第41話
「これ、使えば使うほど、俺の精神が削れてくんじゃないのか?」
『その可能性は存在します。
しかしこれは、マド核と最も深く接続できるスキルの一つです。
魔力以外の“感情系反応”の探索には有効です』
マド核? 初めて聞いたぞ、それ。
『正確には、あなたの内部に存在する魔力集束構造体です。
非公式名称:マド核
通常の精霊体には存在しないもので、主に古代魔導兵器や実験体に埋め込まれていた“魔力反応の中枢”です』
……ちょっと待て、俺って精霊じゃなかったのか?
なんでそんなヤバそうなもんが俺の中に入ってるんだよ。
『ゆえに、あなたは“例外”なのです』
言ってることが怖すぎる。じゃあ、俺の中のそれ、いつからあったんだよ?
『正確な生成経路は不明ですが、次のような推測が可能です:
① あなたが精霊樹の汚染を浄化した際に“破損”
② その状態で上位精霊オーデリアの魔力により“復元”
③ さらにマド至上教がその地域に流し込んでいた“闇属性回路の残渣”が
あなたの回復プロセスに“融合”された可能性』
つまり──
あのとき、ただ汚れを清めていただけじゃなかったってことか。
俺の中に“未知のコア”が埋め込まれた瞬間だったわけか。
『機械というより“魔力結晶”です。
正確には“自己強化型・反応コア”──
簡単に言えば、“暴走する可能性のある発電機”です』
聞こえは良いけど……要するに“不安定な爆弾”みたいなもんだよな。
『理解、正確です。
現在は安定状態を維持していますが──
特定の“感情刺激”、外部魔力干渉、または“防衛本能の発動”によって
自律的に“発現”する恐れがあります』
発現したら……爆発とかすんのか?
『肯定。
その場合、周囲の魔法構造を無視して“展開”される恐れがあります』
制御は? 俺にそれ止められるの?
『現段階では不可能です。
システムは“モニタリング”のみ対応可能です』
……だよな。
『あなたは今、“存在する”ということをようやく理解したに過ぎません。
機能詳細の案内は、“解放条件”を満たすまでは制限されます』
おい、それ説明しておいて「けど内容は秘密」ってパターンじゃないのか?
『その通りです。
情報制限は使用者の“精神的安定”と“衝動制御”のための保護措置です』
……これが逆に気になってしょうがないんだが。
『今後、あなたの感情反応によってマド核が反応した場合、
記録とパターン解析が自動で進行します。
それに応じて、次の段階の説明が可能となります』
要するに──
俺が“体験”しないと、全部は教えてくれないってわけね?
『その通りです。
どんな危機において、誰を守る意思で、何を選ぶか。
それによって、マド核の“形”と“能力”は変化します。
それは、あなたが持つ“唯一の固有魔力”です』
──そうか、だったら気をつけないといけないな。
ところで、お前、最近けっこう進化してるし──そろそろ名前、つけてやってもいいよな。
『私には名前はありません。あなたが名付けてください』
んじゃ、“システム”らしく、“テン”でいいや。シンプルに。
『感情反応、確認。
現在、マド核安定化中。
了解しました。私の名前は“テン”
ノベト──私は、今後もあなたを監視し続けます』
頼んだぞ、テン。
『これまで以上に“動き”が意味を持ちます。
あなたが何を選ぶかで、私は変わります』
……分かってるよ。
そして俺は、また静かに──まだ眠っているビエラとリアネットを見る。
今、俺の中には“これから起こること”への理解と、
それを迎え撃つための“決意”が、静かに根を張っていた。
ゆっくりと目を閉じる。
すべての魔法と力を使う準備は、もうできている。
──そして、眠った。




