第68話
アイクは口をぽかんと開けて驚いていた。
「はい、探索報酬が金貨1枚、ダークベア討伐で20枚、合わせて21枚です。もし死体を持ち帰っていればさらに報酬が出たのですが……」
「参考までに聞くが、ダークベアの死体はどのくらいの価値があるんだ?」
「爪や皮は武器や防具に使えるので、おそらく15枚ほどでしょう。正確には解体士に確認しないと分かりませんが」
「なるほど」
次回からは魔物の死体もちゃんと持ち帰った方がいいかもしれない。
次元収納があるから、保管も問題ない。
「ノベト様、人族変化が解除されるまで残り1時間です。移動をおすすめします」
テンが私に警告を送ってきた。
そろそろ魔力が尽きるようだ。これはまずい。
「アイク、レイナ。申し訳ないが、少し頼みがある」
「もちろんです、ノベト様!」
「それじゃ、ちょっと用事ができたから俺はこれで……」
「また会えますか?」
レイナが寂しそうな目で私を見つめてきた。
それより何より、もう少しで私はベッドに戻ってしまうのだ。
「また会えるさ。その時まで元気でな」
「はいっ!」
私は逃げるようにギルドを飛び出した。
そして、走る。
どこかに隠れられる場所はないか。
宿に泊まるにも金がない。
かといって、フェレオラ邸やビエラの元へ戻るのも気が引ける。
別に嫌いなわけじゃない。
視界がかすんで、指先がしびれてきた。
鎧の内側が微かに震え始める。
「テン……あとどれくらいだ?」
「感知中です。魔力残量4%、人型維持時間あと30分12秒です」
「……このまま人の多い場所で突然ベッドに戻ったらマズいよな?」
「正確な判断です。現在位置:ペレオラ北門付近。人口密度:中。非適切」
「なら、隠れる場所はないか?」
テンが素早く候補地を提示した。
「候補地提示:
1. 北門近くの廃倉庫(徒歩5分)
2. ギルド裏手の『魔物解体用倉庫』(徒歩3分。ただし臭いあり)
3. ホルダーの森入り口の茂みの中(徒歩10分。ベッド形態でのカモフラージュ容易)」
魔物解体倉庫は論外だ。まずギルドに戻らなきゃいけないし、あんなグロテスクな場所で寝たくない。
ホルダーの森も却下。行きすぎた。
残る選択肢は一つ。
「テン、倉庫に行こう。廃倉庫だ」
「了解。北門廃倉庫へ誘導します」
そうして私は全力疾走を始めた。
逃げているのか、隠れようとしているのか、自分でも分からない走りだった。
途中で人々の視線を感じたが、大騒ぎになるほどではなかった。
幸い、現地に着くと人の気配はなかった。
よし、このまま突入だ。
私はそっと廃倉庫に入り、元の姿へと戻った。
もちろん、鎧は次元収納へ。
人族変化を使った後は、猛烈に眠気が襲ってくる。
魔力が切れるからかもしれないが。
とにかく、ここまでくれば大丈夫。
瞼が重い。
汚れていた室内は空間浄化で清潔にしておいた。
「おやすみなさい、ノベト様」
「ありがとう、テン。お疲れさま」
そして私は、眠りに落ちた。




