つまり、誰かの実験場である可能性があるということか」


実験場と聞いて、脳裏をよぎる嫌な単語があった。

──魔導至上教。


「予測:現状維持の場合、7日以内に暴走行進が起こる可能性 43.5%

ペレオラへの波及もあり得ます」

「……止めないといけないな」


俺は鎧の音を響かせながら、ホルダーの森へと走った。


「テン。近くに他の気配を感じる」

「はい。前方80メートルに冒険者集団4名を確認。

D〜Bランクの混合構成。現在、魔物5体と交戦中。

対象魔物:変異した狼型、虎型、中間型ダークベア。

分類:迷宮型 放出系魔物」

「彼らの戦闘に加勢しなくても大丈夫か?」

「はい。軽傷者はいますが、重傷者や死亡者はいません」


前方から冒険者たちの叫び声と魔物の咆哮が入り混じって聞こえてくる。

ビエラやベルゲたちだろう。

きっと何とかするだろう。

できれば俺の姿を見せたくない。

面倒になるから。


「テン、迷宮の入口を封鎖したら暴走行進は防げるか?」

「恒久的ではありませんが、可能です」


なら、入口を壊せばいい。


「俺の考えが読めているなら、始めるぞ」

「ただいまより開始します。まず、鎧を脱ぐことを推奨します」

「なぜだ?」

「魔力をすべて使い切ってベト形態に戻った場合、鎧が破損する可能性が非常に高いためです」


テンの助言に従い、俺は鎧を脱いで収納空間に収めた。


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