第33話
「ノベト、お願いね」
「もちろん、任せてくれ」
「他に方法があるの?」
「ない。私を床に下ろして、元のサイズに戻すよ」
ビエラは私を首から外し、そっと床に置いた。
私は元の大きさに戻り、その姿にフェレオラと使用人たちは一瞬驚いたようだった。
ビエラは右腕をゆっくりと掲げた。鍛えられた褐色の腕が静かに上がる。
「切ってください」
シュッ──
空気を裂く刃の音は思いのほか静かだった。
だが次の瞬間、血がバケツをひっくり返したように床に広がった。
彼女の右腕は肘まで切断され、床に転がった。
「……ッ!」
声を上げずに痛みに耐えるビエラ。
その顔は蒼白で汗に濡れ、だが目は揺るがなかった。
彼女は片腕で切り落とされた右腕を拾い上げ、私の上に身を預けた。
『ノベト……頼む』
私は静かに「熟睡超回復」を発動した。
失われた肉体を再生させるのは初めての試みだった。
切断面と腕の断面の両方に力を込めて、繋ぎ合わせるよう集中した。
血管が脈打ち、神経が手探りのように連結を求め、筋肉が収束し、皮膚が閉じていく。
ビエラは息を荒げながら、私の上で身を預けていた。
『本当に……くっつくの?』
「くっつくよ。君の性格なら、予備の腕が一本くらいあっても驚かないけどね」
『あんたって、本当に……ふざけてる』
言葉とは裏腹に、彼女の身体は震えていたが、顔は真剣だった。
骨と肉が完全に結合した瞬間、私は能力を解除した。
「終わったよ。動かしてみて」
ビエラはゆっくりと右腕を持ち上げ、手を開いて握り、手首を回してみせた。
「……本当に……元通りだ」
彼女のその言葉に、応接室の空気が一変した。
一斉に吸い込まれた息が、波のように私に伝わった。
──たった一晩、寝ただけで腕が治るなんて。
フェレオラは沈黙のまま我々を見据えていたが、やがて口を開いた。
「……信じざるを得ない。確かに効果がある」
彼が手を振ると、侍女の一人が音もなく姿を消した。
「……お嬢様をお見せいただけますか?」
ビエラが静かに頭を下げた。
フェレオラは無言で頷いた。
我々は案内人の後について応接室を後にした。
屋敷の廊下は静まり返り、装飾のない壁がどこまでも続く。
城というよりは、要塞のようだった。
まるでこの家そのものが深い病を抱えているかのように、息を潜めているように思えた。
「こちらです」




