第65話
「基本的にこの森に出る魔物は強くてもEランクまでです。でも最近、ここで採集していた人たちが重傷を負ったり、命を落とす事件が起きたので、調査に来たんです……そこでダークベアに遭遇しました」
レイナが説明した。
「つまり、強い魔物が出た理由はまだ分かっていない、と」
「はい、私たちでは対応しきれません。このまま町に戻ってギルドに報告するつもりです」
「ギルドというと?」
「私たちはペレオラ町のギルド所属です」
ペレオラか。つい先日離れたばかりだ。
「ノベトさん、お願いがあります」
「お願い?」
「はい、私たちではこのまま無事にギルドまで戻れる保証がありません。ですので、ご一緒に同行していただけませんか? 謝礼もいたします」
確かに、この二人だけでは帰り道に再び魔物に遭遇する可能性もある。
せっかく助けたのに、後で亡くなったなんて聞いたら後味が悪すぎる。
「いいだろう。ただし条件がある」
「はい」
「俺は夜、必ず眠らなければならない」
「えっ……」
「しかも一人で寝なければならない。寝ている間に絶対に近寄ってはいけない」
「分かりました。理由を聞いても?」
ベトに戻って魔力を回復する必要があるなんて説明はしたくない。
「えーと、あれだ。俺は寝ているときに誰かが近づくと反射的に攻撃する訓練を受けてるんだ。だから君たちを傷つけたくない」
「なるほど……了解しました」
「夜に魔物が襲ってきたとしても心配いらない。眠りながら見張りは任せてくれ」
「はい、よろしくお願いします」
久々に絶対空間──いや、今では空間支配か──を使う機会ができた。
以前、ベルゲと一緒に精霊樹の浄化に向かったときにも使ったが、あの時より少し変わっている気もする。
こうして俺はアイクとレイナを連れて、ペレオラへ戻ることにした。
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昼間は町を目指して進み、夜は俺が空間支配を展開しながら休息。
問題なく、ペレオラの町に戻ることができた。
「アイク、レイナ! 無事だったか!」
「はい、無事に戻りました!」
ペレオラの門を守る衛兵が手を振って彼らを迎えた。
「そちらの方は?」
「この方は、私たちが危機に陥ったときに助けてくれたノベトさんです」
「……そうか」
この衛兵、見覚えがある。確か酒場で会った衛兵の一人だ。
もちろん、今の姿では俺だと気づくはずもない。
「ノベトさん、子供たちを救ってくれてありがとう。町の者として感謝する」
「恐縮です」
「では、身分証を見せてくれ」
もちろん、そんなものは持っていない。
「以前の戦闘でどこかに落としてしまったようだ。それでは入れないか?」
衛兵は肩をすくめて答えた。
「規則上、身元不明の者を町に入れるわけにはいかなくてね……」
「もっともなことだな」
それならここでアイクとレイナに別れを告げて、別の場所を目指すとしよう。
「ちょっと待ってください、この方の保証人になります!」
「私もです! 身分証がなくても、通行料を払えば入れるんですよね?」
アイクとレイナがそれぞれ銀貨一枚、計二枚を衛兵に差し出した。
「そうか、まあ子供たちの頼みなら文句は言わないさ。旦那さん、冒険者みたいだし、早めにギルドで再発行しておいた方がいいぜ」
そう言って衛兵は通してくれた。
再び戻ってきたペレオラの町──以前より明るく、活気に満ちている気がした。
たぶん、魔道至上教が消えたおかげだろう。
「じゃあ、ギルドに行きましょう」




