第49話
「状態チェックを開始します。
ユーザー :ノベト。
職業:精霊のベッド。
正体:不完全な精霊核融合体。
現在レベル:60
体力:65,000 / 65,000
魔力:65,000 / 65,000
攻撃力:0
防御力:20+@
感情安定度:変動中(最近のストレス反応+18%)
アクティブ魔法:
・熟睡歓迎(LV.2)
・絶対空間(LV.4)
・空間浄化(LV.2)
保有スキル:
・熟睡超回復(LV.4)
・万物理解(LV.3)
・念話(LV.4)
・硬化/軟化(LV.4)
・軽量化/重量化(LV.2)
・拡大/縮小(LV.2)
・超深層潜入/脱出(LV.1)
耐性:闇属性(LV.3)
注意事項:
・魔導核、今後は精霊核へ更新します。反応安定化段階に移行中です。
・内面感情の疲労蓄積を検出。長期使用で自我分離のリスクがあります。
・人間化転移条件の一部達成。ただし不完全な形態であり、持続性は未確保です。
・ベッドとしての本分は維持中ですが、
精霊としての自覚は徐々に移行段階へ入っています。」
カルロスとの戦いから1週間が経った。
フェレオラの邸宅は半壊し、使用人たちは復旧作業に奔走していた。
ビエラはギルドでランク更新のために席を外し、領主は魔道至上教について報告するため王都へ向かった。
「……のどかだな」
部屋の中は静かだった。
木材の天井からはやわらかな午後の日差しが差し込み、
小さなガラス窓の向こうでは風がカーテンを優しく揺らしていた。
木組みの壁は少しきしんで、
まさに完璧な静寂と平穏が流れる空間だった。
「おい、ノベト、助けてくれ!」
平穏が破られた。
「今日は何があった?」
「瓦礫を運んでたら、こいつが下敷きになってさ」
「分かった、こっちに」
「頼んだ」
屋敷の修復作業中に使用人の一人が怪我をしたようだ。
もう一人がなんとか彼を私の上に横たえる。
私は軽く熟睡超回復を使用した。
重症だった彼は一瞬で体力を回復し、跳ね起きた。
最近では寝るだけで即座に回復できるようになったらしい。
「うおお……すごい。体が全部治った! 疲れも吹っ飛んだ!」
「よし、終わったなら仕事に戻れ」
「もう少し横になっても……」
「あとでリアネットに報告するぞ」
「くっ……ベッドのくせに……」
「そうか。じゃあ今後は回復なしで」
「それだけは! 頼む、なんでもするから!」
「今、なんでもするって言ったな?」
「あ、いや、その……」
「じゃあ働け」
ぶつぶつ言いながら去っていく使用人たち。
現在私は領主の依頼で王都に不在の間、リアネットと使用人たちの世話を任されていた。
今日も些細なことながら、穏やかな一日だった。
カーテン越しの夕日が差し込み、床の木材にあたたかな光が滲んでいる。
窓の外の風がカーテンを撫で、午後の陽がマットレスの上にやさしく落ちていた。
「テン、聞こえるか?」
私は静かにテンを呼んだ。
「はい、ノベト様。ご用件は?」
「最近、瓦礫撤去中に怪我人が多いだろ。俺がまとめて処理しようと思ってさ。で、収納機能を使えないかなって」
「収納というと、可搬型補助装置の製造を……」
「違う違う。俺の身体の中に直接収納するやつ。ベッドの下に引き出し付いてるだろ、あんなイメージ」
昔見たことのある、脚の間が収納スペースになっていたベッドを思い出していた。
自分にできないはずがない。
しばし沈黙が流れた。
正直、自分でも何を言ってるか分からなくなってきた。




