第25話
スキンヘッドは木製のテーブルを勢いよく蹴飛ばした。
料理の皿が床に落ち、いくつかは粉々に砕けた。
ベルゲたちは黙ったまま、それを見つめている。
それを“怯えてる”と勘違いしたのか、スキンヘッドは歪んだ笑みを浮かべ、ベルゲの肩を叩き、親指と人差し指で輪を作って見せた。
「全部出せよ。懸賞金も、金も、何もかもな。そうしないと俺たちの機嫌が直らねぇんだよ、この耳長野郎どもが!」
ベルゲは濡れた髪をかき上げ、ため息をついた。
また紳士的に対処するつもりかと思った──が。
「今日は祝うべき日だったんだ。楽しく過ごすつもりだったし、多少のことは我慢しようと思ってた」
「はぁ? 何を──」
スキンヘッドの言葉が終わる前に、ベルゲは彼の首元を右手で掴み、ゆっくりと持ち上げた。
「だがな──食べ物を侮辱する奴は許せん」
「グッ……なんだこの力……!」
抵抗する間もなく、スキンヘッドはベルゲの力でテーブルの中央に叩きつけられた。
テーブルはその衝撃で粉々に砕け散る。
「こ、こいつ、リーダーを……!」
「ぶっ殺してやる!!」
取り巻きのならず者たちは叫びながら武器を構え、ベルゲたちを囲んだ。
ナイフ、ナックル、棍棒など、危険な武器を手にしている。
「ベルゲ、どうする?」
興奮気味にパンテエルが尋ねる。
ベルゲは静かに椅子に座り直し、つぶやいた。
「今回は……武器なしで行こう」
「最高だ!」
9人のエルフたちは、目を輝かせて立ち上がり、それぞれ敵に向かう。
他の客たちは店から逃げ出し、場はあっという間に修羅場となった。
「お客様! 店内で暴力は──!」
店主が泣きそうな声で叫ぶ。
「大丈夫。私はもう用は済んだ。酒をもう一杯頼めるかね」
ベルゲは笑顔でグラスを傾ける。
「おい、ベルゲ、大丈夫か? こんな騒ぎになって……」
私は1対1の念話で問いかけた。
「……喧嘩の見物ほど、酒に合うものはないさ」
「酔ってるのか、ベルゲ!」
「ハハハ……見ろよ、あれを」
彼の視線の先では、モレスが突進してきた不良の腕を掴み、店の窓に向かって投げ飛ばしていた。
ガシャン、とガラスが砕け、不良の姿が消える。
「まだだ、うりゃあ!」
モレスはそのまま窓の外に飛び出し、追撃をかけたようだ。
続く音が、外からドスドスと聞こえてきた。
パンテエルは別の不良の後頭部を掴んで、リズム良くテーブルに叩きつけていた。
顔はもう原型を留めておらず、テーブルは血で真っ赤に染まっている。
「ベルゲ、死ぬんじゃ……」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと痛いだけさ。ハッハッハ」
「メンデーーーイン!!」
「なんだ、ラルフェイル!?」
「テーブル持ってきて!」
「任せろ!」
メンデインがテーブルを引っ張ってくると、ラルフェイルと一緒に
ぐったりした不良2人の頭を脚の間に挟み、腰を掴んでテーブルに同時に叩きつけた。
もちろん、テーブルは派手に砕ける。
スレインは突進しながら相手の腹に肩を突き刺し、そのまま壁にめり込ませ、
ユルロウンは飛び上がって右膝で相手のこめかみを打ち抜いた。
「これが耳長族の力だ、どうだ!」
「食べ物を!」
「大切に!」
「分かったか!」
スピルロ、ホレイル、セトレルは、残った不良たちを逆さにして順番に地面に叩き込み、まるでフラワーアレンジメントのように整列させた。
戦いは、こうして終わった。
皆、息を整えると、テーブルに埋まったスキンヘッドの周囲に集まり、
酒杯を掲げてこう言った。
「オーイェー!」
「……オーイェーじゃねえよ。全員そのまま動くな!」




