第50話
「…検討中。
要求されたスキル形式:“次元収納(LV.1)”
位置指定:フレーム下部 → 空間認識範囲の再調整が必要
実装条件:スキルポイント1、魔力回路安定度80%以上、感情安定度40%以上…」
「今の俺の状態は?」
「…スキルポイント1、魔力安定度92%、感情安定度41%。条件達成」
ふぅ、よかった。
最近少し情緒が不安定だったが、リアネットが毎日様子を見に来てくれたおかげかもしれない。
彼女のおかげで、今の俺はベッドの限界を超えようとしている。本当に感謝している。
「次元収納(LV.1)を開発しますか?」
「このスキルは、フレーム下部に“魔力空間を圧縮した多次元収納スロット”を生成します。
理論上、“魔力許容量”が維持される限り、収納容量は無限に近いです。
ただし、ノベト様の許可なしに当該収納口へアクセスすることはできません」
「いいね、それで頼む」
「確認しました。開発を開始します」
俺の身体──正確にはフレームの下部に何かが開く感覚があった。
目には見えないが、確かに“そこにある”という確信がある。
異なる次元への裂け目が、ベッドの下に作られた。
「次元収納(LV.1)開発完了。
以降、収納コマンドにより魔力ベースのアイテムや無機物、一部有機物の収納が可能。
例:ローブ、魔導書、小型武器、エルフ一人分……」
「最後のはなんだ!?」
「冗談です」
冗談であってほしい。
「追加オプションとして“吸収/放出機能”を有効にしますか?
指定範囲内の対象を自動的に収納し、必要に応じて放出も可能です」
「よし、それも頼む」
「確認しました。吸収/放出機能、設定完了」
これで俺は、フレーム下部に無限収納空間を持つ、レベル60の喋る精霊ベッドになった。
この設定……どう考えても主人公だ。
人間じゃないこと以外は。
「ノベト様、ご質問があります。何を収納する予定ですか?」
「屋敷から出る瓦礫や木材を全部入れて、ごみ処理場まで運ぼうと思って」
「……ノベト様は本当にベッドらしいですね」
「褒めてる?」
「はい。非常に機能的なベッドです」
褒められたと思っておこう。
翌朝。
コン、コン。
聞き慣れたノック音がした。
「ノベト? 入ってもいいですか?」
その声は柔らかく、慎重だが、どこか疲れていた。
「どうぞ。リアネット、少し疲れているようだね」
扉が開き、リアネットが入ってきた。
ぼんやりとした表情で、静かにため息をついた。
「使用人たちは皆忙しくて……屋敷の復旧どころか、整理すら進んでいないんです。
部屋はどこも埃とゴミでいっぱい。外壁の周辺にも瓦礫が山積みで……」
ちょうどいいタイミングだ。
「それ、僕が片付けようか?」
「……え?」
リアネットは目を丸くした。
「えっと……どうやって、ですか? ゴミを……?」
「最近、新しいスキルを手に入れたんだ。試してみる?」
俺はフレーム下部を“カチッ”と軽く開いた。
目には見えないが、収納空間はいつでも“受け入れ準備完了”だ。
「テンの話によると、今の俺の収納容量は倉庫ひとつ分を軽く超えてるらしい。
魔力さえあれば、文字通り“なんでも”収納できる。
それに、浄化魔法も兼ねているらしく、収納と同時に殺菌もできるんだって」
リアネットは口をぎゅっと結び、
真剣な眼差しで俺の下部を見つめた。
「……そんな機能まであるなら、本当に“万能ベッド”ですね……」
彼女は微笑んだ。
しかしその裏には、確かな期待があった。
「本当ですか? 本当に、できるんですか?」
「できるよ。でも──条件がある」
「……条件?」
俺はわざと、言葉をそこで切った。




