第66話
アイクが先導し、私たちはギルドへと向かった。
道中には酒場も見え、修繕が終わったのか人々が行き交っている。
ベルゲやアルジェリア、そしてビエラも元気にしているだろうか。
そう思いながら歩を進め、私たちはギルドへと到着した。
「アイク、レイナ! 無事だったの!?」
「はい、受付嬢のお姉さん! この方のおかげで無事に帰ってこられました!」
受付嬢と呼ばれた、眼鏡をかけた茶髪の制服女性が、アイクとレイナを見た途端に駆け寄り、思いきり抱きしめた。
この子たちはここで大切にされているようだ。
見ていてほっこりする。
「本当にありがとうございます。無事に子どもたちを助けていただいて」
受付嬢は私に頭を下げた。
「やるべきことをやっただけです」
「失礼ですが、お名前は?」
「……ノベトです」
「ノベト様、差し支えなければ冒険者ランクを教えていただけますか?」
まずい。こういう詰問はだんだんと嘘を積み上げる羽目になる。
こういうときはあの手しかない。
「……その、最近激しい戦いをしていて記憶をなくしまして。身分証もその時に失くしたようで、断片的な記憶しかないのです」
「そうですか……でもこの方はダークベアを倒したんですよ! 本当にすごい魔物と戦ったはずです!」
「だ、ダークベア?」
周囲がざわつき始める。
「まさかDランクのダークベアのことか?」
「やっぱりホルダーの森に迷宮ができたって噂は本当かもな……」
「あの妙な鎧野郎がダークベアを倒したって?」
アイクが鞄から魔石を取り出して見せた。
「これがそのダークベアの魔石です」
「ちょっと確認してきますね」
受付嬢は目を輝かせながら魔石を持ってカウンターの奥へと消えていった。
「アイク!」
どこからか怒声と共に大股で歩いてくる人物がいた。
「お前がダークベアを倒したってのは嘘だろうが?」
褒めるつもりではなさそうだ。
その声、どこかで聞いたことがある。
「ビッグさん!」
ああ、以前酒場で会ったハゲ頭の男だ。名前はビッグだったか。
他の連中は見当たらない。
体は治ったのか、軽くストレッチしながら尊大な態度でこちらを見下ろしてくる。
「どうせ運よく落ちてた魔石を拾っただけだろ。本当のことを言え」
「違います。ノベト様が助けてくれて、本当にダークベアを倒したんです!」
レイナが反論する。
「Fランクの新人がDランクに勝てるわけがないだろうが!」
「本当なんです」
アイクも簡潔に反論する。
「こいつら……少なくとも同じDランクの俺様くらいでなきゃ、ダークベアは倒せねえってんだ!」
「それなら、なぜビッグさんが討伐に行かなかったんです?」
「ガキが口答えしやがって……あの魔物は元々俺の獲物だったんだよ!」
ビッグの顔はゆでダコのように真っ赤になっていく。
「よく聞け! お前らの依頼はホルダーの森の異変調査だ! 魔物討伐はこのDランクのビッグ様の手柄になるんだよ! わかったか!」
むちゃくちゃな理屈だな、ビッグさん。
「それはできません」
「なら教えてやるよ!」
ビッグはその巨体に似合わず素早くレイナに拳を振り上げた。
アイクでもなく、レイナに──それは卑怯すぎる。
私はその拳を右手で受け止めた。
止まった拳を見て、ビッグの視線がレイナから私へと移った。
「なんだお前は!」
「お前が知る必要はない」




