第55話
「テン、可動系チェック」
「筋力反応:正常。
関節可動角:94%最適化。
反射神経:人間基準で上位8%
フレーム重量:やや重め。
注意要」
「はあっ!」
アウロラが先に踏み込んだ。
姿勢を低く保ちながら両脚を狙って突進してくる──シューティング・ダブルレッグ・テイクダウン!
俺は素早く上半身の重心を前へ、下半身の重心を後ろに移して彼女の技を受け止める。
そのまま上半身を沈め、彼女の腰を両腕で包み込むように持ち上げにかかった。
「くっ……!」
アウロラは背中を使って耐え、リング上に低く落ちて回避。
すぐに体を転がし、回り込みながら正面に切り込んで、俺の腕を取り払い──
リストロック(手首関節技)!
手首が極まる直前、俺は前腕の筋肉に力を入れて巻き戻し、なんとか逃れた。
「うあっ、これ……意外とマジで痛いな!」
「痛覚再現度:現実比62%。
精神連動システム精度高。
現実に近い痛み。
無理は禁物です」
「じゃあどうしろと!」
ドンッ!
アウロラの右脚が俺のすねを蹴り飛ばし、
俺はバランスを崩して後退。
「そのままいくよ!!」
彼女はロープに飛び乗り、その反動を使って──
肩口へ突撃してきた、ロープ反動ニー・ストライク!
ドゴッ!
腹部に衝撃。
俺は膝をついた。
すかさず彼女が片腕で俺の首をホールド。
「降参して、ノベト。これはもう決まってることなの」
「……ふざけるな。それじゃあ、俺がここまで来た意味がない!」
俺は体をひねり、彼女の腰を片腕で引き寄せ、もう片方の腕で太ももを抱えて──
「これでもくらえっ!!」
思い切り腰を反らせてスープレックスをかけた!
ドガアアァァン!!!
アウロラの後頭部がマットに突き刺さる!
飛び散る精霊粒子。
空気が震え、視界がぶれる。
息を整える。
腹が痛い。肩が重い。指先がしびれる。
精神世界だというのが信じられないほどに、まるで実戦のような感覚だった。
「技交換分析:
ノベト ─ 有効反撃3回。
アウロラ ─ 被弾4回、重心乱れ。
現在の均衡:拮抗。
ただし体力消耗:ノベトが有利」
リングの隅で、アウロラがゆっくりと立ち上がる。
額に淡く精霊の光がにじむ。
「……いい技だったわ」
彼女は歯を食いしばりながら、再びこちらに突っ込む気配を見せる。
本気だ。
俺はまた構えを取る。
「よし……ここからが本番だ。アウロラ、やろうぜ。全力で」
精神世界の空気が熱を帯び始めた。
呼吸というより、呑み込むように空気を取り入れる。
テンの音声が内耳に響く。
「筋反応速度:8%低下。
左腕打撃吸収率:下降中。
警告」
「分かってる。でも止まれないんだ」
目の前には、もう一度立ち上がったアウロラ。
「君がこの身体を守り抜くというなら、本気でいくから」
「言っとくけど、もともとこれは俺の体だからな?」
アウロラの目が揺れた。
それは怒りでも憎しみでもない、強い意志と……
たぶん、孤独。
でも今は聞かない。
倒してから聞けばいい。
「はあっ!」
彼女が先に仕掛ける。
両腕を広げ、俺の首元へ一直線。
ラリアット!
肘で顔面をなぎ倒す直線技!
俺は上体を反らし、橋を作るようにブリッジ回避!
「……避けた!?
驚く彼女に隙を与えぬよう、すぐに反撃!
跳ね起き、背後に回って胴をがっちりホールド。
「もう一発だ!」
ジャーマン・スープレックス!
ドガッ!
アウロラの背中がマットに炸裂する!
鳥肌が立つような重い音。
──それでも、彼女はまた立ち上がる。
「この女……プロかよ……!」
「こんなんじゃ終わらないわよ!」




